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第2巻 新革党の選挙戦

動画サイト「ヨーツーベ」からの船出

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 さて、駅前から撤退したはいいが今後の選挙運動はどうやっていこうか。まさか義光だって自分の選挙もあるのに毎日見張りに来るはずもないが、できるだけ人前での衝突は避けたい。
 直接顔を合わせることなく、言いたいことを言うには。。。答えは一つ。ネットだ。そして、もともと炎上選挙をやってきただけあって俺はネットは得意と自負することができる。もちろん、世の政治家でインターネットを利用している人はあまたいるわけだが、それらの人たちに俺が引けをとることはないだろう。
「よしっ」
 俺はそう言うと動画サイト「ヨーツーべ」用の動画制作に乗り出した。まあ、俺も動画制作自体をやったことがないわけではないが、こういうときは素人ではうまくアピールできるものができないかもしれない。そこで、目白さんに頼み近くの動画制作会社を見つけてもらった。
 動画制作はCGによる演出と支援者の方たちにも参加して頂き、大航海時代をイメージした船が嵐を乗り切るというシナリオで動画を作ることにした。

↓↓↓ここから動画の中身↓↓↓

ガラガラガラ

稲妻轟く暴風雨を帆船が突き進んでいる。次から次に襲ってくる大波に船は今にも沈みそうだ。そんな中、船長(俺)は、船が上下に揺さぶられる中、振り落とされそうになりながらも、必死に舵にしがみついてる。
 しかし、一瞬の気の緩みか俺の身体は舵を離れ中に浮いてしまう。

ガシッ
「大丈夫ですか?」
 間一髪、海の中に放り出されればそのまま藻屑となるところであったが、船員達に身体を受け止められ九死に一生を得る。
「大丈夫だ。いや、ありがとう。君たちがいなければ海の藻屑となるところだった」
「嵐はまだ抜けれませんか」
「いや、古味さんあれを見てください」
 一人の船員が指さした先に見えるのは雲の切れ間だった。

 シーンは切り替わり、今度は快晴と穏やかな海の中を船が進んでいる。そんな中、船の先頭で望遠鏡を構えていた一人の船員が叫ぶ。
「船長!港です」
 そこに居合わせた船員たちの表情が一斉に明るくなる。そして、港には大勢の人たちが集まり船に向かって手を振っている。
「船長~」
「俺たちは勝ったんだ」

 バンザーイ、バンザーイ。

 というところで大きな赤字の字幕が映像の上に被さる。

 巨大政党民自党に立ち向かう
 そして、水園寺割りに挑む
 新革党
 風雲児 古味良一

↑↑↑ここまで動画の中身↑↑↑
「どうでしょうか?古味さん。お気に召しましたか?」
 動画制作会社の担当者が俺に話しかける。
「なかなかいいできです。できれば最初の稲妻に合わせて、最後に出てきたような字幕のような感じで、マニフェストを出して頂けるとより有権者にアピールできる気がします」
「なるほど、マニフェストを出すと、なんて出せばいいですか?」
「そうですね。私はあまり外交とかは関係したことないんですが、党のマニフェストで出している弱腰外交打破や既存権益開放なんかをお願いします」
 こうして何度かの編集作業の後、選挙用動画は動画サイト「ヨーツーベ」にアップされた。
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