燃えよ、想いを乗せ

ゆりえる

文字の大きさ
10 / 44
10.

現場研修

しおりを挟む
 雅人から、地球防衛隊の棟内での現場訓練の話を聞いた時は、まだ実感が無かった颯天だったが、自分が漠然としていた予想よりも早くその時が迫って来た。

「雅人、ちょっと見てくれよ、制服とか髪型とかおかしくないか?」

 訓練前に、雅人の部屋を訪れ、自分の外観のチェックをしてもらった颯天。

「髪も制服も大丈夫だけど、そのニヤケ顔だけ、何とかならないか?」

 この日をずっと待ち侘びていた颯天にしてみると、嬉しさが隠しようも無く、つい顔も緩まずにいられなかった。

「顔か……それが、地球防衛隊の棟に行けるっていうのが、マジで嬉し過ぎて、いつもの僕の顔が、どんなだったかよく分からないんだ」

「そこまでとは、なんか心配だな~。俺も一緒に付いて行ってあげたいけど」

 雅人は、既に地球防衛隊の予備隊員のように扱われていた。
 雅人の制服のラインは、颯天達訓練生の若草色のラインと、地球防衛隊員の緑の中間色のような翡翠色だった。
 そのラインの違いも含め、地球防衛隊員に近付きつつある雅人の存在が、今の颯天には眩しく感じられた。

「大丈夫だって、顔はこんなだけど、ヘマはしないから! 雅人がもし、何かしでかして、僕らの所に戻って来ても、暖かく迎えるよ」

「縁起でも無い事言うなよ~。俺は、お前らより一歩先に行って、こうして情報をお前に伝える役目を全うしてやるから!」

 その言葉通り、いつしか雅人が訓練生の寮からいなくなり、地球防衛隊の宿舎へと移動させられるのではないかと気がかりな颯天。

「いや、そのうち、僕が追い付いてやるよ!」

「おうっ、その意気、その意気! 行ってこい、颯天! おっと、その前に忘れてた! ズボン脱げよ」

「えっ……?」

 出がけに突拍子も無い事を雅人から言われ、言葉を失った颯天。

「初日は、多分、身体測定と健康診断だよ。また超sup遺伝子の確認検査も有るかも知れないから、念の為、蒙古斑作りしておかないと!」

「そうだな、よくぞ気付いてくれた、雅人!」

 素直にズボンを脱いでから、尻餅を付いた颯天。
 尾骶骨に出来た見事な青あざを確認してから、ズボンを履いた。

「じゃあ、颯天、健闘を祈るよ!」

「ありがとう、雅人! 行って来るよ!」

 訓練棟へ行く颯天を見送ってから、地球防衛隊の棟へ1人向かった雅人。

 雅人を除く訓練生全員が揃うと、一同は移動用の細長いカートに乗り、数キロ先の地球防衛隊の棟へと向かった。
 初めて地球防衛隊の棟へ足を踏み込む颯天は、その広大かつ高層ビル並みの高さに目を奪われた。

(ここが、ずっと憧れ続けた地球防衛隊の棟か。雅人は実力が違うから、僕らより早く出入りしていたけど……こうして、僕も中に入れる時が来るなんて! 現場訓練とはいえ、感慨深いな~)

 颯天は、満面の笑みを浮かべていると、周囲にいた同期の訓練生達から白い目で見られている事に気付いた。

(何だよ、こいつら~! この状態にいて、感動しないのか? まさか、ここに来られて当然と思っているのか? それとも、ポーカーフェイス軍団なのか? 幕居さんは、雅人の邪推が当たっているみたいで、キョロキョロと大和隊員と思しき男性達を物色しているのが分かりやすい。やっぱり、僕にまでプロポーズしたのは、もののついで感覚だったのだろうな)

 落ち着きなく辺りを見渡しているのは、目的こそ寧子とは違っていたが、颯天も同様だった。

(こんな敷地内を歩いていたら、もしかしたら、偶然、透子さんと逢えるかも知れない! どこで会ってもいいように、気持ちを引き締めないと!)

  荒田と結婚を前提にしているという噂を聞いても、まだ透子の事を諦めきれずに、偶然、出会える事に期待している颯天。

 そんな颯天の望みが叶う時が、初日早々やって来た。

 昼休憩時に隊員専用食堂で、同期達が集まり、各々の選んだ定食を食べていると、雅人が入って来た。
 と同時に、雅人の今日の研修先である荒田隊長率いるAグループの隊員達も、ぞろぞろとレストランに入って来た。
 その中には、颯天の憧れの透子の姿も有った。

(こんな初日から、お目にかかれるなんて奇跡みたいだ! 透子さんは、やっぱり、周りが霞んでしまうくらいにキレイな人だな~!)

 期待し続けていた本人をいざ目の当たりにすると、舞い上がる気持ちと緊張感が同時に颯天を襲った。
 雅人は、Aグループの隊員達と同席するものと思っていたが、予想外にも同席を断り、颯天の横の空いている席にやって来た。

「お疲れ~! 和定食1にしたのか、俺もそれ、注文してくるわ」

 颯天の注文した定食をチラッと見てから、自分もそれに決めた様子の雅人。
 颯天は、念願の地球防衛隊の棟に現場研修で来られたものの、先に研修を進めていた雅人とは、既に距離感が開き、気軽に話せないような懸念も有った。
 が、すんなりと雅人の方から声をかけられ、そんな不安は吹っ飛んだ颯天。

「颯天、どうだった? 生で見た新見さんは?」

 定食を持って戻って来るなり、颯天の腕を肘で突いて来た雅人。

「えっ、どうって? やっぱり、ポスターより実物の方が何倍もキレイだな~って感動した!」

「だろ? 俺も、生で花蓮ちゃん見た時には、感激したよ~。まだ、研修先のグループが違うから、花蓮ちゃんとはあまり話せてないけど」

「あまり話せてないって事は、もう話したのか?」

 颯天にとっては、実物を見た今でも、まだ雲の上の人のような存在の荒田や透子や花蓮。
 その花蓮と研修先のグループが違っているにも関わらず、話す機会が有ったという事が、颯天にとっては信じ難かった。

「まだ一言二言、ほんの挨拶程度だって。同じグループの研修だったら、もう少し話せそうだけど」

「いいな~、僕にも、透子さんと話せる機会が来るかな~?」

 地球防衛隊の現場研修中に、他の隊員はともかく、透子との接近だけを期待している颯天。
 ちょうど視界に入りやすい位置にいる透子の姿を追いながら、空腹を埋められるという至福の時間を過ごしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

大人のためのファンタジア

深水 酉
ファンタジー
第1部 泉原 雪(いずはら ゆき)22歳。会社員。仕事は大変だけれど、充実した毎日を送っていました。だけど、ある日突然、会社をクビになり、ショックのあまりに見知らぬ世界へ送られてしまった。 何でこんなことに?! 元の世界に未練や後悔、思い出や大事なものとか一切合切捨ててきた人を「影付き」と呼ぶのだとか。 私は、未練や後悔の塊なのにどうして送られて来てしまったのだろう? 運命を受け入れられずに、もがいてもがいて行き着いた先は…!? ---------------------------------------------------------- 第2部 記憶を奪われた雪。 目が覚めた場所は森の中。宿屋の主人に保護され、宿屋に住み込みで働くことになった。名前はキアと名付けられる。 湖の中で森の主の大蛇の贄と番になり、日々を過ごす。 記憶が思い出せないことに苛立ちや不安を抱きつつも、周りの人達の優しさに感謝し、自分らしく生きる道を探している。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...