会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 閉会~臨時国会前日

プレイアムフライデー音頭 on Air

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 昨晩は何年ぶりかの実家での就寝であったが、やはり安堵感があるのか夢も見ないほどにぐっすり眠ったようだ。久しぶりの息子の里帰りということもあって、今日は親たちも叩き起こそうとすることはなく、俺は12時過ぎたあたりにようやく目が覚めた。
 恵とその旦那は昨晩泊まらずに帰っていて、由香はとっくに学校に、親父は仕事に行っていて家の中には俺と母親だけだった。
「良ちゃんお昼食べるならよそうけど」
「ああ、食べる」
これがニート時代なら自分の食うものぐらい自分でよそえと言っていた母親だが、今日はそんなことなくやさしかった。
「由香の学校終わるの3時ぐらいかな?」
「さあねえ」
鍋を洗いながらあいまいな答えを返す。母親も娘の時間割までは把握していないようだ。仕方なく俺は3時前後を目標に由香の学校の最寄り駅に行くことにした。

 2時を過ぎたあたりにゆっくりと家を出た。駅まで歩くと20分強かかるがたまにはいい運動だろう。この駅までの道は高校・大学の頃は毎朝通っていた道だ。最後の会社に就職したときは千葉郊外に一人暮らしをしたので、こうして駅まで歩くのも久方ぶりである。途中にコンビニがあるので、ちょっと寄っていくことにした。雑誌コーナーを見ていると週刊文化収集の表紙はグラビアアイドルと国会議員の結婚の記事だった。男が国会議員だから記事になったのか、女がグラビアアイドルだから記事になったのか定かではないが、独身の自分には興味をそそる記事だったのでちょっとぱらぱらとめくってみる。
 二人が出会ったのは政府広報の仕事でグラビアアイドルが国会を訪れたときで、そのとき一緒に写真を撮ったりインタビューに答えたりして顔見知りになった。その後、知人主催のパーティで二人は偶然再会する。その後、何度か一緒に食事などをしているうちに交際に発展したという流れだそうだ。
 結局、表紙を飾った割にはよくある話だなと感じたが、この情報を掴んだのは文化収集だけなので雑誌の売り上げには貢献したのだろう。こういった話はいったいどこから掴むんだろうか。
 お茶を買ってレジに行くと、レジ横のスポーツ新聞にはちらりと

”民自党に潜む火種”

というタイトルの記事が見えた。これもよくある茶番劇かと買うには及ばずコンビニを出た。
 駅につくと次の電車まで20分あった。この電車に乗って目的地につけば丁度3時ぐらいという計算だった。

-由香の高校の最寄り駅

「由香。お兄さん本当に来るの」
「来るよ。約束したから」
由香は俺とカラオケに行くということで学校の友達を誘っていた。
「ほらきたきた」
「お兄ちゃんおそーい」
由香が手を振りながら駆け寄って来る。遅いも何も時間を指定せず約束したのは由香の方だろう。こうして待ち合わせできたのは、兄妹ゆえの以心伝心だろうか。
「はじめまして、由香の友達の田沢啓子といいます。啓子でいいです。」
「ああ、はじめまして啓子さん。古味良一です」
田沢啓子と名乗った女子高生はおかっぱに眼鏡の生真面目そうな容姿だった。

「じゃあ早速行こうか」
駅前にあるカラオケ屋の方に向かって3人で歩き出す。まあ、女子高生二人とカラオケというのも悪くはないか。少し不謹慎に考え事をしているとすぐにカラオケ屋に着いた。部屋代は奢る予定でいたが今の時間帯高校生は部屋代無料ということだった。
 部屋に入ると普段カラオケによく通っているという二人はどんどん曲を入れる。由香は始めの数曲は洋楽で英文科を目指しているだけあって発音も綺麗だった。啓子と名乗った友達もなかなかうまい。

 そうこうしていると俺が歌っていないのに気付いたのか二人が曲の予約をやめ早く入れろと催促する。
「お兄ちゃん。早く曲入れないと時間もったいないよ」
「わかってるあせるな」
 しかし、何年振りかのカラオケは何を歌っていいか迷わせるに十分だった。あの曲は古いしな。この曲は歌詞が思い出せない。そんなふうに悩んでいると、画面が切り替わり、カラオケの特別番組が流れだす。何人かのミュージシャンがインタービューに答える様子や、曲のCMが流れていく。それでも俺が曲を決めれずに悩んでいるとなんとあのフレーズが流れてきた。

 プレプレプレプレプレ

「!」
俺は耳障りなあの前奏を聞きぎょっとした。

「何この曲」
由香が聞きなれない音に反応すると
「プレミアムフライデー音頭だって」
友達もびっくりする。

「うわっこの人お兄ちゃんじゃない。」
由香が叫ぶと友達も画面を見る。

「プレプレキンキン。プレキンキン」

「今日はプレキン仕事はここまで」

「みんなで帰ろう。寄っていこう」

「何を食おうか遊ぼうか」

「あはははははは」
由香が腹を抱えて笑い転げるとつられて友達も笑い出した。

 俺はあまりのことに青ざめていると無情にも俺や水本の顔のアップがカラオケの画面に流れていく。だっ誰か止めてくれ。体で画面を覆い隠すようにするが、二人の笑いは止まらない。

「すごーい。」
「お兄ちゃん最高」

 俺が水本に無理やり連れられいやいや歌ったという過程を女子高生二人は当然知るはずもない。追い打ちをかけるようにカラオケの端末を操作し、プレミアムフライデー音頭を検索する。

「あっ残念。カラオケで歌えるのは来月からだって」
地獄に仏とはまさにこのことか・・・・

 俺は女子高生二人に醜態をさらしてしまい気落ちする。結局ほとんど歌えないままその日のカラオケは終了した。
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