会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 当選~特別会前日

社由党へのお誘い

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 親父が来た昨日の出来事は衝撃だった。

 確かに運がよかったとはいえ国会議員に当選してから俺は浮かれていたかもしれない。会社を辞めてもし当選しなかったら無職になっていたわけだし、その時再就職が簡単にできただろうか。もし、また親のすねをかじりたいなどと言っていたら、親父の怒りは昨日の比ではなかっただろう。

 ・・・と気落ちしていたが腹は減るので、昨日買い込んだ食材を調理して食べることにした。
 パックの中に入っていたブリの煮つけをレンジで温め、ネギを細く切ったものを和えた。ご飯は炊いてあり、味噌汁は作ってあるので、味付け海苔を追加し朝食はこれくらいでいいだろう。

 すると不意にスマートフォンに着信が入った。ちょっと乗りの軽い着信音を設定していたので、気落ちしている今の自分にはむかつきもしたがそんなことを言っても始まらないので、画面を見ると発信元は知らない電話番号だった。

「セールスかな?」
「はい。古味です」
速攻切るつもりで出てみると、意外なところからの電話だった。

「もしもし、衆議院議員の古味さんでしょうか?私、社由党の室田大輔といいます」
「えっ?社由党の室田さんですか?何の用でしょうか?」
室田という国会議員の名前は聞いたことないな。秘書だろうか?

「この度は衆議院議員の当選おめでとうございます。初登院まで後数日ですがいかがお過ごしでしょうか?」
「うーん。まあぼちぼちと過ごしています」
「あっはっはは。そうでしたか。既にご存知のことと思いますが、特別会では総理大臣の指名投票が行われます。そのとき、社由党の党首、沼田隆二に投票していただけませんでしょうか?」
「一応、私は無所属なので自分で考えて投票しようと考えていました」
「無所属なのは存じています。しかし、古味先生も今後政治活動をしていく上で一人というわけにはいかないでしょう」
「もし、よろしかったらお互い助け合いませんか?」

 単刀直入に言うと社由党への勧誘らしい。今回の指名投票で社由党の党首に投票すれば、仲間と認めてやってもいいということか。
 昨日までの俺なら「考えておきます」ぐらいの返事で後は無視したかもしれない。しかし、親父の一件で多少弱気になっていた。
 もし、今の無所属の身分で次の選挙に落選したらどうなるだろう。何のつてもなく国会議員になってしまった身の上だ。その後は親父に約束した通り、職安行って再就職先を探すしかないだろう。
 しかし、ここで社由党の仲間と認めてもらえたらどうだろう。議席を全盛期に比べ大幅に減らしているとはいえ、歴史のある政党だ。例え国会議員ではいれなくても、地方選挙に公認してもらえたり、政党と関係ある就職先を探してもらえるかもしれない。

「私も国会議員になったばかりで多少悩んだりもしています。しかし、自分で公約も掲げてしまっているので、簡単にどこかの政党に入れてもらうわけには」
「古味先生が掲げている公約は我々も存じております。例えばホームドアの設置。まさか、古味先生国会議員だからって、鉄道会社に単身で乗り込むわけではないでしょうな?」

「・・・」

 確かにそうだった。一人でいきなり鉄道会社を訪ねてホームドアを設置してくれといっても、まともに相手してくれるわけがなかった。

「例えばそういうとき政党に所属していれば、いろいろなプロセスを取ることができます。政党として鉄道会社に働きかけてもいいですし、もし本当に人命に関わることだとすれば、法案を提出することもありえるでしょう」

 これは難しい問題だった。一人では法案を提出することはできないのだ。何も法案を提出したり成立させたりしているのは与党ばかりではない。国論を二分するような大問題の場合は激しく論戦を交わすが、与野党共同で提出している法案は他にいくつもあった。いきなり新参者の俺の意見を政党が取り上げてくれるとも思わないが、それだけでも自分としては十分政治活動をしたというアピールになるだろう。

「なるほどわかりました。指名投票の日までまだ日があるのでそれまで考えておきます」
結局、親父が来る前と同じ回答になった。

「よろしく頼みますよ」
プツンと電話を切る音が聞こえた。

 数で劣る野党はこういった無所属議員の囲い込みも行っているのだろう。

 とにかく、自分にとっては悩ましいが損な話でもないのでよくよく考えておこう。
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