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第一章 夢
第一章 夢(出来事)
しおりを挟む……時間は過ぎて、放課後。
教科書を鞄に詰め込んでいると姫依が近寄ってきた。
「じゃあ、行こっか。」
学校から夢依の入院している病院までは徒歩で10分ほど。
小腹が空いたね、と途中にあるコンビニで手軽なお菓子を買って歩き出す。
「今日ね、変な夢見たの」
そういえば、と思い出して夢姫は言う。
「んー?どんな夢?」
「えっと……なんか、変な怪物が出てきて」
そこで立ち止まる夢姫
……あれ?あんまり夢の内容覚えてない?
あんなに変な、しっかりした夢だったのに。
「夢姫?」
「あ、…ごめんなんか忘れちゃった」
「そっか」
変な夢だったのなら覚えてる必要ないしねー、と笑いながら姫依はスナック菓子を食べながら言う。
それもそうだ。覚えてる必要はないし、夢なんてすぐ忘れる。
……でも、
『続きは起きたらにしよう』
確かそう言ってた。
金髪の、男の人が。
金髪の……、名前……名前、なんだっけ。
どちらにしてもまたあの変な夢を見るのは嫌だ。
「何階だったっけ?」
「2階」
病院に入り、受付を通り過ぎてエレベーターのボタンを押す。
病院は、あんまり好きじゃない
消毒のにおいで頭が痛くなる。
姉のお見舞いに何度も来てはいるけれどもやっぱりなれない。
エレベーターをおりてナースステーションを横切ると個室がいくつかある。
その中の一部屋のネームプレートには「神咲 夢依」。
扉をノックして入ると夢依は漫画を手にキョトンとした顔をしていた。
「おー!夢姫、姫依ちゃんいらっしゃい!」
「お見舞いきたよー、調子どう?」
「さっき飲んだ薬のせいか超眠い!!!でも今寝たら夜寝れない!!!」
「それは大変だ!!!」
あの、ここ病院ですけど。
馬が合うのか、性格が似てるのか夢依と姫依は会うと大体こんな感じ。
双子である夢依と夢姫の方が似てなさすぎる。
「夢依ちゃん、これ着替え」
「ありがとう夢姫。あー早く愛しのお家に帰りたい」
紙袋から着替えを取り出して備え付けの小さなクローゼットの中に入れる。
夢依はさっきまで持っていた漫画を閉じて ふう、とため息をついた。
「……あ、面白い話してあげるよ。今日体育の授業でバレーだったんだけどね」
と、突然姫依が話し出す。
夢姫ははっとして両手を振り回した。
「わ、わああその話はいいよっ……!!」
「え?なになに?もしかして夢姫が眼鏡してないのと理由があるのかな?」
夢姫は眼鏡をかけている。
それほど目が悪いわけじゃない。
ただ、人と顔を合わせるのがほんの少し苦手だから
眼鏡をかけたら目が泳いでるのがわからないかなー?なんて思ってかけたのが始まりだった。
夢の中の私だって、眼鏡はかけてなかった……
……夢。
あれ?変な夢だったことは覚えてるけど、さっきよりもっと忘れてしまったみたいだ。
出てきた人たちの顔もボヤっとしか出てこない。
「え!夢姫顔面キャッチしたの!!?」
夢依の笑い声にハッとする。
「そ、そこまで笑わなくてもいいじゃん」
「ごめんごめん、それで眼鏡壊れたんだ?」
「……うん、眼鏡買いかえないと」
それからもう少し話をして
ふと時計を見たら6時過ぎ。
「そろそろ帰るね」
「また来るね夢依」
「おう、気をつけてかえるんだぞー!」
外は夕日が外壁の白い病院の建物を赤く染めている。
「夢姫明日暇だったら服見に行かない?」
「いいよ」
明日は土曜日、学校は休み。
これといって予定もなかったので、また後で連絡するということにして姫依と別れた。
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