嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉

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The Visit of a Shooting Star(流れ星の来訪)

第11話 失明

 どうやらリトスは、短気な攻撃系魔術師のやる気点火スイッチを、意図せずにばっちり押してしまったらしい。交渉するつもりで出した手紙を燃やされ、頭を抱える。

「これだから攻撃系は!」
 
 リトス自身は、補助系よりの魔術師だ。
 だからこそ封印の魔術は自信があるし、ほかの星瞳の魔術師にも破られないだろうと思っている。あの師匠も「小鳥ちゃんの性格の悪さがにじみでてるわ。私なら問答無用で熔かしちゃう」という封印だ。
 レイヴンはどうやら師匠と同じ性格のようである。

「今から、のこのこ出て行って事情を話して協力を仰いでも、鼻で笑われそうだな。戦うしか、ないか」
 
 杖をまじえて、相手の本気度合をはかるしかない。
 向こうの出方から目的を推察し、メレフに害がないようなら通す。だが手に負えないような悪党なら、精霊界の師匠に相談して七星に仲裁に入ってもらおう。
 学園の寮の自室であれこれ考えていると、扉が叩かれた。
 リトスは思考を中断し、アルシャウカト家の無能な長男を演じるために深呼吸する。
 扉を開くと、そこには後輩の女子生徒が佇んでいた。

「リトス先輩、お休み中申し訳ありません。学園にいらっしゃっていると聞いたので」
「そんな畏まらないで。俺は女の子には優しいよ。中でお茶でもどう?」
 
 軟派な男の振りをして誘いかけると、その女子生徒は満更でもなさそうだったが、首を横に振った。

「いえ。それよりも、ご存知ですか? 先ほど、テレサの部屋で事件が起こったんです。魔道具が暴発したとかで、彼女、怪我を負ったみたいです」
「何?!」
「医療魔術師の方がいらっしゃっているので、重傷のようです。リトス先輩は、テレサに気を掛けていたので、念のためお伝えしておこうかと」
「ありがとう。君の気遣いに感謝するよ」
 
 女子生徒は、情報を伝えるためだけに来てくれたらしい。
 リトスは彼女に小切手を握らせた。役に立ってくれる女性には、報酬を渡した方が喜ばれる。金銭を嫌がる相手には、宝飾品を与えたり、買い物に連れ出したりしている。
 テレサが怪我を負った?
 胸騒ぎがしたリトスは、すぐさま彼女の部屋に向かった。
 庶民出身のテレサは学園寮で暮らしており、休日も寮にいたはずだ。
 階段を降りて下級生が住んでいる一階の部屋を目指す。
 ちょうどリトスがテレサの部屋の前に到着したとき、部屋の扉が開いて、医療魔術師が現れた。

「先生、テレサはどうしたんです?」
 
 リトスは、その医療魔術師に話しかけた。
 医療魔術師は、白髪の恰幅の良い男性で、人の良さそうな雰囲気だ。リトスの突然の質問にも親切に答えてくれる。

「ああ、彼女と知り合いなのかい。どうも、性質の悪い魔道具を拾ってしまったようだね。顔を魔障に焼かれてしまった。片目が……もしかしたら失明したかもしれん」
「なんですって」

 女性にとって顔は命ではないか。
 リトスは想像以上に重い事態に動揺する。
 誰だ? 俺のテレサちゃんに悪さしたやつは。

「先生、その魔道具を見せていただけませんか」

 医療魔術師を説得し、暴発したという魔道具を見せてもらった。
 女性は美容のために薔薇水を顔に振りかけたりするらしいが、テレサもそういった品物に興味があったらしい。友人にもらったという薔薇水の小瓶が、問題の魔道具だった。
 蓋を開けてしまったので、中に込められた魔術は蒸発し、消えそうになっている。現場保存が大事だから、すぐに時を止めて保管しろと言いたいが、医療魔術師にそんな配慮を求めるのは酷だろう。テレサも学生なので、そこまで思いつかなかったに違いない。
 だが、消えかけの魔力がまだ残っている。並みの魔術師ならともかく、リトスにとっては十分な手がかりだ。
 小瓶に残った魔力を感じ取り、リトスは険しい表情になる。
 これは、妹の魔力だ。
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