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青竜の騎士《アールフェス修行編》
116 美味しい朝ごはんを食べました
竜の営巣地に行くと決めたアールフェスたちだが、その前に近くの街に寄って準備を整えることにしたようだ。
合流した時は夜中だったから、すぐに地上に降り、宿を取って休んだ。
連れ込み宿じゃあるまいし、普通は夜中になってから当日の宿の部屋を押さえるのは難しいのだが、パリスの奴は有名人風を吹かせて宿の人を丸め込んだみたいだ。
俺は結局、子狼の姿で名乗れずじまいだった。
もう夜だしとアールフェスの腕を蹴って離れ、シエナという獣人の少女の寝床に潜り込んだ。レディーファーストを名乗るパリスらしく、女の子だけ一人部屋を取っている。パリスとアールフェスと一緒に寝たくない俺的には好都合である。
「おいこら、お前はオスだろ!」
アールフェスが文句を言っているけど無視。
ウサギの獣人だからかな。
彼女からは草食動物の良い匂いがする。
「うわあ、可愛い。一緒に寝ようね!」
シエナは「俺が美味しそうな子だな」と思ってると知らず、頬をほころばせて抱きしめてくれる。
この姿で役得だな。
ついでに柔らかいウサギ耳の先っぽを齧ってみたが、肉があまり付いていなかったので食べるのは諦めた。シエナは「くすぐったい」と笑っていた。
次の日の朝。
「おはよう、今日は良い天気だね!」
シエナは窓を開いて息を大きく吸い込んでいる。
俺はシエナの肩に飛び乗って窓から景色を眺めた。
うっすら雪を被る、切り立った崖のような山脈が見える。
山の中腹から野原が広がっていて、白や黄色の花が乱れ咲いていた。
麓には赤みがかった三角の煉瓦屋根の家が並んでいる。
ここはたぶん、花の国オリエントだ。
「竜ってすごいですね。あっという間に国境を超えるんだから」
シエナが感嘆の声をもらす。
俺は外の空気から感じるご飯の匂いが気になっていた。
朝ごはん!
「あっ、子犬ちゃん?」
ジャンプして窓から外に出ると、屋根をとことこ歩く。
美味しそうな湯気が立っている部屋を見つけて、豪快にダイブした。
「うわ! どこから入ってきたんだ、この犬?!」
窓からスタッと華麗な着地を決める。
部屋は予想通り台所らしく、エプロンを付けたおっさんが目を丸くしていた。
ことこと鍋が煮立っている。
俺に気にせず料理を続けてくれたまへ。
「なんだ、メシを食いに来たのか? もうすぐだから大人しく待っててくれよ」
おっさんは、俺が邪魔にならない場所で行儀よく座ったのを見ると、ニコニコ笑った。
鍋の中身は皮をむいて細かく切ったジャガイモのようだ。
興味深いことに、水ではなく牛乳で煮込んでいる。
牛乳のまろやかな良い香りがした。
火が通るまであと数分といったところか。
おっさんは塩とニンニクをすりつぶしたもの、橙色のナツメグの実の粉を鍋に入れて味を調えている。
「このぐらいか」
頷いて火を止め、四角い深めの皿に牛乳で煮たジャガイモを盛りつけた。
チーズを切り刻んだものを上から振りかけ、オーブンに入れて加熱する。
これは……ポテトグラタンだ!
「味見するか、ワンコ?」
おっさんは最初に焼きあがった皿を、俺の前に置いてくれた。
分かってるじゃないか。
熱々のグラタンが冷めるように、尻尾をぱたぱた振って風を送る。
冷めてきたころに皿に口を付けた。
チーズに焼き目が付いて、パリパリの皮ができている。煮込んだジャガイモが溶けこんで、牛乳がとろとろだ。口の端にひっついたチーズがビニョーンと伸びる。
うーん、クリーミーで、ジャガイモほくほくで、うまっ!
「すみません、ここにうちの犬がお世話になってませんか」
俺のお腹がいっぱいになったところで、台所の出入り口に黒髪の青年が現れた。
シエナから聞いたんだろう。アールフェスが俺を探しに来たらしい。
ここが分かったのは上出来だが。
「わっ」
ジャガイモの皮にすべって盛大に転んだ。
「大丈夫かい、ぼっちゃん」
「いたたた……」
しまらない奴だ。台所の出入り口で転ぶ奴は珍しいのだろう、宿の料理人のおっさんも呆れた様子だ。
俺は素知らぬ顔で、アールフェスの頭を踏んづけて、通路に出た。
「この……馬鹿犬!!」
背後で誰かさんが文句を言っている。
はー、お腹満腹だし、良い気分だなー。
「おかえり、子犬ちゃん。アールフェスが探しに行ってたけど、会わなかった?」
通路をとことこ歩いていくとロビーでシエナが待っていた。
俺は賢い子犬の振りをしながら彼女の腕の中に飛び込む。
アールフェス?
