26 / 94
第1巻 1期目 閉会~臨時国会前日
押し入れにあった政治学
しおりを挟む
さてと久しぶりに帰ってきた実家であるが、自分の部屋はそのままにしてあるということなので荷物を持って自分の部屋のあるところに移動した。途中、由香の部屋があったが、恵が結婚して家を出た時に敷居の襖を取っ払って一つの部屋にしたので合わせて9畳の一番広い部屋となっている。俺の部屋はその奥の洋室で6畳+押し入れとなっている。部屋に入ってみると俺がいた時より整理されているが、中のものはほとんどそのままになっている。
「何か使えるものはないかな・・・」
これからの政治活動に役立ちそうなものをこの部屋の中から探そうと考えた。パソコンラックに載っているパソコンは古すぎてスマホの方がよっぽど性能がいいのでそのまま置物として置いておくことにした。押し入れを開けると大量の漫画が入っている本棚の下の段ボールの中に大学時代に使っていた教科書が入っていた。
俺は経済学部だったので、経済に関する本がほとんどだが、その山の中に政治学概論という本を見つけることができた。政治学の授業は俺の学科では選択科目であったが、出席するだけで良の成績をくれるということで選択した。その講義の内容は政治学の一分野「投票行動論」だった。当時はよく見ていた選挙特番の延長ぐらいのことを期待して受講しようとしたが、実際はほとんど数学(統計学)であったので面食らった。
ぱらぱらと本をめくってみると意味不明の数式がずらりと並んでいる。その中でも一番初めに習いなんとなく覚えているのがダウンズという人が考えた次の式である。
期待効用差=与党の効用の期待値 - 野党の効用の期待値
つまり、与党が野党よりいいことをすれば有権者は与党に投票し、逆ならば野党に投票するという単純な理論である。ただ、これはアメリカやイギリスのような2大政党政治がメインで考えられているので、日本のような多数政党政治の場合、与党が失敗しても、じゃあ次はどの野党に投票するのかということで単純にはいかない。ましてや、俺のような無所属で試しに出てみたら受かってしまったような例を説明するのは困難だろう。
このダウンズのモデルを発展されたものが次のモデルである。
有権者の利得 = 有権者の予測*政党間の効用差 + 有権者の義務感 - 投票にかかる労力
これに自分を当てはめると
試しに投票してみよう = あいつが当選すると何か起きそうだ * 今までの与野党の数々の失敗 + ネット炎上 + 自転車行脚
という感じになるだろうか???
結局、ここでも真面目に勉強しておけばよかったという結論になり、ため息したところで夕飯の準備ができたと母親が呼びに来た。
「おっ敬一さんも来ているのか」
「お兄さんお邪魔してます」
敬一さんは恵の旦那で小暮敬一という。恵と同じ水産加工会社で働いていてこの実家から1kmぐらいしか離れていないところに住んでいる。
「いやーびっくりしましたよ、まさか恵の兄さんが国会議員になるなんて」
「まあ、あと何年できるかわからないですけど」
「せっかくなったんだから頑張ってね兄さん」
恵が励ますようなたしなめる様なことを言っていると母さんが刺身やあら汁を運んできた。親父は既に酒が入っていて、由香もつまみながらテレビを見ていたので、俺も席についてぱくぱく食べ始める。
「お兄ちゃん暫くこっちにいるんだって」
「閉会期間が1カ月あるから1週間ぐらいゆっくりしようかなと」
「1か月かーいいなあ国会議員は学生みたいだな」
敬一さんもそこそこ酒を飲みながら話に入って来る。
「じゃあお兄ちゃん明日カラオケいかない」
「えっだって明日学校だろ」
「だから学校終わってから」
「うーん。わかった」
「じゃあ駅で待ってるね」
最寄りの駅から千葉市の方に何駅か行ったところが由香の高校の最寄駅だ。その駅前にカラオケがあるらしい。
そんな感じで話をしていると電話が鳴りだした。
「あらあら今頃誰かしら」
母さんがエプロンで手を拭きながら電話に出ると、すぐに俺に声をかけた。
「良一。中学の同級生の安富君だって」
「えっ安富?」
そういえば安富は俺が当選した時も電話をしてきたな。ついに俺を捕まえたわけだ。
「古味。国会議員になったんだって?」
そうだと簡単には言わず、だから電話をかけてきたんだろと返す。
「そう言うなよ。まぐれにしても大したもんだと思ってるんだぜ」
元生徒会長の安富は俺の知り合いの中じゃ一番政治家になってもおかしくない奴だった。それが、
試しに投票してみよう = あいつが当選すると何か起きそうだ * 今までの与野党の数々の失敗 + ネット炎上 + 自転車行脚
の理屈で俺に政治家になられて悔しがってるに違いない。
「同窓会開くぜ、来いよ。元生徒会長の権力を見せてやるよ」
「えっ同窓会?」
なんということだ、安富は俺に政治家になられた腹いせに中学の同級生を呼び集めて、昔選ばれたのは俺の方だといきがるつもりらしい。
「ちょっそんな急に言われても。いつやるんだよ」
「今週の日曜日にやる。それまで帰るなよ」
ガチャン
「お兄ちゃん。なんの電話だったの」
由香が聞くのに合わせて、恵も敬一さんもこっちを向く。親父は構わずテレビの方を見ている。
「ん。いやちょっとな。中学のときの同窓会をやるんだって」
「えー」
由香が大きな声で驚く。
