17 / 44
17.
募る不安
しおりを挟む
2日目の現場研修を一通り終えた颯天は、昨日と同じように運動場へ向かった。
前日と同様、颯天以外に運動場へ足を運ぶ訓練生などはいなかった。
(あんな事を聞かされて、不安に感じたのは僕だけなんだ! 幕居さんは、訓練生生活はただの腰かけと割り切っている。その任期が終了する前に、ちゃっかり地球防衛隊員のエリート隊員の誰かと結婚する予定でいるから、あんな脅しのような言葉なんか、耳を通り抜けて頭にまで届いていないんだ! sup遺伝子が覚醒している連中にとっては、あんな話は所詮、ただの人ごとだから、気にも留めてなんていない! 覚醒しないまま4年が経った時には、僕のこの記憶……このビクビク恐れながら過ごすであろう記憶さえも、全て奪われてしまうんだ!)
その事ばかりが頭の中を占領し、トレーニングに専念出来ずにいる颯天。
ランニングも、いつもの半分の速度も出せず、ダラダラ走りになっていた。
「そんなにゆっくり走って、何か悩み事でも有った?」
透子が運動場に着いた時に、そんな調子で走っている颯天を見るに見かねて声をかけた。
(透子さん! また会えた!)
驚いた反動で、足が止まった颯天。
「新見さん……あっ、僕は、もう終わるところだったので、どうぞ、運動場使って下さい」
昨日も、自分が使用していたせいで、透子が運動場を使うのを遠慮して帰ったと思い、申し訳無く感じていた颯天。
「私が運動場でトレーニングしているのを知っていたって事は、もう噂は耳に入ってるのね……」
透子がsup遺伝子未覚醒の事を指していると気付いた颯天。
「はい、同期の矢野川雅人から、昨日聞きました……」
「矢野川君? ああ、あのスーパー新人さんね! 彼は、ここでもかなり注目株よ。そんなレベルの高めな友人がいるって、どんな感じなの?」
その実力差を身近に感じる事で、颯天は複雑な心境にならないかと心配している様子の透子。
「妬ましかったり、反感しか抱けなかったり、色々な気持ちにさせられた時も有ったけど、雅人はやっぱり、僕にとっては唯一無二の大事な親友なんです!」
「そうなの。そういう友情を育めているって、羨ましいわ。私は、いつも1人で孤立している事が多いから……」
大和撫子隊1番の人気者と思っていた透子が、そんな孤独な思いで過ごして来ていたとは信じ難かった颯天。
「新見さんが、孤立しているなんて思えなかったです! いつも、荒田さんがそばにいるのだと思ってました」
「学生時代も、訓練生時代も、私は、いつも1人でトレーニングに長時間打ち込んでいた。ここに来てからは、荒田さんと同じグループだから、公私ともに一緒にいる機会が多かったけど……」
「新見さんの事をちゃんと理解してくれる人と、出逢えて良かったですね」
颯天の傍には、いつも雅人がいてくれていた。
が、透子はずっと孤独を味わい続けていた。
本心では、恋敵である荒田との関係を認めたくはなかった颯天だったが、それだけ長い期間、透子が孤独だった事を知った時点からは、その想いが報われる時が来ても当然と、素直に応援してあげたい心境になっていた。
「……それが、残念ながら、彼は、私の事を本当の意味で理解しようとしてくれてなかった。彼にとって、私との関係は、ただの見栄とか、私への同情とか、そういう気持ちしか無かったという事が分かってしまったの。だから、私は、そこに甘んじる事は出来なかった……」
透子の発した言葉を頭の中で何度も反芻した颯天。
(甘んじる事は出来なかった……? それって、まさか、透子さんと荒田さんは、もう破局しているって事だろうか? ……という事は、もしかしたら、僕にも全く可能性が無いわけでは無いんだ! 雅人の言った通りだ! 一見無理そうに思えるような事でも、諦めないのは、大事なんだ!)
「あの、僕が、こんな事を言うのは、生意気に思われるかも知れないですが……新見さんの良さが分からないような方とは、きっと、御縁が無かったんだと思います!」
透子を励ますように、きっぱりと断言した颯天。
「ありがとう。最初、あなたの方が、何か悩みが有るように思えて、私が尋ねたのに、いつの間にか、私が慰められてしまうなんて……頼りない先輩よね」
颯天を見つめながら微笑んだ透子。
(そんな事を言っている透子さんも、奥ゆかしくて可愛い! こんな可愛い人を手放すなんて、荒田さんはすごく愚かだ!)
