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Verdant Crown(樹冠都市)
第20話 樹冠の真実
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リトスの魂の一部を移した透明な精霊鳥は、レイナールと銀花の魔術師を追って飛翔する。彼らは眠らせたアンズたちを牢屋に放り込んだ後、時計台の上に登って密会を始めた。精霊鳥は屋根の片隅にとまって、二人の会話に耳を澄ませる。
「銀花様、彼らをどうされるおつもりですか」
レイナールが固い声で、銀花にたずねる。
「決まっているでしょう。若くて食べ応えのある子たちだもの。ゆっくり一人ずつ、恐怖を味わいながら、おいしく頂くわ」
銀花はうっとり夢見るように答えた。
人を喰うなんて、魔物確定だな。レイナールは彼女の正体を知っていて、協力しているようだ。どういう関係だろうか。
「駄目です、銀花様。彼らの中には、ハイランドの姫君も混ざっています。私の友人トーヤの妹、それに聖地から訪れた客人も。殺してしまっては、問題になります」
時計台での密会は、レイナールが銀花を説得するためだったようだ。彼は淡々と、しかし必死の感情をにじませて訴える。
しかし銀花は、くすくす笑って答えた。
「えぇ、それは大変ね。あなたが」
「……」
「ハイランドの姫? もう王家は絶滅寸前じゃない。今更なにに気を付けるというの? あなたの友人も虫の息なんだから、妹ともども楽にしてあげなさいな。外国の要人? 事故で死んだことにすればいいじゃないの。何をためらうことがあるのかしら」
「そんな……」
「忘れたの? レイナール、あなたは罪を継ぐ一族の末裔。罪が一つ二つ増えたところで、どうってことない」
青ざめて拳をにぎるレイナールの頬を、銀花の白い手が撫でる。
「あなたのご先祖様が、星瞳の魔術師、銀花を殺した。そして、ハイランドの永遠の繁栄のため、この天蓋の園に魔神の私を飼うことを決断した」
とうとう黒幕の口から真実が語られた。
精霊鳥を介して盗み聞きしているリトスは、息をのむ。
「あなたの一族は罪人。もう星瞳の魔術師に救いを請うことは許されない。仲間を殺された星瞳の魔術師は、あなたたちを許さないでしょう。だから、私に頼るしかないの」
「っ」
「ハイランドは永遠の繁栄を手に入れた。あなたの先祖の選択は、あなたは正しい。だから迷うことは何もない。いつも通り、小さな犠牲は仕方ないことと諦めるの……」
銀花が言葉を重ねるごとに、うつむくレイナールの瞳から光が消えていく。
彼の絶望を感じとり、リトスの胸が痛む。
なるほどな。レイナールもある意味、犠牲者な訳だ。
誰が一番悪かったのだろう。魔神を招き入れたレイナールの先祖の魔術師か? いや、彼らは魔神に騙されたに過ぎない。大樹が寿命を迎えたときに、ハイランドは滅びるはずだった。それを延命させたのは、魔神の横やり。そして、延命させることを選んだ当時の人間の魔術師たち。
こうなったら、そもそもの始まり、大樹を作った文曲の魔術師を責めたくなる。あなたがこんなものを作らなければ、大樹を延命させるか滅ぼすかなんて究極の二択、選ばなくても良かったのに、と。
でも、その考え方は責任転嫁だ。子供が親に向かい「お前が生まなければ良かったのに」と文句を言うのと同じだ。形あるものは必ず終わりを迎える。完璧に、永遠に続くものを作ることは不可能なのだから。
「……監査の魔術師は、どうされるおつもりですか」
「そちらは、特に何もなければ、私は手出ししない。あなたの考えの通りに、おもてなしして、下界に返すといいわ。ふふ、大陸魔術師連合がアミュレットの輸出に協力してくれるなら、もっともっと多くの人間から生命力を集められるわね」
どうやら銀花を装った魔神は、アミュレットの販売を拡大することで、己の支配域を拡げたいと目論んでいるらしい。
監査役のバシディオは、なんだかんだで無事に樹冠を降りられるだろう。
それなら、そこに便乗させてもらおうか。
リトスは、アンズたちを逃がす方法を考えていた。
牢屋を脱出した後、バシディオと合流し予定どおり護衛の仕事をすればいい。何事もなかったかのように振る舞えば、向こうも強く追及できないだろう。今回得た情報をもとに、秘密裡にレイナールと交渉し、アンズたちを樹冠から脱出させる。その後、リトスだけ残り、外のレイヴンと協力して遺跡の調査および、魔神の討伐を行う……よし。
