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世界最強のゲーマー
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巷で噂の『VR』と言うゲーム。
バーチャルリアリティーの名の通り、現実で動くとゲームも動く。
そんなゲームだ。
世に浸透したVRは、近年の研究により、五感や神経を接続し、ゲームの世界を冒険出来るようになっていた。
リアルと遜色の無いグラフィックに、リアル同様に脳からの信号で動くアバター。
種族は勿論、職業や魔法なども自分で設定でき、レベルアップ、モンスター討伐につれてギルと呼ばれる通貨が貰える。
ギルでガチャを回し、欲しいものを当てる。
約三十億のユーザーが濶歩する中、たった1人だけ『人間=ヒューマン』のままランキングを駆け抜ける者が居た。
たった数週間前は名無しの平凡ユーザー。
しかし、今、この瞬間から、
『世界最強のチャンピオン』となった。
☆☆☆☆
薄暗く、液晶が包む部屋。
壁一面液晶で覆われ、床は配線とコンピューター、ノートパソコンにタブレットで塞がっている。
そんな部屋の真ん中、一際デカイ画面に映っている『ランキング1位』の文字。
「やっと・・・やっとか・・・」
ギアと呼ばれる装着型コントローラーを置き、俺は物思いに耽る。
8歳の頃に出会い、10年間休み無くログインとレベルアップを続けて来た。
レイドボスなど、ギルドバトルも全て1人で制し、ガチャで従魔を何千体と獲得し、武器もフルコンプリートした。
称号もトロフィーも総ナメにし、レベルも異例のカンストを果たした。
ステータスは全てerrorで埋め尽くされ、スキルは固有以外全て獲得。
種族も進化を繰り返し、今では最高位種族の『神人類』に上り詰めた。
そして今、このゲーム最大の迷宮『無限迷宮』の最下層、999999階層をクリアした。
「本当に・・・大変だった・・・株で当ててから働きもせずに運だより・・・友達も恋人も作らず、このゲームに全てを掛けてきた・・・」
ようやく、1位だ・・・
このゲームの何が難しいか。
リアルとの両立とゲーム内での身体能力向上による体の動かし方。
死んだら即ゲームオーバーで、レベルも記録も全て零になる。
一体何人がこのゲームで自殺したか・・・
「ん?なんだ・・・『おめでとう 君は全人類最強の人間になった。裏特典で転生させてあげよう』?ゲームマスターからのメールだな・・・」
突然現れた文字に驚いて、何か裏アイテムかステータスを引き継いでレベルを1に戻してくれるのかと思ったが・・・
☆☆☆★
「へ?」
おかしな声が出た。
突然、画面が輝いたかと思ったら、真っ白な部屋に立っていた。
『おめでとう!君は僕が作ったゲームを全てクリアした!とても嬉しいよ!』
目の前には仮面を付けた少年。
秒毎に色の変わる髪。
ニコニコと笑っているのが分かる目。
声は明るく、そして嬉しそうだった。
『君はね、僕が数千年掛けて作り上げたゲームをたった10年でクリアしたんだ。世界で始めて、人類史上最高難易度の謎もクリアしたし、ほぼ不可能な数の従魔や武器もコンプした。これは凄い事だし、ありえない事なんだ』
だけど、実際クリアしてしまった。
当たり前だ。全てを掛けて、全てを捨ててまで続けたんだ。
『ヒューマンはね、唯一神になれる種族なんだ。だけど、レベルも上がりにくいし、なんの特色もない。だから、世界では君しかヒューマンは居なかった。スキルも、魔法も、身体能力も平均より低いヒューマンだけど、神人類はどの種族の最終形態より強いんだ』
だろうな。
進化が三十段階の種族はヒューマンだけだし、確かにレベルはなかなか上がらなかった。
『さらに、君は課金すらせずにゲーム内で稼いだギルだけでのコンプリートだ。これ以上の人間なんか居ないし、君は恐らく世界で一番強い』
「なぁ、そろそろ本題に入ってくれないか?」
明らかな前座は好きじゃないんでね。
『ごめんごめん、本当に嬉しくってさ。本題はね、君に他の世界で活躍してほしいんだ。そうしたら、君はさらに上位の存在になれる』
「・・・上位の存在・・・?」
気にしなくていいと笑う少年。
・・・まぁ、べつにいいか。
「それが、転生か?」
『そう!君にはこのゲームで使ったキャラクターになってもらう。そして、これから行く世界で好きに生きて欲しいんだ』
それは・・・活躍と言うのか?
『ふふ、わかりやすい顔をしているよ。大丈夫、君が存在するだけで、あらゆるものに影響があるから』
どういう事だ?
俺が存在するだけで?
