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Verdant Crown(樹冠都市)
第21話 廃棄された城
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目を開けると、そこは薄暗い牢屋の中だ。
背中は冷たい木の床で、視線を光源に向けると、木製の格子の外に淡い光を放つ水晶の灯が見えた。樹冠の天辺に石材を持ち込めないからか、建物は特殊な魔術で加工された木材で出来ている。
上体を起こし、自分の服装や装備を確認する。
銀花とレイナールは、リトスたちの所持品を取り上げなかったようで、ウェストポーチやアミュレットなどそのままだった。拘束もされていない。どうやら、未熟な魔術師パーティーだと油断してくれているらしい。好都合だ。
「アンズちゃん、フェリオ、プリンちゃん……起きろ」
リトスは、そっと声を掛けて三人を起こした。
「……にゃ?」
「ここは……」
アンズたちは目を覚まし、現状を把握してうろたえている。
「くそ、捕まっちまうなんて……リトスさん、あんた敵に見つからないって、断言してなかったっけ?」
「そんなこと言ったっけなぁ」
フェリオのじとっとした視線を受け流す。
索敵と隠形は、補助系の魔術師のリトスの役目だ。その役目をはたしていないのかと、彼は怒っている。
「ははっ、フェリオくん、俺が頼りにならないなら、自分で頑張ってみたらいいじゃないか。君もそこそこ補助系の魔術が得意だろう?」
「……」
「止めなさいよ、フェリオ。リトスさんを責めても仕方ないわ……敵が、星瞳の魔術師様だったんだもの」
アンズは体育座りの体勢でつぶやいた。
「かないっこないよ……」
それはフェリオも同意見だったようで、彼も口をつぐんで憂鬱な表情をする。
「くそ……星瞳の魔術師様は、絶対の正義じゃなかったのかよ……?!」
あれは偽物だと言っても、今の時点では証拠を示せない。
リトスは、パンと手を打って「脱出しよう」と言った。その声に、アンズとフェリオも前向きな思考が戻って来たようだ。顔を上げてリトスを見る。
「バシディオさんのところまで戻れば、俺たちは生きて樹冠を出られる。さすがに銀花の魔術師も、大陸魔術師連合の監査役に手を出さないだろ」
「どっちが護衛だか、分からないな……」
フェリオの突っ込み。確かに、現状バシディオを守るどころか、こちらが彼の存在に守られている。
「というか、脱出できるのかよ。ここ、魔術無効の結界内じゃないか」
「ほんとにゃ! 魔術使えないにゃ!」
さすがに魔術師を捕らえる牢屋だけあって、魔術を無効化する結界が仕掛けられている。
プリンちゃんが呪文を唱えて、魔術が発言しないことに驚いた。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
ほら見て。
リトスが指さす先、格子の向こうの通路に、のっそのっそと動く影。
「鳥……? なんで、こんなとこに」
フェリオがいぶかしげに言う。
外をゆったり歩いて寄ってきたのは、人間の子供ほどの体高を持つ、灰色の大きな鳥だ。首は細長く、足も細長い。嘴がひらべったく頭部がずんぐりしており、目付きが悪い。怒ってるような顔の鳥だ。
「じゃーん。俺の友達のハシビロコウさんだよ」
「意味わかんねーよ!!」
リトスの紹介に、フェリオが物を投げそうな勢いでつっこんだ。
そうこうしているうちにも、精霊鳥が化けたハシビロコウはのっそり嘴を開け、牢屋の錠前にかぶりついている。
ごと、と音を立てて、錠前が床に落ちた。
「ほら、扉が開いたね。逃げよっか」
リトスは牢屋の扉を軽く押し開けながら、アンズたちに声を掛ける。
「あんたって、マジでよく分からねーな。これも魔術なのか……?」
フェリオがおっかなびっくりで牢屋から出ながら言う。
「ここは……もしかして元王城?」
先に牢を出たアンズは、止める間もなく窓際に駆け寄り、外を眺めている。
リトスもゆったりとした足取りで、彼女に歩み寄って外を見た。
窓の外は、雲が流れる夜空だ。
下を見ると、黄金の壁に囲まれた樹冠の都市が広がる。
ここは階層の高い建物の上だ。
「元王城? どうしてそう思ったの?」
「樹冠は、ランクSに達した魔術師たちが住む楽園で、牢屋があるはずがないんです。あるとしたら、廃棄された王城だと思います」
「なるほど……」
今でこそ樹下に追いやられ、没落したハイランドの王族だが、もともとは樹冠にある立派な王城に住んでいたという。
「リトスにゃん……」
いつの間にか、足元に忍び寄っていたプリンちゃんが、リトスの袖をくいくい引く。
「行きたいところがあるんだにゃん」
プリンちゃんが、真剣な顔で見上げてくる。
そうだ、彼女は没落したハイランドの王族なのだった。
この元王城に関しても、何か知っていることがあるのかもしれない。
「どこに行きたいの?」
リトスは腰をかがめて聞く。
「お城で、一番高い塔に行きたいんだにゃ!」
「……そんなとこ行ってる余裕あるかよ。俺たちは、逃げないといけないんだぞ?!」
プリンの要望に、フェリオは困った顔だ。
だが、意外にもアンズはOKを出した。
「私の兄に会いたいという希望に付き合ってくれたんだもの。私もプリンちゃんに付き合うのは当然だわ」
