足枷《あしかせ》無しでも、Stay with me

ゆりえる

文字の大きさ
29 / 45
29.

友情を感じた時間と……

しおりを挟む
「これ直せるかな? 浜口先生に後から聞いてみよう」

 瑞輝みずきは杖を持っていた側に移動し、杖の代わりに瑞輝みずきの左腕に詩奈しいなの重心を傾け歩かせようとした。

「歩き難かったり、反対の足の負荷が強過ぎるようだったらオンブするけど、どっちがいい?」

 歩き慣れているような舗装された道なら、瑞輝みずきの腕に重心をかけて歩ける自信が有ったが、薄暗いでこぼこ道で驚かされた時の事を考えると、辿り着けないかも知れない不安に駆られた詩奈しいな

「この道だし、いつ驚かされるか分からないから、オンブしてもらえると助かる」

「了解!」

 もう慣れた様子で、詩奈しいなを背負った瑞輝みずき

(杖は、また折られてしまったけど、矢本君の背中、これで3回目だ......もう、一生分のシアワセを独り占めした気分!)

 その時、脅し役の教師達に聴こえるように、よく通る大きな声で叫ぶ瑞輝みずき

「ハプニングが起きました! 危ないので、先頭グループを驚かすのは、中止にして下さい!」

 その声が、詩奈しいなにも背中の振動と共に伝わった。

(矢本君、私をオンブしながらも、とっさにそういう判断出来るって、スゴイ! やっぱり、頼もしくて、大好き!)

 カサカサと人の潜んでいる気配が感じられたが、瑞輝みずきの訴えを聞き入れた様子で、誰も驚かそうと飛び出て来る事は無いままゴールに到着出来た。

 ゴール地点には、保健室の女性教員だけが残っていた。

「まあっ、牧田さん、大丈夫ですか?」

「私は大丈夫ですが、杖が折れてしまって……」

「杖が、こんな事になるなんて、困ったわね。これは、もう使えなさそうだし。矢本君、頑張ってくれて助かったわね、お疲れ様」

 凌空りくから折れた杖を預かった女性教員。

 肝試しを続行している次のグループの叫び声が、背後から響いていた。
 瑞輝みずきは、他のグループの生徒達に見られないうちに、詩奈しいなを背中からゆっくりと下ろした。

「小畑達、マジで何考えてるんだ?」

詩奈しいな、ホントに、あの小畑さんって人と友達だったの? どうして、友達に向かって、あんなヒドイ事が出来るの?」

 若葉が、興奮し過ぎて涙目になりながら怒っていた。

「若葉が、そんな怒らなくてもいいのに……」

「だって、おかしいよ! どうして、怪我している友達に対して、こんな困らせるような事をして、嘲笑あざわらっていられるの? 私は、そんな事なんて絶対しないからね、詩奈しいな

 自分の為に、こんなに若葉が激怒してくれているのが、杖を折られた後というにも関わらず嬉しくて、若葉につられて涙があふれて来た詩奈しいな

「うん、ありがとう、若葉」

 遠目で、そんな様子を見ている芽里めりや、他クラスの恵麻えまの姿が有った。
 大多数の生徒が戻った時点で、クラス担任の浜口も引き上げ、詩奈しいなの方へ歩いて来た。

「肝試しの時に、災難だったな、牧田。杖、見せてくれ。う~ん……接続部分が折れただけだから、この施設内に有る道具で、もしかしたら何とかなるかも知れない。取り敢えず、預かるよ」

「浜口先生、よろしくな~! 俺らは、またおかしな女子達が近付かないように、牧田の周りで目を光らせておくから」

 15分くらい経過すると、浜口が集合場所へ、ロフストランド杖を真っ直ぐに直して現れた。

「スゴイ、先生!! もう直ってる!!」

 詩奈しいなを支えていた瑞輝みずきが、浜口の存在にまず気付き、詩奈しいなを浜口がいる方向へと上手くターンさせた。

「実は、関節部分がやられてしまって、もう折り畳みは出来なくなったんだけど、これでも使えるかな?」

「大丈夫です、ありがとうございます!」

 また使えるようになるとは思わなかった詩奈しいなが、元通りにほぼ近い状態の杖に感激しながら、浜口に礼を伝えた。

 こんな事が起こるまで詩奈しいなの入浴は、集団で大浴場のはずだったが、家族用の小浴場を借りられる事になり、詩奈しいなと若葉の2人は、貸し切り状態で息抜きした。

詩奈しいなのおかげで、大勢で煩くて慌ただしいお風呂時間にならなくて良かった~!」

 小浴場とはいえ、2人で使用するには広過ぎるくらいで、ノビノビと使用していた2人。

「私も、少しは若葉の役に立てて良かった! いつも、面倒見てもらってばかりだったから……」

「何言ってるの、水臭いな~。私達、友達じゃん!」

 瑞輝みずきを介して、仲良くしてもらっているだけと思っていた詩奈しいなに、友達という言葉が、暖かく胸に響いた。

 怪我が治った後も、若葉と友達でいられるのか知りたかったが、尋ねるのが恐かった詩奈しいな

「若葉に友達って言ってもらえて、嬉しい! もう、こんな私には、友達が出来ないんじゃないかって、真剣に思っていたから……」

「今まで、色々、辛い事、耐えて来たんだもんね! ホント、頑張っていて、偉いよ~! 詩奈しいなは私の大事な友達だよ、これからもずっと!」

 若葉のその一言が嬉し過ぎて涙が込み上げ、慌てて、シャワーで隠しながら髪の毛を洗い出した詩奈しいな

「若葉、ありがとう、嬉しい!」

 詩奈しいなの言葉に頷きながら、若葉は隣のシャワーで髪の毛を洗い出した。

(ずっと友達……怪我が治っても、っていう事だよね? そう信じていいんだよね?)

 ロフストランド杖は少し形状を変えていたが、その件で、若葉との友情が深まっていくのを感じられた詩奈しいな
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

処理中です...