それにしてもなんで俺が実家に帰っていることを知っていたんだろ。それ以上のことは考えてもわからない。同窓会なんか出て何を言われるのか、どう返せばいいのか他のことはそっちのけで俺は考え込まざるを得なかった。
「何か使えるものはないかな・・・」
これからの政治活動に役立ちそうなものをこの部屋の中から探そうと考えた。パソコンラックに載っているパソコンは古すぎてスマホの方がよっぽど性能がいいのでそのまま置物として置いておくことにした。押し入れを開けると大量の漫画が入っている本棚の下の段ボールの中に大学時代に使っていた教科書が入っていた。
俺は経済学部だったので、経済に関する本がほとんどだが、その山の中に政治学概論という本を見つけることができた。政治学の授業は俺の学科では選択科目であったが、出席するだけで良の成績をくれるということで選択した。その講義の内容は政治学の一分野「投票行動論」だった。当時はよく見ていた選挙特番の延長ぐらいのことを期待して受講しようとしたが、実際はほとんど数学(統計学)であったので面食らった。
ぱらぱらと本をめくってみると意味不明の数式がずらりと並んでいる。その中でも一番初めに習いなんとなく覚えているのがダウンズという人が考えた次の式である。
期待効用差=与党の効用の期待値 - 野党の効用の期待値
つまり、与党が野党よりいいことをすれば有権者は与党に投票し、逆ならば野党に投票するという単純な理論である。ただ、これはアメリカやイギリスのような2大政党政治がメインで考えられているので、日本のような多数政党政治の場合、与党が失敗しても、じゃあ次はどの野党に投票するのかということで単純にはいかない。ましてや、俺のような無所属で試しに出てみたら受かってしまったような例を説明するのは困難だろう。
このダウンズのモデルを発展されたものが次のモデルである。
有権者の利得 = 有権者の予測*政党間の効用差 + 有権者の義務感 - 投票にかかる労力
これに自分を当てはめると
試しに投票してみよう = あいつが当選すると何か起きそうだ * 今までの与野党の数々の失敗 + ネット炎上 + 自転車行脚
という感じになるだろうか???
結局、ここでも真面目に勉強しておけばよかったという結論になり、ため息したところで夕飯の準備ができたと母親が呼びに来た。
「おっ敬一さんも来ているのか」
「お兄さんお邪魔してます」
敬一さんは恵の旦那で小暮敬一という。恵と同じ水産加工会社で働いていてこの実家から1kmぐらいしか離れていないところに住んでいる。
「いやーびっくりしましたよ、まさか恵の兄さんが国会議員になるなんて」
「まあ、あと何年できるかわからないですけど」
「せっかくなったんだから頑張ってね兄さん」
恵が励ますようなたしなめる様なことを言っていると母さんが刺身やあら汁を運んできた。親父は既に酒が入っていて、由香もつまみながらテレビを見ていたので、俺も席についてぱくぱく食べ始める。
「お兄ちゃん暫くこっちにいるんだって」
「閉会期間が1カ月あるから1週間ぐらいゆっくりしようかなと」
「1か月かーいいなあ国会議員は学生みたいだな」
敬一さんもそこそこ酒を飲みながら話に入って来る。
「じゃあお兄ちゃん明日カラオケいかない」
「えっだって明日学校だろ」
「だから学校終わってから」
「うーん。わかった」
「じゃあ駅で待ってるね」
最寄りの駅から千葉市の方に何駅か行ったところが由香の高校の最寄駅だ。その駅前にカラオケがあるらしい。
そんな感じで話をしていると電話が鳴りだした。
「あらあら今頃誰かしら」
母さんがエプロンで手を拭きながら電話に出ると、すぐに俺に声をかけた。
「良一。中学の同級生の安富君だって」
「えっ安富?」
そういえば安富は俺が当選した時も電話をしてきたな。ついに俺を捕まえたわけだ。
「古味。国会議員になったんだって?」
そうだと簡単には言わず、だから電話をかけてきたんだろと返す。
「そう言うなよ。まぐれにしても大したもんだと思ってるんだぜ」
元生徒会長の安富は俺の知り合いの中じゃ一番政治家になってもおかしくない奴だった。それが、
試しに投票してみよう = あいつが当選すると何か起きそうだ * 今までの与野党の数々の失敗 + ネット炎上 + 自転車行脚
の理屈で俺に政治家になられて悔しがってるに違いない。
「同窓会開くぜ、来いよ。元生徒会長の権力を見せてやるよ」
「えっ同窓会?」
なんということだ、安富は俺に政治家になられた腹いせに中学の同級生を呼び集めて、昔選ばれたのは俺の方だといきがるつもりらしい。
「ちょっそんな急に言われても。いつやるんだよ」
「今週の日曜日にやる。それまで帰るなよ」
ガチャン
「お兄ちゃん。なんの電話だったの」
由香が聞くのに合わせて、恵も敬一さんもこっちを向く。親父は構わずテレビの方を見ている。
「ん。いやちょっとな。中学のときの同窓会をやるんだって」
「えー」
由香が大きな声で驚く。
それにしてもなんで俺が実家に帰っていることを知っていたんだろ。それ以上のことは考えてもわからない。同窓会なんか出て何を言われるのか、どう返せばいいのか他のことはそっちのけで俺は考え込まざるを得なかった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
青春
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる