ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉

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5島連盟編

12 水竜王の宝物

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 風の島の竜騎士ゲイルは、怒れる炎竜王の前から逃走し、一路、光の島コローナに逃げ込んだ。
 ゲイルの相棒である鋼色の竜ブライドは、ヒズミの投げた槍で酷く傷ついていたが、光の島までは何とか飛ぶことができた。

 白亜の都に到着したゲイルは、早速、光竜王に面会を申し込んだ。
 さほど時間をかけずに竜王の居城に入る許可が出る。
 玉座でふんぞり返る光竜王ウェスぺを見上げ、ゲイルは風の島の状況を報告した。

「……火の島の炎竜王が突然現れ、風の島に攻撃を仕掛けてきました。私は何とか逃げのびましたが、おそらくアウリガは炎竜王の手に落ちたと思われます。風竜王が動けない今、光竜王陛下にご判断をお願いしたく」
「もうよい」

 ウェスぺは報告の最中でゲイルの言葉をさえぎった。

「どうせ、お前が挑発したのだろう、ゲイルよ。誤魔化すな」
「さすが光竜王陛下、お見通しで」

 ゲイルは光竜王の力を借りて、アウリガの竜騎士達を率いていた。
 血に飢えたゲイルにとって光竜王の野望は渡りに船だったし、光竜王にとってもゲイルはアウリガを支配する上で都合の良い人材だったのだ。

「このままではアネモスが解放されてしまうが……今はもうそれでも良いか。地上を取り返す方法が他にあると分かった以上、もはや風竜王はアサヒにくれてやってもいい」
「は? アウリガはどうするんです?」
「どうもしない。ご苦労だったな、ゲイルよ。下がっていいぞ」

 ウェスぺは片手をひらひら振って、ゲイルを追い払う仕草をした。
 側近の竜騎士が、ゲイルの退出をうながす。

「ちょっと待て! アウリガにいる炎竜王は放っておくのかっ」
「ゲイル、お前は戦うしか能がない、私の治める世界ではもっとも価値の無い者だ。私は平和を目指している。その過程で幾多の血が流れようとも」

 ふざけるな、お前が全部指図したんだろうが、とゲイルは不満を叫ぼうとしたが、その前に竜王の前から追い出される。

「くそっ!」

 ゲイルは腹いせに城の壁を蹴る。
 ひとりで逃走してきた以上、風の島に戻って居場所があるかどうか定かではない。これからどうするか考え込んだゲイルは、ふと思い付く。

「待てよ。炎竜王がアウリガに来てるってことは、今は火の島は手薄か……?」

 王不在のピクシスに潜り込み、炎竜王の弱みをにぎって逆襲してやるのだ。ゲイルは唇をつりあげて笑った。




 光竜王ウェスぺは、他の竜王の力を奪うことを諦めた。
 唯一、封柱に確保している風竜王アネモスも、炎竜王に解放されてもやむなしと考えている。今の状況では他の4人の竜王を倒して、力を奪うことは難しいだろう。前は油断していたから封柱できたが、今はそうはいかない。
 だから代わりに海竜王と契約して、直接、地上をおおう海水を取り除くことにした。

「海竜王リヴァイアサンは海の中にいると聞きますが、どうやって海竜王のもとへ行かれるのですか?」

 従卒のルークが聞く。
 ウェスぺは机の引き出しから、丸い水晶の球のような物体を取り出した。

「これは水竜王の宝物のひとつ、水の力がこもった海神の玉だ。これがあれば海竜王の居場所が分かる。それに、水の中でも呼吸できるようになる」
「すごい! いつ水竜王から盗んだんですか?」
「盗んだなどと人聞きの悪いことをいうな。これは奴が不在の間に譲り受けたのだよ」
「それを盗んだと言うのでは」

 海神の玉を手でもてあそびながら、ウェスぺは機嫌良さそうに笑った。

「どうせ使わないのなら、私が有効利用してやろう。ふふっ、水竜王の奴、宝物が無いことにいつ頃気付くだろうか」

 実は気付いて光の島に来ようとしているのだが、ウェスぺは水竜王がアサヒと一緒にいることは知らなかった。




 風の島の宿で休んだ次の日。
 どこかへ出掛けていたスミレが戻ってきた。

「スミレさん、どこへ行ってたんだよ。心配したんだよ。あれ……ユエリ?」
「あ、あなたに会いに来たんじゃないんだからね!」

 スミレの後ろには、昨日別れたばかりの蜂蜜色の髪と瞳をした少女の姿があった。切ない雰囲気で別れたので、こうやって再会すると気まずい。

「いや、俺は会えて嬉しいけどさ。どうしたの、ユエリ?」
「兄様が……」
「んん?」

 彼女の隣には見覚えがある、痩せて顔色の悪い灰色の髪の男が立っている。

「やあ、炎竜王」
「あんたは……!」

 以前、ピクシスで戦ったこともあるユエリの兄だ。
 アウリガに戻って来ていたのか。

「そう身構えないでくれ、私は君達の敵じゃない。君達を風竜王様の元へ案内しにきたのだから」
「何?!」

 手掛かりが向こうから飛び込んできた。
 アサヒはびっくりして瞬きする。
 様子を見ていた水竜王ピンインが手を打った。

「案内してくれるとは気前が良いではないか」
「ピンイン! もし罠だったら」
「罠でも飛び込むまでのこと。竜王である我らに恐れるものなど一つもない」
「……なんか前に水竜王が封じられた理由が分かってきたぜ」

 気軽に言うピンインに溜め息をつくと、アサヒは案内をしてくれるというユエリの兄に向き直る。

「あんたを信じた訳じゃない。少しでも情報が欲しいだけだ」
「それでいい。付いてきてくれ」

 警戒するアサヒ達の前に立って、彼は街の外へ歩き始めた。
 

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