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新型魔導銃の秘密
53 魔法使いは希少なようです
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アールフェスは反省して、夜中に奴隷と話したり、火事の後始末の手配をしていたようだ。関係ない俺たちは部屋に戻って寝たけどね。
翌日、俺たちは紹介状を持ってクリスティ商会を訪ねた。
仮にも一国の王族の訪問だ。
立派な応接間に通されて待たされる。少しすると、商会の代表が部下を伴って部屋に入ってきた。
驚いたことに商会の代表は、真っ赤な長髪を後頭部で結い上げた、きりりとした美女だった。
「クリスティ商会代表のアーサ・クリスティです。私どもに、どのようなご用向きでしょう」
聞かれて、ロキとティオは俺を見た。
何を売りたいか話してなかったな。
俺も商人じゃないから、うまいこと話せるか疑問だけど、やるだけやってみよう。アーサさんに向かって口を開く。
「……我がローリエは、ご存知の通り雪と氷におおわれた小国です。雪と氷だけは売るほどあります。あなたの商会に氷を卸させていただきたく」
ティオがぽかんとした。
「え? 雪や氷って、どこにでもあるじゃないか。お金になるの?」
雪国ではそうだろうな。
だがここエスペランサでは……。
「素晴らしい!」
アーサさんは机に乗り出すようにして、目を輝かせた。
「氷は、真冬の限られた時期にしか得られないものです。しかも、夏場に保管することは非常に困難です。地下の涼しい場所で限られた量を保管しても需要に追い付かず、冬以外の氷は非常に高価な商品となっています」
そうだろうと思ったよ。
夏に氷で物を冷やして食べるのは、知る人ぞ知る贅沢な楽しみだ。けれど魔法が使えなければ、夏に氷は得られない。
俺も前世に、夏の戦場で、一仕事終わった後に冷やした麦酒が飲めるなら、有り金を全部払っても良いと思ってたからな。
「氷は、食べ物を冷やす、高熱の病人の介抱に使う、魔導銃の部品を仕上げるために使う、など非常に多種多様な使い途《みち》があります。いくらあっても足りるものではありません」
アーサさんに説明されて、ようやくティオやロキも、氷の重要性に気付いたようだ。雪国の人間なら嫌というほど目にする、ただの雪や氷が、他国で高額な商品になるなんて、思ってもみなかったのだろう。
「しかし、一体どのように溶けやすい氷を、ローリエからここまで運んで来られたのですか?」
「氷の魔法を使って作るんですよ。なので、先に水を仕入れさせていただけますか?」
嘘を付いてローリエから運んできたと言っても良いが、俺たちの荷物の量は街の人々が目撃している。後で不審がられるより、真実を教えて信頼を得た方がいい。
ちなみに俺と兄たんズで凍らせるつもりだが、そこまでは教えるつもりはない。
アーサさんは俺の言葉に何故か驚愕した表情になった。
「魔法……! この暖かいエスペランサで氷を生み出すほどの魔法の使い手が、北の大地には残っているのですね」
あれ? 魔法使いはそんな希少な生き物だっけか。
戸惑っている俺のフォローのためか、ロキが口を挟んだ。
「そうですね。エーデルシア邪神戦争以来、魔法の使い手は少なくなっています。ここエスペランサでは、魔法は過去の遺産だと考えられているようですが」
どうやらここ数十年で、魔法使いは減ってしまったらしい。
ロキの台詞で俺は「魔法で凍らせる」と言ってしまって良かったかな、と悩むことになった。
しかし、アーサさんは納得したようだ。
「北の最果て、神の住まう白銀の峰の近くならば、古の魔法も残っているのでしょう……」
部下から帳簿を受け取って、何かメモしながら、アーサさんは微笑んだ。
「すぐに大量の水を届けさせましょう。水の代金は、氷の金額から引かせていただく形で構いませんね?」
アールフェスの家に水を届けてもらう段取りを付けて、俺たちは商会を出た。水の準備に時間が掛かるので、手配は明日になるそうだ。
そのまま昨日別れたミカや騎士たちと合流する。
宿屋の人に頼んで食堂を貸し切りにしてもらい、皆で集まった。
