嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉

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The Ultimate Ally(最強の助っ人)

第10話 フルーツパーラー

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(※アンズ視点)

 リトスさんは、不思議な人だ。
 補助系魔術の達人で、正体不明の高位魔術師。何か表に出せない理由で、ハイランドの樹冠に侵入しようとしているらしい。私は本来ハイランドの魔術師として彼の企みを止めなければならないのだろうが―――どうしてだろう、リトスさんが悪人のようには、とても見えない。

 飛竜を討伐した後、もともと受けるはずだったバナモンキー討伐とは別件になってしまったので、バナモンキー討伐報酬の苺を受け取れなかった。
 苺が食べられると張り切っていたリトスは、がっかりした。その代わりに、どこか果物が食べられる店は無いかと、アンズに聞いてきたのだ。
 数日後、アンズたちはパーティー全員そろって、イルミンスールでも有名なフルーツパーラーに訪れていた。

「今日は、こいつのおごりだから!」

 リトスは、同伴している背の高い黒髪の男性を指さし言う。
 以前から気になっていたのだが、リトスは彼とどういう関係なのだろうか。
 整いすぎて彫像のような白皙の美貌に、背にゆったりかかる艶やかな黒髪、深い紫水晶の瞳。肩幅が広く女性的なところが全くないのに、気品が感じられる容姿の魔術師の男。
 彼の名は、レイヴン。
 名前をどこかで聞いたことがあるような……きっと気のせいだろう。

「ひよっこどもにも俺の財布から金を出せと?」
「当たり前だろ。今のところ、あんたは財布係くらいしか役に立ってないし」
「……」

 にこやかなリトスとは対照的に、レイヴンはむっつり不機嫌そうだ。
 だが話は通ったらしく、反対する気配はない。皆で予約したテーブルを囲んで座る。
 やがて店員が紅苺パフェを運んできた。

「プリンちゃん、上に乗ってる苺食う?」
「食べるにゃ~ん」
「ほらあげる……なーんてな」
「わっ、途中で撤回するなんて、卑怯だにゃ!」

 リトスは、プリンをからかいながら、苺を旨そうに食べている。

「すごく平和な光景……リトスさんは本当に悪人なのかしら」
「騙されるな、アンズ。あれは偽りの姿だ……たぶん」

 アンズは、フェリオとささやきを交わす。
 ちなみに二人とも、ちゃっかり自分の分のフルーツサンドを注文している。

「レイヴンさん、本当にいいんですか……?」

 一人だけ甘味を頼まず、紅茶を頼んだレイヴンに、アンズは声を掛けた。

「余計な気遣いは不要だ。好きなだけ食べればいい」

 レイヴンはこちらを見ず、淡々と答える。
 財布をにぎっている人が良いと言っているのだ。アンズはようやく安心して、フルーツサンドを遠慮なく頂くことにする。隣のフェリオも同様だ。

「おいアンズ、噂は聞いたか」
「何の噂かしら」
「聖地メレフで新しい星瞳の魔術師が見つかったってさ」

 フェリオがフルーツサンドを食べながら、噂話を教えてくれる。
 席順はレイヴンを挟んでリトスから遠い位置なので、先ほどから二人の会話はリトスのところまで届いていない。人気店の騒々しさで、二人の会話は雑音にまぎれてしまっている。

「遠話の魔術で、大陸魔術連合の支部から入った最新ニュースだ。がせネタじゃないぜ」
「新しい星瞳の魔術師様?」
「聖光教の象徴である光の鳥と契約してるから、聖鳥の魔術師というらしい。白銀の髪に蒼い瞳の、とびっきり綺麗な男だってさ」
「へぇ」

 アンズは、噂の魔術師を想像してみる。
 聖鳥の魔術師というくらいだから、きっと神々しい聖人のような魔術師なのだろう。

「ふっ」

 紅茶を口に運ぶレイヴンが、失笑をもらした。
 どう見てもアンズたちの会話を聞いた上での反応だ。
 
「どうしたんですか?」

 気になって問いかけると、レイヴンはうっすら笑みを浮かべて言った。

「その話、面白いから、リトスには絶対に聞かせるなよ」
「はぁ」

 リトスさんに黙っていろというのは、どういう意味だろうか。
 アンズは疑問を覚えたが、考えてもまったく理由が分からなかった。
 それにしても、レイヴンは冷酷そうなのは見た目だけで、案外に穏やかな気性らしい。近くに座っていると彼の放つ強い魔力による圧迫感はあるものの、不思議と危害を加えられるような感じはしないのだ。むしろ守られているような、重厚な壁の中にいるような感じさえある。
 でも、この人が守っているのは、私たちじゃない。
 彼が私たちとリトスさんの間に座っているのは、きっと……

「残念ですね。メレフ出身のリトスさんなら、噂について詳しい事を知っていると思ったのですが」
「アンズちゃん、何か俺のことについて話してる?」
「何でもありません!」

 紅苺パフェを食べ終わったリトスが、こちらに注意を向けた。アンズは、レイヴンとの約束を律儀に守って返答する。
 リトスさん、ケーキを追加注文してる……どれだけ甘味が好きなんだろう。
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