夢のゆめ

飛朔 凛

文字の大きさ
上 下
4 / 12
第一章 夢

第一章 夢(二度目の夢)

しおりを挟む
「ただいまー」

真っ暗な家、電気をつけてまっすぐ自分の部屋へ向かった。

『ピロン♪』

携帯が鳴り、見てみると姫依きいからだった。
『そろそろ家ついた頃かな?明日何時にどこで待ち合わせにするー?』なんて文面が携帯の画面に出される。
なんともタイミングのいいこと、
夢姫ゆめはベットに腰掛けて返信を打つ。
……着替えないと、
そんなことを思いながらもついついいつもの癖でそのまま布団にゴロンと転がってしまった。

「あー、着替えるの面倒……」

枕に顔を埋めて瞼を閉じる。
……あ、だめだ眠い。
そう思った途端、
ぐんっ!と、なにかすごい力で引っ張られて飛び起きた。




部屋に吹くはずのない、生暖かい風。
春だというのに、生暖かい……?
数秒遅れて、ここが あの夢の世界だ ということに気がついた。

……また、あの変な夢を見ているらしい。

夢姫ゆめ?」

なんとなーく聞き覚えのある声に振り返る。
三つ編み……。確か、この人の名前は

「えっと、……ユメア、さん?」

一瞬を置いてユメアは頭をガシガシとかく。

「あー、そのさ、ユメアでいいよ。お前にさん付けされると調子狂う」
「そ、そうなの?えっと、……ユメア」
「うん」

後ろのほうから「うーーん」という声が聞こえた。
この子は……えっと、アリスちゃん。
眠たそうに目を擦ってる。

「おはよーユメア……。あ、夢姫ゆめ早いね!おはよ」
「えっと、お、おはよう?」

ここは夢の世界、と聞いてしまったせいか
現実世界は夜で、自分は今眠っているというのが頭から離れなくて「おはよう」という言葉に少し抵抗があった。

「でも、不思議……起きてる時は皆さんの名前忘れてたのに」
「普通、夢の世界ここと現実世界は別世界だから俺らのこと認識し続けてる方がおかしいぞ」
「そうなの?でも今でも子供の時に見た夢とか覚えてるのあるけど」

その「夢」とはまた違うよ、とあくびをしながらライカが言ってきた。

夢姫ゆめ、最初はなれないかもしれないけど、俺らは仲間だ。敬語はいらないからな」
「あ……う、うん」

私が変な世界に紛れ込んだのではない。
私という存在は前からここに存在していた。
私はなにもかもわからないが、皆から見たら私だけが変わってしまったのだろう。
昨日は突然のことすぎて気づかなかったが、
夢姫ゆめが着ている服は現実世界ではありえない、ファンタジーっぽい服だ。
髪もいつも両サイドで三つ編みにしているのだが
今日はそれをまだほどいていないはずなのに、
ほどいた時にできるウェーブもなく、ストレートな栗色の髪だ。
もちろん、眼鏡もかけてない。

「……あ、えっと、ドールとキーリはまだ寝てるんだね」
「寝坊魔だからな、夢姫ゆめ、お前もだぞ」
「え?」
「現実世界で寝たらこっちが起きる……って感じなんだよね、多分」

はっきりとはわかってないけど、とライカは付け足して言う。

私が寝たのは確か……8時にもなってなかったきがする。
と、言うことはユメアとライカとアリスの現実世界の人はもう寝てるんだ。
寝坊魔とか言われたけど流石にこの時間には普段なら寝ない。

夢姫ゆめ、なにか聞きたいことある?」
「聞きたいこと……。あ、あの昨日の怪物……じゃなくて、夢喰いバク?のこととか」

多分、これからもこの夢を見てしまうのであれば一番先に知っておきたいことである。
しおりを挟む

処理中です...