『さて、そこの魔法陣に乗ってくれるかな?すぐに転生させるからさ』
「あぁ」
数歩横にある魔法陣に乗り、周りを見渡す。
一見何も無いように見える世界。
だからこそ、探究心をくすぐらせる。
『さて、じゃあ行ってらっしゃい』
魔法陣が光りだし、浮遊感を感じた。
あぁ、多分この少年はゲームマスターなんだろう。
だったら、言っとかなきゃな。
「──」
『!?・・・ありがとう・・・またね』
仮面を外して目を擦る少女。
なんだ、すっげえ可愛いじゃねぇか。
☆☆☆☆
『・・・初めてだよ・・・こんな気持ち・・・』
とても当たり前な事、至極普通な言葉。
だけど、今まで誰も掛けてくれなかった言葉。
『・・・・・・ふふっ』
何万年振りに仮面を外した少女。
ほんのり頬を染めて、空を見つめる。
『また、会えるといいな♪』
バーチャルリアリティーの名の通り、現実で動くとゲームも動く。
そんなゲームだ。
世に浸透したVRは、近年の研究により、五感や神経を接続し、ゲームの世界を冒険出来るようになっていた。
リアルと遜色の無いグラフィックに、リアル同様に脳からの信号で動くアバター。
種族は勿論、職業や魔法なども自分で設定でき、レベルアップ、モンスター討伐につれてギルと呼ばれる通貨が貰える。
ギルでガチャを回し、欲しいものを当てる。
約三十億のユーザーが濶歩する中、たった1人だけ『人間=ヒューマン』のままランキングを駆け抜ける者が居た。
たった数週間前は名無しの平凡ユーザー。
しかし、今、この瞬間から、
『世界最強のチャンピオン』となった。
☆☆☆☆
薄暗く、液晶が包む部屋。
壁一面液晶で覆われ、床は配線とコンピューター、ノートパソコンにタブレットで塞がっている。
そんな部屋の真ん中、一際デカイ画面に映っている『ランキング1位』の文字。
「やっと・・・やっとか・・・」
ギアと呼ばれる装着型コントローラーを置き、俺は物思いに耽る。
8歳の頃に出会い、10年間休み無くログインとレベルアップを続けて来た。
レイドボスなど、ギルドバトルも全て1人で制し、ガチャで従魔を何千体と獲得し、武器もフルコンプリートした。
称号もトロフィーも総ナメにし、レベルも異例のカンストを果たした。
ステータスは全てerrorで埋め尽くされ、スキルは固有以外全て獲得。
種族も進化を繰り返し、今では最高位種族の『神人類』に上り詰めた。
そして今、このゲーム最大の迷宮『無限迷宮』の最下層、999999階層をクリアした。
「本当に・・・大変だった・・・株で当ててから働きもせずに運だより・・・友達も恋人も作らず、このゲームに全てを掛けてきた・・・」
ようやく、1位だ・・・
このゲームの何が難しいか。
リアルとの両立とゲーム内での身体能力向上による体の動かし方。
死んだら即ゲームオーバーで、レベルも記録も全て零になる。
一体何人がこのゲームで自殺したか・・・
「ん?なんだ・・・『おめでとう 君は全人類最強の人間になった。裏特典で転生させてあげよう』?ゲームマスターからのメールだな・・・」
突然現れた文字に驚いて、何か裏アイテムかステータスを引き継いでレベルを1に戻してくれるのかと思ったが・・・
☆☆☆★
「へ?」
おかしな声が出た。
突然、画面が輝いたかと思ったら、真っ白な部屋に立っていた。
『おめでとう!君は僕が作ったゲームを全てクリアした!とても嬉しいよ!』
目の前には仮面を付けた少年。
秒毎に色の変わる髪。
ニコニコと笑っているのが分かる目。
声は明るく、そして嬉しそうだった。
『君はね、僕が数千年掛けて作り上げたゲームをたった10年でクリアしたんだ。世界で始めて、人類史上最高難易度の謎もクリアしたし、ほぼ不可能な数の従魔や武器もコンプした。これは凄い事だし、ありえない事なんだ』
だけど、実際クリアしてしまった。
当たり前だ。全てを掛けて、全てを捨ててまで続けたんだ。
『ヒューマンはね、唯一神になれる種族なんだ。だけど、レベルも上がりにくいし、なんの特色もない。だから、世界では君しかヒューマンは居なかった。スキルも、魔法も、身体能力も平均より低いヒューマンだけど、神人類はどの種族の最終形態より強いんだ』
だろうな。
進化が三十段階の種族はヒューマンだけだし、確かにレベルはなかなか上がらなかった。
『さらに、君は課金すらせずにゲーム内で稼いだギルだけでのコンプリートだ。これ以上の人間なんか居ないし、君は恐らく世界で一番強い』
「なぁ、そろそろ本題に入ってくれないか?」
明らかな前座は好きじゃないんでね。
『ごめんごめん、本当に嬉しくってさ。本題はね、君に他の世界で活躍してほしいんだ。そうしたら、君はさらに上位の存在になれる』
「・・・上位の存在・・・?」
気にしなくていいと笑う少年。
・・・まぁ、べつにいいか。
「それが、転生か?」
『そう!君にはこのゲームで使ったキャラクターになってもらう。そして、これから行く世界で好きに生きて欲しいんだ』
それは・・・活躍と言うのか?
『ふふ、わかりやすい顔をしているよ。大丈夫、君が存在するだけで、あらゆるものに影響があるから』
どういう事だ?
俺が存在するだけで?
『さて、そこの魔法陣に乗ってくれるかな?すぐに転生させるからさ』
「あぁ」
数歩横にある魔法陣に乗り、周りを見渡す。
一見何も無いように見える世界。
だからこそ、探究心をくすぐらせる。
『さて、じゃあ行ってらっしゃい』
魔法陣が光りだし、浮遊感を感じた。
あぁ、多分この少年はゲームマスターなんだろう。
だったら、言っとかなきゃな。
「──」
『!?・・・ありがとう・・・またね』
仮面を外して目を擦る少女。
なんだ、すっげえ可愛いじゃねぇか。
☆☆☆☆
『・・・初めてだよ・・・こんな気持ち・・・』
とても当たり前な事、至極普通な言葉。
だけど、今まで誰も掛けてくれなかった言葉。
『・・・・・・ふふっ』
何万年振りに仮面を外した少女。
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