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第1巻 1期目 臨時国会
高速道路とホームドア
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ここは国土交通省大臣室。国土交通省の幹部級の間では犬猿の仲と噂される、秋屋誠二大臣と渦川俊郎副大臣が同じ部屋に向かい合って座っていた。
「いつになったらホームドアやるのさ」
苛立ちながら秋屋誠二が問いただす。
「ホームドアなんか誰がやるか」
と声に出しては言わなかったがそれが渦川俊郎の本心であった。
もともと大臣確実と思われていた渦川俊郎が降格の形で副大臣となっただけあって、二人の関係は良好とは言えない。それは渦川のサボタージュの形で如実に現れていた。
厚生労働大臣時代には先進的な政策も実行し名を高めていた渦川であったが、国交省副大臣になってからは、地元の有権者周りばかりをしていた。
「今日も人身事故で電車遅延だってさ。君次第で救われた命もあるんじゃないかと思うよ」
秋屋誠二はこのところイライラしていた。民自党の外では民衆党の浜田が公共事業の費用対効果への追求を強めており、何か大きな成果を上げ、私の指揮の下、国交省は頑張ってますよと言い返してやりたい。しかし内では直属の部下のサボタージュに晒され思うような成果を上げていないのが現実だ。
「ホームドア。ホームドア」
呪文のように秋屋は反復する。
「そんなにホームドアが好きなら自分で設置すればいいんじゃないか」
と渦川は思う。もう馬鹿馬鹿しいと席を立とうとしたところ、
「なんなら琵琶湖の君のホテルの目の前に高速道路でも通してやろうか」
「なんだと」
勢いよく立ち上がり、渦川はそれは親父のホテルだと言ってやりたかったがここでの本題はそうではない。
「いいじゃない。福井県の俺の選挙区からさ、琵琶湖を突っ切って大阪まで伸びる高速道路。日本の中央をぶった切る新しい大動脈になるよ」
秋屋誠二は言っちゃった言っちゃったといわんばかりにルンルン踊っている。
あまりにも子供じみた秋屋の姿に渦川は呆然とした。まあ、あっても悪くない道路だとも思うが、いったいいくらかかるかはわかっているのだろうか。というより、親父のホテルの目の前を高速道路でぶっちぎることさえこの秋屋は本気でやりそうだと渦川は恐れた。
「ホームドアをやればいいんですね」
「僕はどっちでもいいよ」
なおもとぼける秋屋を置いて、渦川は大臣室を飛び出した、もちろんホームドア設置の政策を行うために。
渦川は大臣室から伸びる廊下を歩きながら秋屋に押し付けられた仕事をどうするかを考えている。
「このまま秋屋の言いなりなど癪だ何か手はないだろうか」
ここまでこの人事に抵抗してサボタージュを続けていたのに今更素直に従う部下などになれない。できればこれを機に反乱でも起こして秋屋を追い落としてやりたいが、秋屋が所属する派閥を敵にするのは危険だ。
いろいろ考えを回しているうちにある男の顔が浮かぶ無所属の古味良一だ。
古味良一がホームドアの設置を公約に掲げて当選したのは結構有名だ。無所属では動きようがないだろうからここで話を持ち掛ければ食らいついてくるかもしれない。また、下手に民自党の議員を使おうとして秋屋に根回しされたら元も子もない。しかし、議員会館の部屋を無理に交換させたことを根に持っていないだろうか。
「ここは彼女に頼むか」
渦川は一人でパチンと指を鳴らし、何度となく危機を打開してくれた頼れる秘書へスマホから連絡を入れた。
「順子君。無所属の古味良一議員に連絡してくれるかね」
「えっ」
古味と言われて一瞬誰のことかと思ったが、あの時の若者、議員宿舎の渦川の部屋を覗き込んで、自分に投げ飛ばされた男であることを思いだす。
「わかりました。で、なんと言えばいいんですか?」
「彼の政治活動のためにいい話がある。会談の場所は議員会館の私の部屋だと伝えてくれ」
「いつになったらホームドアやるのさ」
苛立ちながら秋屋誠二が問いただす。
「ホームドアなんか誰がやるか」
と声に出しては言わなかったがそれが渦川俊郎の本心であった。
もともと大臣確実と思われていた渦川俊郎が降格の形で副大臣となっただけあって、二人の関係は良好とは言えない。それは渦川のサボタージュの形で如実に現れていた。
厚生労働大臣時代には先進的な政策も実行し名を高めていた渦川であったが、国交省副大臣になってからは、地元の有権者周りばかりをしていた。
「今日も人身事故で電車遅延だってさ。君次第で救われた命もあるんじゃないかと思うよ」
秋屋誠二はこのところイライラしていた。民自党の外では民衆党の浜田が公共事業の費用対効果への追求を強めており、何か大きな成果を上げ、私の指揮の下、国交省は頑張ってますよと言い返してやりたい。しかし内では直属の部下のサボタージュに晒され思うような成果を上げていないのが現実だ。
「ホームドア。ホームドア」
呪文のように秋屋は反復する。
「そんなにホームドアが好きなら自分で設置すればいいんじゃないか」
と渦川は思う。もう馬鹿馬鹿しいと席を立とうとしたところ、
「なんなら琵琶湖の君のホテルの目の前に高速道路でも通してやろうか」
「なんだと」
勢いよく立ち上がり、渦川はそれは親父のホテルだと言ってやりたかったがここでの本題はそうではない。
「いいじゃない。福井県の俺の選挙区からさ、琵琶湖を突っ切って大阪まで伸びる高速道路。日本の中央をぶった切る新しい大動脈になるよ」
秋屋誠二は言っちゃった言っちゃったといわんばかりにルンルン踊っている。
あまりにも子供じみた秋屋の姿に渦川は呆然とした。まあ、あっても悪くない道路だとも思うが、いったいいくらかかるかはわかっているのだろうか。というより、親父のホテルの目の前を高速道路でぶっちぎることさえこの秋屋は本気でやりそうだと渦川は恐れた。
「ホームドアをやればいいんですね」
「僕はどっちでもいいよ」
なおもとぼける秋屋を置いて、渦川は大臣室を飛び出した、もちろんホームドア設置の政策を行うために。
渦川は大臣室から伸びる廊下を歩きながら秋屋に押し付けられた仕事をどうするかを考えている。
「このまま秋屋の言いなりなど癪だ何か手はないだろうか」
ここまでこの人事に抵抗してサボタージュを続けていたのに今更素直に従う部下などになれない。できればこれを機に反乱でも起こして秋屋を追い落としてやりたいが、秋屋が所属する派閥を敵にするのは危険だ。
いろいろ考えを回しているうちにある男の顔が浮かぶ無所属の古味良一だ。
古味良一がホームドアの設置を公約に掲げて当選したのは結構有名だ。無所属では動きようがないだろうからここで話を持ち掛ければ食らいついてくるかもしれない。また、下手に民自党の議員を使おうとして秋屋に根回しされたら元も子もない。しかし、議員会館の部屋を無理に交換させたことを根に持っていないだろうか。
「ここは彼女に頼むか」
渦川は一人でパチンと指を鳴らし、何度となく危機を打開してくれた頼れる秘書へスマホから連絡を入れた。
「順子君。無所属の古味良一議員に連絡してくれるかね」
「えっ」
古味と言われて一瞬誰のことかと思ったが、あの時の若者、議員宿舎の渦川の部屋を覗き込んで、自分に投げ飛ばされた男であることを思いだす。
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「彼の政治活動のためにいい話がある。会談の場所は議員会館の私の部屋だと伝えてくれ」
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