あいつならそこで滑って転んでたよ。
合流した時は夜中だったから、すぐに地上に降り、宿を取って休んだ。
連れ込み宿じゃあるまいし、普通は夜中になってから当日の宿の部屋を押さえるのは難しいのだが、パリスの奴は有名人風を吹かせて宿の人を丸め込んだみたいだ。
俺は結局、子狼の姿で名乗れずじまいだった。
もう夜だしとアールフェスの腕を蹴って離れ、シエナという獣人の少女の寝床に潜り込んだ。レディーファーストを名乗るパリスらしく、女の子だけ一人部屋を取っている。パリスとアールフェスと一緒に寝たくない俺的には好都合である。
「おいこら、お前はオスだろ!」
アールフェスが文句を言っているけど無視。
ウサギの獣人だからかな。
彼女からは草食動物の良い匂いがする。
「うわあ、可愛い。一緒に寝ようね!」
シエナは「俺が美味しそうな子だな」と思ってると知らず、頬をほころばせて抱きしめてくれる。
この姿で役得だな。
ついでに柔らかいウサギ耳の先っぽを齧ってみたが、肉があまり付いていなかったので食べるのは諦めた。シエナは「くすぐったい」と笑っていた。
次の日の朝。
「おはよう、今日は良い天気だね!」
シエナは窓を開いて息を大きく吸い込んでいる。
俺はシエナの肩に飛び乗って窓から景色を眺めた。
うっすら雪を被る、切り立った崖のような山脈が見える。
山の中腹から野原が広がっていて、白や黄色の花が乱れ咲いていた。
麓には赤みがかった三角の煉瓦屋根の家が並んでいる。
ここはたぶん、花の国オリエントだ。
「竜ってすごいですね。あっという間に国境を超えるんだから」
シエナが感嘆の声をもらす。
俺は外の空気から感じるご飯の匂いが気になっていた。
朝ごはん!
「あっ、子犬ちゃん?」
ジャンプして窓から外に出ると、屋根をとことこ歩く。
美味しそうな湯気が立っている部屋を見つけて、豪快にダイブした。
「うわ! どこから入ってきたんだ、この犬?!」
窓からスタッと華麗な着地を決める。
部屋は予想通り台所らしく、エプロンを付けたおっさんが目を丸くしていた。
ことこと鍋が煮立っている。
俺に気にせず料理を続けてくれたまへ。
「なんだ、メシを食いに来たのか? もうすぐだから大人しく待っててくれよ」
おっさんは、俺が邪魔にならない場所で行儀よく座ったのを見ると、ニコニコ笑った。
鍋の中身は皮をむいて細かく切ったジャガイモのようだ。
興味深いことに、水ではなく牛乳で煮込んでいる。
牛乳のまろやかな良い香りがした。
火が通るまであと数分といったところか。
おっさんは塩とニンニクをすりつぶしたもの、橙色のナツメグの実の粉を鍋に入れて味を調えている。
「このぐらいか」
頷いて火を止め、四角い深めの皿に牛乳で煮たジャガイモを盛りつけた。
チーズを切り刻んだものを上から振りかけ、オーブンに入れて加熱する。
これは……ポテトグラタンだ!
「味見するか、ワンコ?」
おっさんは最初に焼きあがった皿を、俺の前に置いてくれた。
分かってるじゃないか。
熱々のグラタンが冷めるように、尻尾をぱたぱた振って風を送る。
冷めてきたころに皿に口を付けた。
チーズに焼き目が付いて、パリパリの皮ができている。煮込んだジャガイモが溶けこんで、牛乳がとろとろだ。口の端にひっついたチーズがビニョーンと伸びる。
うーん、クリーミーで、ジャガイモほくほくで、うまっ!
「すみません、ここにうちの犬がお世話になってませんか」
俺のお腹がいっぱいになったところで、台所の出入り口に黒髪の青年が現れた。
シエナから聞いたんだろう。アールフェスが俺を探しに来たらしい。
ここが分かったのは上出来だが。
「わっ」
ジャガイモの皮にすべって盛大に転んだ。
「大丈夫かい、ぼっちゃん」
「いたたた……」
しまらない奴だ。台所の出入り口で転ぶ奴は珍しいのだろう、宿の料理人のおっさんも呆れた様子だ。
俺は素知らぬ顔で、アールフェスの頭を踏んづけて、通路に出た。
「この……馬鹿犬!!」
背後で誰かさんが文句を言っている。
はー、お腹満腹だし、良い気分だなー。
「おかえり、子犬ちゃん。アールフェスが探しに行ってたけど、会わなかった?」
通路をとことこ歩いていくとロビーでシエナが待っていた。
俺は賢い子犬の振りをしながら彼女の腕の中に飛び込む。
アールフェス?
あいつならそこで滑って転んでたよ。
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