会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 当選~特別会前日

夜の散歩から帰るとキャバ嬢が・・・

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 俺は、都会の真夜中の雰囲気がけっこう好きだ。

 田舎のように真っ暗というわけでもなく、昼間のように人や車でごった返すこともない。
 程よい明るさと静けさのバランスが、都会特有の心地よさを生んでいる。

 そんなわけで、俺はふと思い立ち、真夜中の議員宿舎を出て、妹たちと再会した乃木坂駅のほうへ歩いてみることにした。

 夜でも開いている店はいくつかあり、どこもバーか居酒屋ばかり。
 中を覗くと、大学サークルの飲み会や会社の二次会らしき貸し切り宴会が行われていた。

 このまま進めば渋谷方面にも出られるルートで、深夜の割に人通りもちらほら。
 派手な服を着た若者も多く、中には見るからにキャバ嬢とわかる女性の姿もあった。
 このあたりの高級マンションに出入りしてるんだろうか。

 工事中のタワーマンションを過ぎると、公立の小学校と中学校が並んで建っていた。

 高級住宅街のど真ん中に、質素な公立校。
 なんだかアンバランスだが、もしかすると政治家の子息なんかも通っているのかもしれない。

 やがて交差点を渡り、乃木坂駅に着いた。
 特に用事もなかったが、そのまま駅に入り、電車に乗って赤坂まで戻ることにした。

 歩けば10分程度だが、電車なら3分もかからない。
 深夜にしては贅沢な移動だ。

 駅を出たところで、急に小腹がすいてきた。
 周囲を見渡すと、家系ラーメンの看板が目に入り、ふらっと入店することに。

 夜中にもかかわらず店内はなかなかの賑わい。
 トッピング込みで1000円ほど。赤坂にしては、意外と良心的な価格だった。
 (……まあ、昼に入ったあのパスタ屋が高すぎたのかもしれないが)

 地価が高くても、コンビニやラーメン屋の値段が全国一律に近いのは、日本経済の不思議なところだ。
 たとえば、100円のボールペンが赤坂だけ300円になるなんてことはない。
 富裕層がボールペンを買い占める理由もないしな。

 俺も国会議員になったとはいえ、赤坂に住んでいるのはあくまで“職場の都合”。
 この街の住人がみんな金持ちとは限らないのかもしれない。

「さてと、腹も満たされたし、そろそろ宿舎に戻るか」

 いつものように、ふらっとコンビニに寄って、漫画でも立ち読み……
 と、一瞬考えたが、さすがに今は国会議員の身。
 それどころか、エロ本なんて見ていた日には、週刊誌に撮られかねない。
 潔く宿舎に戻ることにした。

 議員宿舎のエントランスに入り、オートロックに手を伸ばしかけたその時だった。

 白の高級車がスッと玄関前に滑り込み、洗練されたハンドルさばきで停車した。
 「また気取った駐車だな」と思いながら、車から降りてくる女性に目をやる。

 以前、妹たちと目撃したあの“秘書風の美人”とは対照的だった。
 その女性は、茶髪の巻き髪ロング、虎柄のミニスカートに、毛皮付きのジャケット。
 ヒールを鳴らして、いかにも夜の街を歩き慣れている風貌だった。



 見るからに、キャバ嬢。

 俺がじっと視線を送っていたのに気づいたのか、彼女がこちらを睨み返してきた。

「……さっきからジロジロ見てるけど、あんたここの人? 国会議員?」

「え? まさか……あんた、私を呼んだ客ってわけじゃないわよね?」

 ……なにその斜め上の疑い方。

 俺が驚いていると、彼女はため息まじりに続けた。

「いいのかなぁ。議員宿舎にキャバ嬢なんて呼んじゃってさ」
「うるさいわね。文句あるなら客に言ってちょうだい。私は呼ばれたから来てるだけよ」
「なんなら、一緒に行って抗議してくれる?」

 その勢いに、俺は一瞬たじろいだ。
 まさか「一緒に相手してあげようか」なんて展開にはならないとは思うが……。

「お客さん待ってるの。邪魔だから、どいてくれる?」

 俺は、渋々道を譲った。

 彼女が乗ったエレベーターの表示は、13階で止まった。

 俺の部屋は12階だ。
 この前の“スーツ姿の美女”も13階で降りていた気がする。

「……まさか、議員宿舎で“おもてなし”三昧ってことか? のべつ幕なしに?」

 しょうもない妄想が頭を駆け巡る中、
 俺は彼女が乗ったエレベーターにもう一度乗り込み、自分の部屋へと戻った。
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