数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

文字の大きさ
33 / 65
第三章『地下ダンジョンと禁忌の実験』

六話『神に仇なす筆頭悪魔』

しおりを挟む
「え、同胞って・・・悪魔ってこと?」

レヴィの独り言を聞き漏らさず、僕はそれに反応する。
レヴィはその黒い瞳を細め、しゅるると鳴いた。
あ、今のかわいい。

『・・・はい。しかもこの魔力・・・私でもお父様を御守り出来るか・・・』

「へぇーそんなに強い悪魔がいるんだ?」

「貴様は悪魔の知識がないのか?それ以外は奇妙な程に知っている癖に・・・」

「まぁ、滅んでるものに興味のある人ってあんまりいないんじゃないかな」

悪魔っていう存在がいることは知っていた。
大昔・・・この世界が誕生してから、絶滅するまでの間、つまり数億年前までは世界を牛耳っていた存在。
神と相反する存在。

『・・・お父様、お気を付け下さい。魔力が近付いて参ります』

「まぁ、悪魔ならレヴィみたいに優しいよ、きっと」

「貴様は少し、疑いを覚えた方がいいんじゃないのか」

「何言ってるのさ、僕ほど疑り深い人間なん──」

軽口を返そうとした瞬間、訪れた空気の重み。
それは、体を動かせず、指一本動かなくなる程度には重い。
そして、僕の視線の先から、それが歩いて来た。

「『同胞と、旧敵の気配がすると思えば。それを従えているのは、人間か』」

ドス黒い魔力だ。
ドロドロとしている魔力を、完全に操っている。
それを薄くこの空間に延ばし、浸透させている。
・・・この魔力が、この階層の全てか。
この魔力で、全てを作り出しているのか。

『・・・よもや、アナタがダンジョンのコアだとは。ダンジョンのレベルが高いのも頷ける』

「『・・・・・・レヴィアタンか?なるほど、お前ならば多少、人間に従属していても頷ける』」

レヴィとソレが話す。
のっぺりとした顔だ。
真っ黒い人型の影。
その背後には黒く、大きな魔法陣が浮かんでいる。
まるで、羽のような・・・そんな印象を受けた。

「『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・神狐族、か。懐かしい。とても美味かった』」

その視線が一瞬だけつくもに揺れる。
しかし、するりと僕を見つめた。
・・・目は、ない。
しかし、その眼力だけは・・・
分かってしまう。
見られている。
敵視でも、蔑視でも、警戒でもなく。
興味、それだけがあった。

「『レヴィアタン、お前は神族に殺され、虚無へ放られた筈。何故現世に、そしてその人間に従事する』」

『この体をお父様にお作り頂いた。それにたまたま私の魔力の波長が重なり、引き寄せられた。簡単に言えば、転生だ』

その言葉に頷き、さらに距離を詰めてくる。
距離は近付いている筈だが、声の大きさは変わらない。
常に耳元で話されているかのような。
そして、その一言一言に、魔力が込められている。
僕なんかでは太刀打ちできない・・・そんな魔力を。

「『・・・ふむ?・・・ふむふむ』」

目と鼻の先で止まったソレが、僕の顔に触れ、目を覗く。
僕は抵抗せず、それを受け入れた。

「『あの男と同じ気配がする。魔力も似ているようだ・・・』」

『あぁ、だから私が従事している』

「『なるほどな。コレなら・・・私も興味がある』」

顔から首へ、首から肩へ、肩から体へとぺたぺたと触るソレ。
・・・なんだかくすぐったいな。

『あまり触るな。驚いていている』

「『そうだな。もう動いていいぞ』」

ソレが言葉にした瞬間。
僕はとりあえず、レヴィを撫でた。
うん。
安心する。

§

「いやーなんかごめんね?いつもは客なんて来ないからさー?一応ビビらせないと、攻撃されたり家壊されてもやだしー?」

目の前にいる黒い影。
それがくねくねと、頭に手をやりながら、動いている。
ここはさっきの『ホール』とは違う、魔力で出来た鏡面の机がある部屋だ。
椅子は7つ。
その椅子に僕とつくもは座っている。
レヴィは僕の首だ。
さっき下にとぐろを巻いていて、動けないから触らせるのを止められなかったことを悔いているらしい。
・・・別にいいのに。