「……領事館の件ですが、私たちの方でも考えてみたんです」
獣人の少女ミカが手を上げて発言する。
俺たちがいない間、ミカと騎士たちは仲良く相談していたそうだ。
「何かアイデアがあるの?」
「はい。建設中の領事館の完成を待っていては、いつになるか分かりません。それならば、もう建っている家を買い取ってみては」
なるほど妙案だ。
資金なら氷を売って調達できそうだしな。
「候補ってあったりする?」
聞いてみると、ミカは鼻息荒く、拳をにぎって力強く頷いた。
「はい! とっておきの物件があります!」
「どんなの?」
「数十年前に滅んだエーデルシアという国の領事館が空いているそうです。領事の人は全員首を吊って死んだとかで、誰も近づかない曰くつきです!」
ちょっと待て。
「事故物件じゃあないか」
ロキが「うげげ」と頬をひきつらせる。
「はい! ミカおすすめの物件です!」
なんでやねん。おっと、地方の方言で突っ込みそうになってしまった。
「何でも死んだ人の怨念のせいで、年中、冷気が漂っているそうです。暑いのが苦手なゼフィさまや、冷気に慣れたローリエの皆さんには良いかと……」
ミカの言葉が段々尻すぼみになっていく。
途中で変な提案をしていると気付いたらしい。
確かに俺たちは暑いのは嫌だから涼しいところに行きたいと思っていたけど、亡霊の怨念はちょっと違うのでは。
それにエーデルシアという地名が引っかかる。
数十年前、エーデルシアから沸いて出た亡者の軍勢が世界の平穏を脅かした。その戦争で活躍したのが、無敗の六将――すなわち俺の前世だ。だからエーデルシアには少なからず因縁がある。
「ゼフィ、その建物に行ってみよう」
止めた方が良いと思っていた俺だが、服の裾をクロス兄が引っ張ったので、考えを中断した。
「どうしたの兄たん」
「死者系のスケルトンは乾いた骨、バリバリ食える菓子のようなものだ。ゴーストは口の中でぐるぐるするのをプチっとつぶすと、魂汁が出てきて何とも言えずうまい」
「ご飯なんだね、兄たん……!」
前世でつちかった人間の常識が邪魔して気付かなかった。
モンスターは俺たちフェンリルの主食である。
「よし、エーデルシアの領事館へ行ってみよう!」
まだ見ぬ珍味を求め、俺はミカおすすめの事故物件を訪ねてみることにした。
翌日、俺たちは紹介状を持ってクリスティ商会を訪ねた。
仮にも一国の王族の訪問だ。
立派な応接間に通されて待たされる。少しすると、商会の代表が部下を伴って部屋に入ってきた。
驚いたことに商会の代表は、真っ赤な長髪を後頭部で結い上げた、きりりとした美女だった。
「クリスティ商会代表のアーサ・クリスティです。私どもに、どのようなご用向きでしょう」
聞かれて、ロキとティオは俺を見た。
何を売りたいか話してなかったな。
俺も商人じゃないから、うまいこと話せるか疑問だけど、やるだけやってみよう。アーサさんに向かって口を開く。
「……我がローリエは、ご存知の通り雪と氷におおわれた小国です。雪と氷だけは売るほどあります。あなたの商会に氷を卸させていただきたく」
ティオがぽかんとした。
「え? 雪や氷って、どこにでもあるじゃないか。お金になるの?」
雪国ではそうだろうな。
だがここエスペランサでは……。
「素晴らしい!」
アーサさんは机に乗り出すようにして、目を輝かせた。
「氷は、真冬の限られた時期にしか得られないものです。しかも、夏場に保管することは非常に困難です。地下の涼しい場所で限られた量を保管しても需要に追い付かず、冬以外の氷は非常に高価な商品となっています」
そうだろうと思ったよ。
夏に氷で物を冷やして食べるのは、知る人ぞ知る贅沢な楽しみだ。けれど魔法が使えなければ、夏に氷は得られない。
俺も前世に、夏の戦場で、一仕事終わった後に冷やした麦酒が飲めるなら、有り金を全部払っても良いと思ってたからな。
「氷は、食べ物を冷やす、高熱の病人の介抱に使う、魔導銃の部品を仕上げるために使う、など非常に多種多様な使い途《みち》があります。いくらあっても足りるものではありません」
アーサさんに説明されて、ようやくティオやロキも、氷の重要性に気付いたようだ。雪国の人間なら嫌というほど目にする、ただの雪や氷が、他国で高額な商品になるなんて、思ってもみなかったのだろう。
