嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉

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Commands the Stars(星を統べる者)

第84話 深まる疑問

(※もうちょっとだけユエリ視点)

 自由になって生活に余裕ができ、ユエリは過去を思い返して数々の疑問を抱いた。リトスが奴隷の解放を目指していたのだとすれば、昔下された指示の不審な点は、すべて説明できる。
 しかし、恵まれた立場にいたはずのリトスが、なぜ奴隷に手を差し伸べたのだろうか。無能な貴族の子息を装っていたのは、何のためだったのか。
 
「リトス・アルシャウカト……生きていたのですか?!」

 再会は、想像もつかないほど唐突なものだった。
 ファーラン東部の【静かな海】と呼ばれる湖に寄ったユエリは、旅人姿のリトスと再会した。

「奇遇だな。この機会に、俺に対する恨みを晴らすか?」
「私と、奴隷たちをファーランに逃がしてくださったのは、あなたでしょう?」
「!」
「ずっと、理由を知りたかった」

 逃がすまいと、わざわざ抱き着いて耳元にささやいている。
 リトスが困惑しているのを見て、確信を深めた。
 彼が解放者でなかったのなら、もっと中身のない反応をしただろう。何かしら心当たりがあるから、抱き着かれて混乱している。

「私たちと一緒に街に戻りましょう。大人数の方が、魔物に襲われず安全ですよ」

 タイミングを見計らって、問い詰めたい。
 そのために少々強引に案内を申し出たユエリに、リトスはしぶしぶながら付いてきてくれた。
 その姿と、彼の同行者を、ユエリは密かに注意深く観察する。
 リトスがレイヴンと呼んだ黒髪の男は、何者だろう。体は鍛えているが、鎧を付けていないゆったりした服装なので、魔術師のようだ。どうやらリトスとは親しい仲のようで柔らかい表情で話しているが、普段は黙して威圧感を発散しているのだろうと思われる、危険で整った容姿の持ち主だ。

「あ~、ファーランで麺食いたい。なんかファーランの麺って、他の国と違うらしいじゃん」
「気付いているか、リトス。お前が飯のことを口にする時は、決まって現実逃避したいことがある時だ」
「……」
「両替はどうするつもりだ?」

 レイヴンの指摘に、リトスがたじたじになっている。
 興味深く感じながら、ユエリは横から口を挟んだ。

「金になる物品を持っているのでしたら、私が売買を仲介しましょう。今夜の宿もお決まりでないなら紹介しますよ」
「それはありがたい。な、リトス?」
「っ~~!」

 二人の間で通じる何かがあるようで、レイヴンはからかい混じりの口調で、リトスは何故か悔しそうな顔をしている。
 
「ここからは、馬車に乗って移動しましょう」

 街道まで戻れば、待機させておいた荷馬車がある。
 交代で馬車の荷台に乗って休みながら、街に戻る予定だ。荷台を引いているのは屈強な水霊馬二頭で、ファーラン東湖地方ならではの光沢のある緑色の毛並みをしている。
 元気な者は周囲を警戒しながら馬車の脇を歩き、残りは荷台に腰掛けた。リトスとレイヴンは、ユエリが勧めたので荷台に乗っている。
 ユエリは歩きながら仲間と打ち合わせし……ふと荷台に目をやって、リトスが寝ていることに気付いた。
 リトスは、隣のレイヴンの肩にもたれて寝ている。
 レイヴンは平然とした様子で片膝をつき、ぼんやり風景を眺めているようだった。
 男同士もたれて寝るくらい、傭兵団や冒険者パーティーの遠征などではよく見る光景だ。戦闘につぐ戦闘で、落ち着いて野営できない場合、仮眠を取るためそうやって雑魚寝する事がある。
 だが貴族の子息で育ちの良いリトスが、慣れた様子で仮眠を取るのは違和感があった。
 それにレイヴンの方は、足元に鞘に入った剣をこれみよがしに置いて周囲を牽制し、歴戦の古強者のような雰囲気だ。一匹狼の方がふさわしそうな風体なのに、リトスにもたれられ文句を言うでもない。
 見れば見るほど、疑問が山ほど浮かんでくる。
 処刑されたはずの男が何故生きていて、堂々と出歩いているのか。隣の男は何者でどういった関係なのか。
 何か手掛かりはないか観察していたところ、レイヴンの腰のベルトに、特徴的な意匠のメダルが吊り下げられているのを見付けた。
 大陸魔術師連合が発行している、知恵の鳥フクロウが刻まれたメダルだ。魔術師としての位階を証明するそれは、最高位Sランクを示す虹色魔石オパールが嵌め込まれていた。

「Sランク、だと……?」

 もともとレイヴンは大陸魔術師連合と取引して、Sランク証明を発行してもらっていたが、メレフでは星瞳の魔術師として入国、ハイランドは独自制度で評価されるので表に出す機会が無かっただけだ。
 現在地点がどこか分からないのなら、身分証明を付けて余計なトラブルを避けようと考えたレイヴンが荷物から引っ張り出したのだが、そのような事情はユエリが知るはずもない。
 Sランクの魔術師と、リトスはどこで仲良くなったのか。ユエリの疑問はますます深まるばかりだ。
 
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