「いいよ。気持ちはわかるからね」

「やっぱりー?君は彼に似てるしねー!あ、彼の事は聞いちゃダメだよ?・・・ね?レヴィ(笑)?」

『・・・笑うな。お父様、いつか分かる事で御座います。今しばらく辛抱を・・・』

「いや、うん。いいけどね」

気にはなるが、別にそこまででもない。
僕的には今日の夜ご飯にしか興味が無い(最近の夜ご飯はつくもとレヴィが共同で作っている。フールには負けるが中々美味い)。

僕達は色々なことを話した。
最初にここへ来た経緯。
これは割と簡単だった。
単純に、レヴィの魔力に反応して、『最下層コア部屋』までの道が開いてしまったらしい。
レヴィの魔力って言うのは、レヴィが魂に抱えてる魔力で、今はまだこちらに来てから日が浅いから完全には発揮出来ないらしく、僕の魔力が少し(半分)必要らしい。

「ここになんで私が居るかって言うとね・・・」

話はこうだった。
数億年前の神対悪魔の決戦で、レヴィは死に、虚無へ放られたが、この悪魔は何故か地下深くに封印されたらしい。
そしてこの封印をしたのが、ゼウスの父親だという。
・・・ゼウス、最近話さないと思ったら、レヴィにビビってたのかな。
それにしては不自然に気配がないけど・・・

「あ、私の名前はルシファー。神に仇なす筆頭悪魔だよん♪」

意外と高く可愛らしい声でそう言うルシファー。
資料にあったような気がする。
全ての悪魔の頂点。
全ての存在を否定して、全ての神を憎悪する者。
そして、最強の悪魔。

「なるほど、神と相反する魔力が、黒い魔力ってことなのかな?」

「そーそー!アダムちんやるじゃん!」

ぱちぱちと手を叩くルシファー。
なんだかただの影が女の子に見えてきた。
・・・・・・気のせいだ。

「私はつい数百年前に覚醒してさー。起きたらダンジョンコアなんだもんね、びっくり!」

ダンジョンコアになってから数百年の間、ダンジョンは拡張を続けてるらしい。
クリアさせる気ゼロ・・・
生徒たちが新しい層を1つ見つける度に30程度層を増やしているらしい。
・・・なるほど、誰もクリア出来ないわけだ。
しかも、最下層に近付けば近付くほど、湧く魔物たちも強くなる。
時間稼ぎも出来るというのだが、あからさまに逃げ切ろうとしてて笑えない。

「じゃあ、あの柱はなんで作ったのさ」

「あれ、元々私用のやつ。なのに人間ったら、使い方分かっちゃうんだもん。しょうが無いからルール変えて、1回来た階までしか行けないようにしたの。今は別のルート使って外でてるのよ~」

「え、外出てるの?」

「そりゃあね!たまに人間が全然来ない時期があるから、外の空気を吸いに行くんだ~」

確かに、夜ならば誰にも見えない。
と、思ったのだが。

「んっんー?見えないのはアダムちんの魔力が弱いからだよ~?私はとても可愛らしい女の子なんだから!レヴィも本来はそのはずなんだけどね~」

「え・・・?レヴィ女の子だったの?」

『私たちに性別はありません。基本となる形はありますが、ルシファーは特にその基本が強いのです』

「そゆことー。レヴィもすごく可愛いんだけどねー?」

少し見てみたかったが、蛇のイメージが崩れると座れない──と思ったが、そもそもつくもに寄りかかったり乗ったりしてた。

「ねぇレヴィ、構わないなら人型になってみてよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...