嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉

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Dance the Final Act(終幕を踊れ)

第43話 ライトアップ

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「……あんたのせいでメレフに引きとめられそうなんだけど?!」

 二人きりになった途端、リトスは文句をぶちまける。
 星瞳の魔術師だとばれたら、国外に出してもらえなくなる。
 だから、今まで正体を明かさずにいたのに、台無しだ。

「俺の目的、分かってて邪魔したろ! いったいどういうつもりなんだよ?!」
「分かった分かった。お前の望みも通るようにしてやるから、そんなに怒るな」
 
 レイヴンは飄々とのたまった。

「別口で依頼があった。お前の王子様からな」
「!」
「完璧にやり遂げたかったなら、せめて、あの王子様と情報連携しておくべきだったな」

 それは誤算だったと、リトスは反省する。
 星瞳の魔術師の能力におごり高ぶり、友人の想いを無視したから、しっぺ返しを食らったのだと悟った。
 自分もまだまだ未熟だ。次からは、もっとうまくやらなければ。

「くっそ~、あともう少しで、この国を脱出できたのに!」

 この国の重要な客人であるレイヴンは、王城の裏庭に面した客室を与えられている。一応、彼の世話をする専任の侍女もいるようだった。
 リトスはレイヴンの部屋に行くと、彼の侍女に頼んで、食事と着替えを用意してもらう。
 数日の牢屋生活で、疲労が溜まっていた。
 とりあえず腹を満たして清潔な衣服に着替えたリトスは、部屋の主であるレイヴンの寝台をうばって、ふて寝することにした。

「……おい」

 夢も見ない眠りに落ちて、数時間後。
 肩を揺さぶられ、目が覚める。
 
「よく熟睡できたものだ」

 ぼんやり見上げると、レイヴンが呆れた顔でこちらを見下ろしている。

「……眠れる時に、寝るもんだろ」
「真理だな」
「……」
「おい、二度寝するな。お前に客人だ。例の王子様だぞ」

 それを聞いて、リトスは起きざるをえなくなった。
 
「なんで、こいつ俺の上に乗っかって寝てるわけ」

 背中に乗っかっていた小さな黒竜を、ぺいっと床に捨てる。
 落ちた衝撃で目覚めた黒竜がぎゃいぎゃい抗議するのを無視し、立ち上がる。
 さっと身なりを整えて、応対に出た。
 
「殿下、お待たせして申し訳ありません。わざわざ、ここまで出向かれなくても良かったのに」

 カナン王子は、なんと廊下で待っていた。
 王族を接待もせず待たせるなど、星瞳の魔術師だからこそ許される所業だ。
 彼はリトスを見ると、安堵した表情になる。

「お前が逃げるのではないかと、気が気でなかった、リトス」

 国から逃げ出すつもりだったので、地味に心が痛い。
 
「……あー、場所を移しましょう。ここは殿下をもてなすような部屋ではありませんし」

 レイヴンの宿泊している部屋にも、一応応接スペースはあるが、王子様を歓待できる設備はない。侍女も一人で、彼女に迷惑をかけてしまう。

「裏庭を散歩しながら話しませんか」
「もう夜だが。それに、裏庭には明かりが少ないぞ」
「大丈夫です。俺が明かりを用意しますよ」

 先導して歩きかける。
 カナンの護衛らしき騎士が「殿下」とためらいがちに呼び掛けた。

「お前たちは、ここで待て。そこの庭の散策をするだけだ。危険はない」

 カナンが命令すると、騎士は立ち止まって待機する。
 リトスは、カナンと一緒に外に出た。
 寝ている間に日は暮れて、外は真っ暗になっている。
 三日月が空にかかっていて、淡い月光が裏庭の植栽を照らしていた。
 
「じゃあ、灯りを付けますね」

 リトスは鳥使いの長杖を手元に喚び、無造作に地面をとんと叩く。
 途端に精霊鳥が待ってましたとばかりリトスの上空から現れ、うっすら輝きながら、夜の庭を旋回した。
 精霊鳥の飛翔に沿って、庭の草木に光が宿る。
 普段は隠れている、小さな妖精たちが、ライトアップを始めた。
 蛍火ほたるびのような光が、ちろちろ舞う。

「こんな魔術、初めて見たぞ。しかも無詠唱で……」
「実を言うと、ズルしてるんですよ。この杖の効果で、勝手に精霊鳥が召喚されて、勝手に魔術を使ってくれるんです」

 とは言っても、精霊鳥たちは、リトスの魔力を消費しているのだが。
 リトスは、呆気に取られているカナンを、幻想的に輝く庭に誘った。

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