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第二章 起源
第二章 起源(病院)
しおりを挟むシャワーを浴びて、歯を磨く。
ふと鏡を見ると当たり前のことだが自分の顔がうつっている。
……眼鏡買いにいかないと。
別に不便はない
ただ、あんまり話さない同級生や先生たちと話す時に目が泳ぐから……。
……ん?
「夢の中では、ちゃんと人の目を見れてたきがする……」
鏡の中の自分にそう言ってみる。
……いや、夢は夢だ。
やっぱり他人と目を合わせるのは苦手だ。
バスに乗って、姉のいる病院前で降りる。
土曜の診察はお昼まで、
お年寄りをはじめマスクをしている若い人たちがちらほら受付、待合室場所に座っていた。
その横を通り過ぎ、
エレベーターに乗って2階へ行くとナースステーションにいた看護婦さんが「あっ、」と声をかけてきた。
「神咲さんよね?お姉さんのお見舞?」
「はい」
「昨日の夕方、部屋が変わったから案内するね」
夢依がいたのはひとり部屋。
新しく来た入院患者の病状が良くないらしく相部屋が無理そうだったので
ひとり部屋の人達に移動は可能かと聞いてまわったらしい。
そこで夢依が二つ返事で譲ったとのことだった。
元々、入退院を繰り返す彼女にとって今回の入院
ひとり部屋は初めてだったので相部屋に移動となるとそれはそれは喜んだことだろう。
ここよ、と案内されたのは前にいた部屋の反対側になる
4人部屋、名前の所には「神咲 夢依」の他に「深川 莉子」、「天野 夢翔」と2人の名前が書かれていた。
部屋のドアはなく、カーテンが閉じられている。
そっと部屋に入ると、右奥におばあさん
左手前に男の子、そして右手前に夢依がいた。
いつもなら相部屋となると何かと周りに話しかけている夢依だが、他の2人が寝ているので静かに本を読んでいた。
「夢依ちゃん」
「…!夢姫!どうしたのこんな早くに」
「姫依と遊ぶ約束してるんだけど通り道だから寄ったの」
そっかー!楽しんでこいよ!、といつもより声のボリュームを下げて夢依は言う。
「この部屋ね、私が来る前は2人だけだったみたいなんだよね。莉子さんがとっても親切でさー!」
「そうなんだ、よかったね夢依ちゃん話し相手が出来て」
「ほんとだよー、ひとり部屋の時はもーずっと退屈で干物になりそうだったもん」
干物……。
例えが素晴らしいぞ姉よ、と夢姫は心の中で突っ込む。
「うぅ~ん……」と、眠たそうな目を擦りながら体を起こす向かい側の男の子……夢翔くん。
見た感じ小学校高学年か、中学生なりたてくらいだろうか。
「夢翔くんおはよー」
「んんー……、おねーちゃんふたりいる……」
グリグリと目を擦り終わり、ちゃんとまだ開かない目をなんとか開いて夢依と夢姫を見る。
「こっちは妹の夢姫だよー」と夢依が言うと彼はニコッと笑って「はじめまして」と声をかけてきてくれた。
「あまの、ゆうとだよ!」
「夢姫だよ、よろしくね夢翔くん」
彼のベットに近づいて、自分より小さな手を握って握手をした。
布団のめくれた所から見えた包帯とギブス。
……彼は骨折で入院してるのだろう、壁には松葉杖が立てかけてあった。
「……あ、そろそろ行くね」
「うん、今度は莉子さん起きてる時においでよ」
「そうだね」
夢依と夢翔くんにバイバイをして、夢姫は病院をあとにした。
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