「しかし、一体どのように溶けやすい氷を、ローリエからここまで運んで来られたのですか?」
「氷の魔法を使って作るんですよ。なので、先に水を仕入れさせていただけますか?」
嘘を付いてローリエから運んできたと言っても良いが、俺たちの荷物の量は街の人々が目撃している。後で不審がられるより、真実を教えて信頼を得た方がいい。
ちなみに俺と兄たんズで凍らせるつもりだが、そこまでは教えるつもりはない。
アーサさんは俺の言葉に何故か驚愕した表情になった。
「魔法……! この暖かいエスペランサで氷を生み出すほどの魔法の使い手が、北の大地には残っているのですね」
あれ? 魔法使いはそんな希少な生き物だっけか。
戸惑っている俺のフォローのためか、ロキが口を挟んだ。
「そうですね。エーデルシア邪神戦争以来、魔法の使い手は少なくなっています。ここエスペランサでは、魔法は過去の遺産だと考えられているようですが」
どうやらここ数十年で、魔法使いは減ってしまったらしい。
ロキの台詞で俺は「魔法で凍らせる」と言ってしまって良かったかな、と悩むことになった。
しかし、アーサさんは納得したようだ。
「北の最果て、神の住まう白銀の峰の近くならば、古の魔法も残っているのでしょう……」
部下から帳簿を受け取って、何かメモしながら、アーサさんは微笑んだ。
「すぐに大量の水を届けさせましょう。水の代金は、氷の金額から引かせていただく形で構いませんね?」
アールフェスの家に水を届けてもらう段取りを付けて、俺たちは商会を出た。水の準備に時間が掛かるので、手配は明日になるそうだ。
そのまま昨日別れたミカや騎士たちと合流する。
宿屋の人に頼んで食堂を貸し切りにしてもらい、皆で集まった。
「……領事館の件ですが、私たちの方でも考えてみたんです」
獣人の少女ミカが手を上げて発言する。
俺たちがいない間、ミカと騎士たちは仲良く相談していたそうだ。
「何かアイデアがあるの?」
「はい。建設中の領事館の完成を待っていては、いつになるか分かりません。それならば、もう建っている家を買い取ってみては」
なるほど妙案だ。
資金なら氷を売って調達できそうだしな。
「候補ってあったりする?」
聞いてみると、ミカは鼻息荒く、拳をにぎって力強く頷いた。
「はい! とっておきの物件があります!」
「どんなの?」
「数十年前に滅んだエーデルシアという国の領事館が空いているそうです。領事の人は全員首を吊って死んだとかで、誰も近づかない曰くつきです!」
ちょっと待て。
「事故物件じゃあないか」
ロキが「うげげ」と頬をひきつらせる。
「はい! ミカおすすめの物件です!」
なんでやねん。おっと、地方の方言で突っ込みそうになってしまった。
「何でも死んだ人の怨念のせいで、年中、冷気が漂っているそうです。暑いのが苦手なゼフィさまや、冷気に慣れたローリエの皆さんには良いかと……」
ミカの言葉が段々尻すぼみになっていく。
途中で変な提案をしていると気付いたらしい。
確かに俺たちは暑いのは嫌だから涼しいところに行きたいと思っていたけど、亡霊の怨念はちょっと違うのでは。
それにエーデルシアという地名が引っかかる。
数十年前、エーデルシアから沸いて出た亡者の軍勢が世界の平穏を脅かした。その戦争で活躍したのが、無敗の六将――すなわち俺の前世だ。だからエーデルシアには少なからず因縁がある。
「ゼフィ、その建物に行ってみよう」
止めた方が良いと思っていた俺だが、服の裾をクロス兄が引っ張ったので、考えを中断した。
「どうしたの兄たん」
「死者系のスケルトンは乾いた骨、バリバリ食える菓子のようなものだ。ゴーストは口の中でぐるぐるするのをプチっとつぶすと、魂汁が出てきて何とも言えずうまい」
「ご飯なんだね、兄たん……!」
前世でつちかった人間の常識が邪魔して気付かなかった。
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「よし、エーデルシアの領事館へ行ってみよう!」
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