足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

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参加の報告と……

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 林間学校直前、形成外科へリハビリに行き、真香まどかとのカウンセリングもしている詩奈しいな

「林間学校、いいですね~! 『青春』って感じで!」

 詩奈しいなの浮かれ調子に合わせて、心ときめかすように言った真香まどか

「そうなんです! 仲良しの4人グループで行動出来て、部屋も大部屋から特別に、女友達と一緒の個室にしてもらったんです!」

「林間学校で、キャンプじゃないだけでも、すごくラッキーなのに、個室なんて、優遇されてますね! その4人グループって、例の詩奈しいなさんの好きな男子も一緒ですか?」

 詩奈しいなの表情から、そうに違いないと睨んだ真香まどか

「一緒です! だからもう、楽しみで! 最初は、お母さんが、反対していたけど、私は絶対に行くって決めていたのです!」

詩奈しいなさんは、1度決めたら譲らなさそうな性格ですよね。心配だけど、お母さんも、折れるより仕方なかったのかも」
 
「まだ足が、こんなだから、気を付けた方がいい事とか有りますか? 母は、肝試しは参加しない方がいいって言うんですが……私、そういうの好きだから、参加したいんです」

「肝試しですか……楽しそうですけど、やっぱり暗いから足元がよく分からないのが不安ですよね。まだ暗くなりきらない早い時間にしてもらったり、脅かし役の先生にも、その旨を伝えて、あまり派手に脅かさないようにしてもらうとかでしょうか」

 直接反対はしない真香まどかだったが、賛成も出来ないような話しぶりだった。

飯盒炊爨はんごうすいさんの時は、片手で出来る簡単な事をさせてもらうといいわね。入浴時間は混んでいる時を避けて、お風呂場は、滑るから危ないし。決まった時間に入って出るのは、詩奈しいなさんの場合、着替えに時間もかかるから、難しいと思うわ。出来れば、仲良しの女子と2人だけの時間を設けてもらえるように、先生にお願いした方がいいですね」

 杖を使用している状態で、学校の宿泊イベントに参加した前例が、真香まどかの担当した患者には無く、思い付く範囲でしかアドバイス出来なかった。

一方、真香まどかに言われるまで、飯盒炊爨はんごうすいさんや入浴時の件も考えてなかった詩奈しいなは、林間学校前に、真香まどかに相談して正解だったと痛感した。

飯盒炊爨はんごうすいさん、確かに、私に出来る事ほとんど無さそうで、グループの人達にまた迷惑かけてしまう。お風呂も、慌てて滑ったら、ここまで回復したのがまた1からやり直しになったら辛いし。私、本当は参加しない方がいいのかも知れない……」

 真香まどかに、アドバイスされているうちに、自分がグループのメンバーに色々と負担をかけまくり、他の生徒がスムーズに体験しているイベントも、詩奈しいなのせいで出来なくなる可能性も有る事を危惧した。

「でも、もう決めたのでしょう? お友達も、詩奈しいなさんがそういう状態でも、一緒に行くように勧めていたなら、大丈夫です! 行って、楽しい思い出作って、またリハビリに来た時に、報告して下さい!」

 詩奈しいなの気持ちを揺るがせたのを後悔し、慌てて参加する事を勧めて来た真香まどか

「私、この足が治ったら、今いる友達と、もう一緒にいられないような気がするんです。だから、今、足はこんなだけど、心が幸せな状態のうちに、学校のイベントに参加して、友達と楽しい思い出を出来るだけ沢山作りたいんです!」

 詩奈しいなが、少し陰りの有る笑顔を浮かべた。

「骨折が治ったら、お友達関係を解消するような不安定な繋がりなんですか?」

 意外そうな真香まどか

「それは……多分。足が治っていない今だって、学校が休みの日には、私の好きな男子と、仲良しの女子がデートしているので……」

 真香まどかに、先日見かけた2人の様子を思い出しながら伝えた詩奈しいな

詩奈しいなさんから、お2人は幼馴染みって聞いていましたが、交際していたんですか?」

「分からないんです。その女友達が、お揃いのバッグを買ったって嬉しそうに報告してきました。それなのに、私や、もう1人の男子とも、お揃いでも良かったような事まで言うし……」

 あっけらかんと言った若葉を思い出した。

「それは、詩奈しいなさんやもう1人の男子の事も、その女友達は好きだから、仲間意識が強いのかな? なんか、憎めない感じの人ですね」

「そうなんです。私、その女友達とは、最近仲良くなったばかりですけど、とても優しくて、大好きなんです! 今まで、友達と思っていた女子達とは、もっと長く過ごして来たけど、私が、この足になって、男子達との件で、簡単に私に背を向けたのに、その女友達は、私の為に色々面倒な事も全部引き受けてくれて……本当に大好きで、だから、大好きな人同士が付き合っているなら、私は祝福してあげるべきなのに……苦しくて、見ていられなくて、とっさに隠れてしまったくらい……」

 数日前の出来事を思い出し、涙が滲んできた詩奈しいな

「そうですか、そういう事が有ったんですね。確かに、自分が好きな男女同士だとしても、付き合っているのを知ると辛いですよね。私も、学生時代、そういう経験が有りますよ」

 遠い過去を思い出し、溜め息混じりで話した真香まどか

真香まどかさんにも、そういう経験有ったんですか? 真香まどかさんは、その後、どうしたんですか?」

「どうしたも何も……私の事など、全く眼中に無かった様子だから、潔く諦めて、祝福してあげたわ! そんな私の気持ちを踏みにじるかのように、数年後には2人は別れていたけど。だから、あの時、諦めたりしないで思い続けていたら、実っていた可能性も有ったのでは? なんて後悔したけど、その時、私には、違う彼氏いたから無理だったわ!」

 いつになく、言葉がラフになり、笑い話をしているような真香まどか

「そうだったんですか。私は、友達と付き合っているかもと思っても、やっぱり諦められなくて、多分ずっと思い続けそうです」

詩奈しいなさんらしいわね。私は、後悔の経験が有るから、一途なのは大歓迎! まだまだ詩奈しいなさんは中1で、青春が始まったばかりなんだから、諦めるなんて選択は考えなくて大丈夫!」

 真香まどかにエールを贈られ、待ち遠しい気持ちで、林間学校の時を迎えようとしていた。

 そして林間学校当日、朝起きて、当日も翌日も晴れ予報と知り、空にも応援されているように感じた詩奈しいな
 早起きして、持ち物の確認をして、いつものように母に車で送ってもらうと、校門の前まで瑞輝みずき達が迎えに来た。

「色々お世話してもらってばかりで申し訳無いけど、詩奈しいなをよろしくお願いします」

「初めまして、有川若葉です! 詩奈しいなの事は、私達に任せて下さい!」

 明るい笑顔でハキハキと挨拶してきた若葉に安心し、頭を下げて見送った母。
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