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第2巻 そして解散へ
ライオン(民自党)は兎(上親)を倒すのに全力を尽くす
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衆議院が、ついに解散された。
その報せは遠く離れた長崎県・五島列島にも届き、地方政界に波紋を広げていた。
解散風に乗るようにして、**地域政党「地方の風」を立ち上げた水本上親(みずもと・じょうしん)**は、当然のごとく出馬を表明する。
「ついにこの日が来よったな…」
町議時代に貯めた虎の子の資金は、供託金・事務所設営・ポスター印刷であっという間に消えた。
まさに背水の陣。それでも、事務所いっぱいに集まった支援者の顔を見て、上親は満足げだった。
「これだけ人が集まってくれたら、金のことなんぞ言うてられへん!」
そう言って上親は、集まった支援者一人ひとりと力強く握手を交わしていった。
一方その頃、場所は赤坂の高級料亭「夕凪」。
民自党幹事長・狭間譲は、腹心たちを前に選挙区ごとの候補者選定に入っていた。
総理・阿相元春が「内憂外患」と称するように、今回の解散は隣国との外交摩擦、水園寺炎上騒動、選挙制度改革問題など、複合的な火種が絡む難局だった。
とくにメディアによる民自党へのバッシングは熾烈を極めていた。
しかし、党の独自調査によれば、地方ではこの逆風の影響は薄い。
有権者の関心は「国防」や「制度改革」ではなく、「地域振興」などの地元密着型課題に集中しているという。
「議席は地方であれ都市であれ、1つは1つだ。地方を落とせば、党全体が沈む」
狭間はそう言って、特に注目すべき地方選挙区に目を光らせていた。
その中で、狭間の視線は一つの名前に留まる。
「水本上親……面白いな」
元町議で、常に紋付羽織袴を身にまとい、神輿に乗って市街を練り歩く――一見すれば色物の売名屋だが、地元の支持は驚くほど固い。
なにより、**「地方対都会」**という構図で争点を作る手腕は、逆風の今こそ光る可能性を秘めている。
「狭間幹事長。この男、田舎者ではありますが、侮れません。芽は小さいうちに摘んでおくべきかと」
「……分かっている。どこの選挙区だろうと、1議席は1議席だ」
こうして狭間は、水本の選挙区に大物候補・立石健一をぶつける方針を固めた。
再び、五島列島・水本上親の選挙事務所。
上親は椅子に深く座り込み、じっと耳を澄ませていた。事務所には支援者が詰めかけ、誰からともなく対立候補の情報が語られ始めていた。
「名前は……立石健一。当選7回……ってベテランじゃないか」
「えっ、誰? 今までここじゃ見たことないよね」
「東大卒……!」
支援者たちに緊張が走る。いくら田舎でも、「東大」という言葉の持つブランド力は絶大だ。
「騒ぐな。東大出た政治家なんか掃いて捨てるほどおるわ」
上親は一喝したが、その表情にはすでに焦りの色が浮かんでいた。
「……アメリカのビジネススクール卒業。経済企画庁から政界入り……」
「地方創生大臣経験者だって。地方行政のエキスパートらしい」
支援者から思わず声が上がる。
「無理だって、そんなの……」
「俺たちの上親さんじゃ、荷が重いよ……」
ざわめきが広がる。元町議の上親と、キャリア官僚→大臣という華々しい経歴の立石。比べるのが酷という声も出た。
「慌てなや! 相手がエキスパートでも、こっちは先祖代々この地に根ざして生きとるんや!」
必死に支援者をなだめる上親だったが――その実、内心ではぐらついていた。
普段は何があっても泰然としている上親が、このときばかりは明らかに動揺していた。
額には滲む冷や汗、拳を握る手にもかすかな震えがあった。
果たして、五島の風は中央政界に届くのか――。
その報せは遠く離れた長崎県・五島列島にも届き、地方政界に波紋を広げていた。
解散風に乗るようにして、**地域政党「地方の風」を立ち上げた水本上親(みずもと・じょうしん)**は、当然のごとく出馬を表明する。
「ついにこの日が来よったな…」
町議時代に貯めた虎の子の資金は、供託金・事務所設営・ポスター印刷であっという間に消えた。
まさに背水の陣。それでも、事務所いっぱいに集まった支援者の顔を見て、上親は満足げだった。
「これだけ人が集まってくれたら、金のことなんぞ言うてられへん!」
そう言って上親は、集まった支援者一人ひとりと力強く握手を交わしていった。
一方その頃、場所は赤坂の高級料亭「夕凪」。
民自党幹事長・狭間譲は、腹心たちを前に選挙区ごとの候補者選定に入っていた。
総理・阿相元春が「内憂外患」と称するように、今回の解散は隣国との外交摩擦、水園寺炎上騒動、選挙制度改革問題など、複合的な火種が絡む難局だった。
とくにメディアによる民自党へのバッシングは熾烈を極めていた。
しかし、党の独自調査によれば、地方ではこの逆風の影響は薄い。
有権者の関心は「国防」や「制度改革」ではなく、「地域振興」などの地元密着型課題に集中しているという。
「議席は地方であれ都市であれ、1つは1つだ。地方を落とせば、党全体が沈む」
狭間はそう言って、特に注目すべき地方選挙区に目を光らせていた。
その中で、狭間の視線は一つの名前に留まる。
「水本上親……面白いな」
元町議で、常に紋付羽織袴を身にまとい、神輿に乗って市街を練り歩く――一見すれば色物の売名屋だが、地元の支持は驚くほど固い。
なにより、**「地方対都会」**という構図で争点を作る手腕は、逆風の今こそ光る可能性を秘めている。
「狭間幹事長。この男、田舎者ではありますが、侮れません。芽は小さいうちに摘んでおくべきかと」
「……分かっている。どこの選挙区だろうと、1議席は1議席だ」
こうして狭間は、水本の選挙区に大物候補・立石健一をぶつける方針を固めた。
再び、五島列島・水本上親の選挙事務所。
上親は椅子に深く座り込み、じっと耳を澄ませていた。事務所には支援者が詰めかけ、誰からともなく対立候補の情報が語られ始めていた。
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「騒ぐな。東大出た政治家なんか掃いて捨てるほどおるわ」
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「……アメリカのビジネススクール卒業。経済企画庁から政界入り……」
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支援者から思わず声が上がる。
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「俺たちの上親さんじゃ、荷が重いよ……」
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「慌てなや! 相手がエキスパートでも、こっちは先祖代々この地に根ざして生きとるんや!」
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普段は何があっても泰然としている上親が、このときばかりは明らかに動揺していた。
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果たして、五島の風は中央政界に届くのか――。
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