ヒノモトノタビ

イチ

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3話:ユウの過去

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弾薬を購入し、地上へ出る準備を終えたユウは、出口近くで待っていた シンヤ の元へ向かった。

「お待たせしました。」

「おうよ!…おいおい、銃は?」

ユウが身に付ける武装を見て、シンヤは目を丸くした。

右足のホルスターに入ってるのは「9mm拳銃」。
バックパックに留められているのは、単発式の「滑腔式小銃丙型」。
そして左腰には日本刀を携えていた。
ユウは小銃を所持していなかったのだ。

「先日壊れてしまいまして…使い勝手の悪いパイプ小銃でしたし、必要ならまた作ろうと思います。」

…『簡易歩兵小銃乙型』通称『パイプ小銃』。
パイプや鉄クズを加工して作られた小銃。
比較的丁寧に作られる甲型に比べ、生産性の重視を為されている。ある程度の道具で作成可能だ。

「作る…って事は乙型か。まあ、無いよりはマシ程度か。
っと、こんな事してる場合じゃねーな。出るぞ!」

警備兵がエアロックを開ける。

「帝国バンザーイ!」

合言葉と共に2人は地上へ向かった。


◇   ◇   ◇   ◇


(少し…風が強いな。)

外に出ると、相変わらずの光景が広がっていた。窓ガラスのないコンビニ。横倒しの高速道路。
だが、ユウには戦前それが何だったのかは分からない。

シンヤが今にも崩れそうな六本木ヒルズを指差して言った。

「あの建物はいつ崩れるんだかな。怖いのぉ。まぁいいや、近道しながら行くぞ!」

2人は黒焦げのタンクローリーを越えた。
空になったタンクから何かが顔を出したが、すぐに引っ込んだ。

(臆病な獣蟲か。全部がこうなら良かったのに。)

ふとシンヤがユウに尋ねた。

「なあユウ、お前の出身はどこなんだ?」

「…6歳まで地下鉄駅のどこかに住んでいました。名前は分かりませんが。」

「ふむ。6歳まで。それからは?」

「埼玉のツクバ村で育てられ、14歳で村を出ました。
…周りを警戒しましょうよ。」

「おいおいこんな辛気臭い街歩いてんだからよぉ、良いじゃねぇか!
安心しろ。ちゃんと見てるからよ!」

そう言ってわざとらしく顔を振り辺りを見渡すシンヤ。

ユウは少し呆れ顔だ。

「で、なんで村に移った?」

(話したくないって言っても無駄だろうな…)

「…両親が共産主義者を匿ったとして、駅を追われました。
父はその事実が発覚し、家で兵士に殺されました。
母は、私を逃がそうとしているところを獣蟲に襲われ、トンネルで死にました。」

「…ふーむ。反共感情の強い北方の駅か。」

暗い過去を話すのは辛い。だが、話し終えたあとは少し楽になるものだ。

「匿った共産主義者…私の記憶には、宿を貸した優しい旅人でした。
自分にもこれくらいの子がいる
と、何度も頭を撫でられたのを覚えています。」

「俺は連中があまり好きじゃない…が、奴らも人だからな。
しかし、獣蟲に襲われたんだろ?そん時お前は6歳。よく生き残れたな。」

「ええ。何かが…助けてくれたんです。すぐに気を失ったため、顔は覚えていませんがね。
それが私をツクバ村まで連れてくれたようです。
ツクバ村では、それを「土竜神」と呼んでいました。」

シンヤはそれを聞き、小声で呟いた。
「土竜神…トンネル…掘人族かもしれんな。」

「え?なんて言いました?」

聞き取れずにユウはシンヤに尋ねる。
が、ここでシンヤが何かに気づいた。

「…僅かに地面が揺れてる。こりゃ何か来るな。隠れるぞ!」

遅れてユウも微かな揺れを感じ取った。

2人は急いで近くの建物に入り、デスクの下に潜り込んだ。
隙間から外の様子を伺う。

(揺れを確かに感じるようになった。何かの群れが…来る!)

「ボウッバウッ  ゴルルル」

(…狛犬か!!あんなに群れを成しているのは初めて見るな。)

…狛犬
体高80cm程体重は90kgにもなる犬のような獣蟲。例を取るならば、ゴールデンレトリバーの一回り二回りの大きさだ。
体毛はまばらであり、今なお変異し続ける様子が伺える。
1対1で対峙してもかなり脅威となりえる。

(2~30程の群れだろうか)


突然、ユウが潜り込んでいるデスクが大きく揺れた。

「フーッ フーッ」
すぐ上から荒い吐息が聴こえる。

(嘘だろ…上に乗ってきた!)

ユウは口を手で押さえ、気配を消す。

ドンッ

狛犬がユウの目の前に降りた。
背を向けているためまだ見つかっていない。

(やばい…仲間を呼ばれたらどうにも出来ない…銃も音が出るし、この体勢では刀も抜けない…!)

「ゴルルル」
辺りを見渡す狛犬。

ゆっくりとこちらに顔を…

「オオーーーン…」

遠くから狛犬の遠吠えが聞こえた。群れの仲間だろう。

「オオーーーン!!」

目の前の狛犬が返事をすると、その場から走り去っていった。

(あ、危なかった…)
ダラダラと冷や汗を流していたユウは、呼吸を整えた。

狛犬が駆けて行った方向から、銃声が聞こえ始めた。

「遠くで銃声が聞こえる。捜索隊が狛犬の群れにかちあったかな。
…大丈夫か?」

辺りの安全を確認し、シンヤが出てきた。

「大丈夫です。
捜索隊の方…かどうかは分かりませんが、我々は幸運でしたね。
今のうちに行きましょう。」

シンヤは先ほどの危機を忘れるかのように笑って言った。

「そうだな!お宝貰いに行こうや!」
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