会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

文字の大きさ
68 / 94
第2巻 そして解散へ

渦川俊郎の弱点

しおりを挟む
「親父に金の無心など学生時代以来だな」
 この日、渦川俊郎は久しぶりに父親が経営するホテルを訪ねていた。そのホテルは琵琶湖のほとりに面しているだけあって、ゆっくりと琵琶湖の夜景を楽しみながら眠れることが売りだった。その他、魚介類を使った料理や別料金になるが遊覧船のツアーなどもあり、一泊で琵琶湖を堪能できると言っても過言ではないだろう。実際、利用した客の評判は上々で渦川俊郎の父の経営手腕の表れであったかもしれない。
「社長ですね。少々お待ちください」
 受付は父親である社長に連絡して快く通してくれた。社長室は1階フロアの従業員室のさらに奥だ。
「俊郎元気にしていたか」
 白髪にしわがよっていて高齢であるのは確かだが、ぴんとした背筋はまだまだ体が壮健であることを伺わせる。
「親父、金だ。金がいる」
「だから言っただろう。政治は金がかかると、でいくら必要なんだ」
 政党の現職4人に1000万円ずつ配ってしまった上、集めたその他の公認候補たちへもある程度補助が必要であった。手持ちの金でそこまではどうにかなったが、肝心の自分の選挙資金が心細い状況であった。
「これで最後だぞ」
 渦川が民自党を離党したときに苦戦するのは覚悟はしていたのかもしれない。金庫には3000万円の札束が用意されていた。
「恩に着る」
 渦川もまた札束を紙袋に入れ、必死の形相でホテルを後にしたのだった。

 さて、ここは国土交通大臣室。現在の主は変わらず秋屋だったが、彼は部屋の中でルンルン気分であった。
「渦川の馬鹿が、民自党を出て行ったりして、今頃おけらと閑古鳥の大合唱じゃない♡」
 そうは言っても、もちろん渦川の動向の監視に余念はない。秋屋の選挙区は福井県なので滋賀県の渦川と直接戦うことはないが、当然、強力な刺客候補を送るよう民自党幹部には要求している。
「ええーと、刺客ちゃんには誰をよこすのかな?」
 秋屋は送られてきた資料の中から渦川の選挙区に出る候補者を確認した。
「福田京子。えっ女?」
 参議院からの鞍替え候補者で、当選回数はまだ2回だ。女性の政治家らしく、女性の社会進出に関する政策に積極的であるが、やっぱり執行部よりに発言を控えることが多く、それほど急進的でない。あまり、目立ってメディアに取り上げられるような政治家ではないだろう。
「こんなの当てたって渦川に勝てっこないよ」
 どうしてだろう。阿相総理はやはり元味方だった渦川に手心を加えたのだろうか。それじゃあ追い出した俺の立場がないじゃない。
「県連の一部の勢力に渦川に味方する奴までいるみたいじゃないの」
 民自党を離党したとは言え、選挙地盤は固かった。民自党内で秋屋にできることはもうなさそうなので、自分の選挙事務所で選挙準備に当たっている秘書に連絡を取ることにした。
「えっ先生。渦川俊郎?それよりもご自分の選挙区のことを考えてくださいよ。こっちもいっぱいいっぱいなんですから」
 どうせ、比例名簿の上位に名前のある秋屋は選挙などどうでもよかったのだが秘書は一生懸命らしい。
「支援団体の方がまた何名もいらして秋屋大臣にお会いしたいと。たまには地元の方にも顔を出してください」
「こっちだって、永田町の権力争いを戦ってやっと今の地位にいるんだぞ。渦川叩きだって俺に取っては大事なんだ」
「わかった。わかりました。正直、他の選挙区のことなんか構っている場合じゃないんですけどね。。。こんな情報しかありませんが送っておきます」
 しばらくするとFAXで渦川に関する資料が送られてくる。なるほど、自分で政党を立ち上げるだけあって、身辺には気を使っているようだ。流石に政治生命に関わるような金銭トラブルはないらしい。ただ一つ、本人とは直接関係がないが、父親のホテルが地元の漁業組合とホテルの排水絡みで多少のいざこざを抱えているということだ。
「弱点がないのなら見つければいい。それがどんなに小さいものでも」
「ねじこみ」
 FAXの紙をまるめ、その穴に指を突っ込む。
「こねくり回し」
 指をぐりんぐりん動かす
「引っ掻き回せば」
 FAXの紙をびりびりに破り捨てる。
「どんどん傷口は広がって、致命傷にだってなるんだもんねー」
 秋屋は大臣室で一人大声を上げてその場でスキップを始めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
青春
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...