時計台を降りるレイナールを見送った後、精霊鳥は静かに羽ばたいて、アンズたちが囚われている牢に向かい、飛んだ。
「銀花様、彼らをどうされるおつもりですか」
レイナールが固い声で、銀花にたずねる。
「決まっているでしょう。若くて食べ応えのある子たちだもの。ゆっくり一人ずつ、恐怖を味わいながら、おいしく頂くわ」
銀花はうっとり夢見るように答えた。
人を喰うなんて、魔物確定だな。レイナールは彼女の正体を知っていて、協力しているようだ。どういう関係だろうか。
「駄目です、銀花様。彼らの中には、ハイランドの姫君も混ざっています。私の友人トーヤの妹、それに聖地から訪れた客人も。殺してしまっては、問題になります」
時計台での密会は、レイナールが銀花を説得するためだったようだ。彼は淡々と、しかし必死の感情をにじませて訴える。
しかし銀花は、くすくす笑って答えた。
「えぇ、それは大変ね。あなたが」
「……」
「ハイランドの姫? もう王家は絶滅寸前じゃない。今更なにに気を付けるというの? あなたの友人も虫の息なんだから、妹ともども楽にしてあげなさいな。外国の要人? 事故で死んだことにすればいいじゃないの。何をためらうことがあるのかしら」
「そんな……」
「忘れたの? レイナール、あなたは罪を継ぐ一族の末裔。罪が一つ二つ増えたところで、どうってことない」
青ざめて拳をにぎるレイナールの頬を、銀花の白い手が撫でる。
「あなたのご先祖様が、星瞳の魔術師、銀花を殺した。そして、ハイランドの永遠の繁栄のため、この天蓋の園に魔神の私を飼うことを決断した」
とうとう黒幕の口から真実が語られた。
精霊鳥を介して盗み聞きしているリトスは、息をのむ。
「あなたの一族は罪人。もう星瞳の魔術師に救いを請うことは許されない。仲間を殺された星瞳の魔術師は、あなたたちを許さないでしょう。だから、私に頼るしかないの」
「っ」
「ハイランドは永遠の繁栄を手に入れた。あなたの先祖の選択は、あなたは正しい。だから迷うことは何もない。いつも通り、小さな犠牲は仕方ないことと諦めるの……」
銀花が言葉を重ねるごとに、うつむくレイナールの瞳から光が消えていく。
彼の絶望を感じとり、リトスの胸が痛む。
なるほどな。レイナールもある意味、犠牲者な訳だ。
誰が一番悪かったのだろう。魔神を招き入れたレイナールの先祖の魔術師か? いや、彼らは魔神に騙されたに過ぎない。大樹が寿命を迎えたときに、ハイランドは滅びるはずだった。それを延命させたのは、魔神の横やり。そして、延命させることを選んだ当時の人間の魔術師たち。
こうなったら、そもそもの始まり、大樹を作った文曲の魔術師を責めたくなる。あなたがこんなものを作らなければ、大樹を延命させるか滅ぼすかなんて究極の二択、選ばなくても良かったのに、と。
でも、その考え方は責任転嫁だ。子供が親に向かい「お前が生まなければ良かったのに」と文句を言うのと同じだ。形あるものは必ず終わりを迎える。完璧に、永遠に続くものを作ることは不可能なのだから。
「……監査の魔術師は、どうされるおつもりですか」
「そちらは、特に何もなければ、私は手出ししない。あなたの考えの通りに、おもてなしして、下界に返すといいわ。ふふ、大陸魔術師連合がアミュレットの輸出に協力してくれるなら、もっともっと多くの人間から生命力を集められるわね」
どうやら銀花を装った魔神は、アミュレットの販売を拡大することで、己の支配域を拡げたいと目論んでいるらしい。
監査役のバシディオは、なんだかんだで無事に樹冠を降りられるだろう。
それなら、そこに便乗させてもらおうか。
リトスは、アンズたちを逃がす方法を考えていた。
牢屋を脱出した後、バシディオと合流し予定どおり護衛の仕事をすればいい。何事もなかったかのように振る舞えば、向こうも強く追及できないだろう。今回得た情報をもとに、秘密裡にレイナールと交渉し、アンズたちを樹冠から脱出させる。その後、リトスだけ残り、外のレイヴンと協力して遺跡の調査および、魔神の討伐を行う……よし。
時計台を降りるレイナールを見送った後、精霊鳥は静かに羽ばたいて、アンズたちが囚われている牢に向かい、飛んだ。
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