「……ふん。勝手にしろ!」
ツンデレか。そっぽを向くフェリオに苦笑し、リトスは立ち上がった。
正体は王女であるプリンちゃんが、かつてご先祖様が住んでいた王城で何を探しているか、興味がある。
背中は冷たい木の床で、視線を光源に向けると、木製の格子の外に淡い光を放つ水晶の灯が見えた。樹冠の天辺に石材を持ち込めないからか、建物は特殊な魔術で加工された木材で出来ている。
上体を起こし、自分の服装や装備を確認する。
銀花とレイナールは、リトスたちの所持品を取り上げなかったようで、ウェストポーチやアミュレットなどそのままだった。拘束もされていない。どうやら、未熟な魔術師パーティーだと油断してくれているらしい。好都合だ。
「アンズちゃん、フェリオ、プリンちゃん……起きろ」
リトスは、そっと声を掛けて三人を起こした。
「……にゃ?」
「ここは……」
アンズたちは目を覚まし、現状を把握してうろたえている。
「くそ、捕まっちまうなんて……リトスさん、あんた敵に見つからないって、断言してなかったっけ?」
「そんなこと言ったっけなぁ」
フェリオのじとっとした視線を受け流す。
索敵と隠形は、補助系の魔術師のリトスの役目だ。その役目をはたしていないのかと、彼は怒っている。
「ははっ、フェリオくん、俺が頼りにならないなら、自分で頑張ってみたらいいじゃないか。君もそこそこ補助系の魔術が得意だろう?」
「……」
「止めなさいよ、フェリオ。リトスさんを責めても仕方ないわ……敵が、星瞳の魔術師様だったんだもの」
アンズは体育座りの体勢でつぶやいた。
「かないっこないよ……」
それはフェリオも同意見だったようで、彼も口をつぐんで憂鬱な表情をする。
「くそ……星瞳の魔術師様は、絶対の正義じゃなかったのかよ……?!」
あれは偽物だと言っても、今の時点では証拠を示せない。
リトスは、パンと手を打って「脱出しよう」と言った。その声に、アンズとフェリオも前向きな思考が戻って来たようだ。顔を上げてリトスを見る。
「バシディオさんのところまで戻れば、俺たちは生きて樹冠を出られる。さすがに銀花の魔術師も、大陸魔術師連合の監査役に手を出さないだろ」
「どっちが護衛だか、分からないな……」
フェリオの突っ込み。確かに、現状バシディオを守るどころか、こちらが彼の存在に守られている。
「というか、脱出できるのかよ。ここ、魔術無効の結界内じゃないか」
「ほんとにゃ! 魔術使えないにゃ!」
さすがに魔術師を捕らえる牢屋だけあって、魔術を無効化する結界が仕掛けられている。
プリンちゃんが呪文を唱えて、魔術が発言しないことに驚いた。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ」
ほら見て。
リトスが指さす先、格子の向こうの通路に、のっそのっそと動く影。
「鳥……? なんで、こんなとこに」
フェリオがいぶかしげに言う。
外をゆったり歩いて寄ってきたのは、人間の子供ほどの体高を持つ、灰色の大きな鳥だ。首は細長く、足も細長い。嘴がひらべったく頭部がずんぐりしており、目付きが悪い。怒ってるような顔の鳥だ。
「じゃーん。俺の友達のハシビロコウさんだよ」
「意味わかんねーよ!!」
リトスの紹介に、フェリオが物を投げそうな勢いでつっこんだ。
そうこうしているうちにも、精霊鳥が化けたハシビロコウはのっそり嘴を開け、牢屋の錠前にかぶりついている。
ごと、と音を立てて、錠前が床に落ちた。
「ほら、扉が開いたね。逃げよっか」
リトスは牢屋の扉を軽く押し開けながら、アンズたちに声を掛ける。
「あんたって、マジでよく分からねーな。これも魔術なのか……?」
フェリオがおっかなびっくりで牢屋から出ながら言う。
「ここは……もしかして元王城?」
先に牢を出たアンズは、止める間もなく窓際に駆け寄り、外を眺めている。
リトスもゆったりとした足取りで、彼女に歩み寄って外を見た。
窓の外は、雲が流れる夜空だ。
下を見ると、黄金の壁に囲まれた樹冠の都市が広がる。
ここは階層の高い建物の上だ。
「元王城? どうしてそう思ったの?」
「樹冠は、ランクSに達した魔術師たちが住む楽園で、牢屋があるはずがないんです。あるとしたら、廃棄された王城だと思います」
「なるほど……」
今でこそ樹下に追いやられ、没落したハイランドの王族だが、もともとは樹冠にある立派な王城に住んでいたという。
「リトスにゃん……」
いつの間にか、足元に忍び寄っていたプリンちゃんが、リトスの袖をくいくい引く。
「行きたいところがあるんだにゃん」
プリンちゃんが、真剣な顔で見上げてくる。
そうだ、彼女は没落したハイランドの王族なのだった。
この元王城に関しても、何か知っていることがあるのかもしれない。
「どこに行きたいの?」
リトスは腰をかがめて聞く。
「お城で、一番高い塔に行きたいんだにゃ!」
「……そんなとこ行ってる余裕あるかよ。俺たちは、逃げないといけないんだぞ?!」
プリンの要望に、フェリオは困った顔だ。
だが、意外にもアンズはOKを出した。
「私の兄に会いたいという希望に付き合ってくれたんだもの。私もプリンちゃんに付き合うのは当然だわ」
「……ふん。勝手にしろ!」
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