「新見さんが頼り無いなんて、そんな事無いです! 実際、僕は、今日の現場訓練で、悩んでいたのは事実なんです! でも、誰一人、僕のそんな気持ちなんて、僕から言い出さない限り、気付いてもらえないんです。そこに気付いて下さっただけでも、新見さんは、すごく気配り上手で素敵な人だなって思います!」
「そんな風に褒められても、私にはあまり参考になるような助言が出来ないかも知れないけど……同じ立ち位置にいる者として、何か相談に乗れる事が有るかも知れないから、良かったら話してみて」
同じsup遺伝子未覚醒者同士であるからこそ、自分の悩んで来た姿を重ね、颯天の悩みを少しでも解消させてあげられたらと願う透子。
同期の中では、自分だけしか深刻に受け止めた者はいなさそうに見えた研修中の出来事だったが、同じ悩みを持ち続けている透子には、分かってもらえそうな気がしてきた颯天。
前日と同様、颯天以外に運動場へ足を運ぶ訓練生などはいなかった。
(あんな事を聞かされて、不安に感じたのは僕だけなんだ! 幕居さんは、訓練生生活はただの腰かけと割り切っている。その任期が終了する前に、ちゃっかり地球防衛隊員のエリート隊員の誰かと結婚する予定でいるから、あんな脅しのような言葉なんか、耳を通り抜けて頭にまで届いていないんだ! sup遺伝子が覚醒している連中にとっては、あんな話は所詮、ただの人ごとだから、気にも留めてなんていない! 覚醒しないまま4年が経った時には、僕のこの記憶……このビクビク恐れながら過ごすであろう記憶さえも、全て奪われてしまうんだ!)
その事ばかりが頭の中を占領し、トレーニングに専念出来ずにいる颯天。
ランニングも、いつもの半分の速度も出せず、ダラダラ走りになっていた。
「そんなにゆっくり走って、何か悩み事でも有った?」
透子が運動場に着いた時に、そんな調子で走っている颯天を見るに見かねて声をかけた。
(透子さん! また会えた!)
驚いた反動で、足が止まった颯天。
「新見さん……あっ、僕は、もう終わるところだったので、どうぞ、運動場使って下さい」
昨日も、自分が使用していたせいで、透子が運動場を使うのを遠慮して帰ったと思い、申し訳無く感じていた颯天。
「私が運動場でトレーニングしているのを知っていたって事は、もう噂は耳に入ってるのね……」
透子がsup遺伝子未覚醒の事を指していると気付いた颯天。
「はい、同期の矢野川雅人から、昨日聞きました……」
「矢野川君? ああ、あのスーパー新人さんね! 彼は、ここでもかなり注目株よ。そんなレベルの高めな友人がいるって、どんな感じなの?」
その実力差を身近に感じる事で、颯天は複雑な心境にならないかと心配している様子の透子。
「妬ましかったり、反感しか抱けなかったり、色々な気持ちにさせられた時も有ったけど、雅人はやっぱり、僕にとっては唯一無二の大事な親友なんです!」
「そうなの。そういう友情を育めているって、羨ましいわ。私は、いつも1人で孤立している事が多いから……」
大和撫子隊1番の人気者と思っていた透子が、そんな孤独な思いで過ごして来ていたとは信じ難かった颯天。
「新見さんが、孤立しているなんて思えなかったです! いつも、荒田さんがそばにいるのだと思ってました」
「学生時代も、訓練生時代も、私は、いつも1人でトレーニングに長時間打ち込んでいた。ここに来てからは、荒田さんと同じグループだから、公私ともに一緒にいる機会が多かったけど……」
「新見さんの事をちゃんと理解してくれる人と、出逢えて良かったですね」
颯天の傍には、いつも雅人がいてくれていた。
が、透子はずっと孤独を味わい続けていた。
本心では、恋敵である荒田との関係を認めたくはなかった颯天だったが、それだけ長い期間、透子が孤独だった事を知った時点からは、その想いが報われる時が来ても当然と、素直に応援してあげたい心境になっていた。
「……それが、残念ながら、彼は、私の事を本当の意味で理解しようとしてくれてなかった。彼にとって、私との関係は、ただの見栄とか、私への同情とか、そういう気持ちしか無かったという事が分かってしまったの。だから、私は、そこに甘んじる事は出来なかった……」
透子の発した言葉を頭の中で何度も反芻した颯天。
(甘んじる事は出来なかった……? それって、まさか、透子さんと荒田さんは、もう破局しているって事だろうか? ……という事は、もしかしたら、僕にも全く可能性が無いわけでは無いんだ! 雅人の言った通りだ! 一見無理そうに思えるような事でも、諦めないのは、大事なんだ!)
「あの、僕が、こんな事を言うのは、生意気に思われるかも知れないですが……新見さんの良さが分からないような方とは、きっと、御縁が無かったんだと思います!」
透子を励ますように、きっぱりと断言した颯天。
「ありがとう。最初、あなたの方が、何か悩みが有るように思えて、私が尋ねたのに、いつの間にか、私が慰められてしまうなんて……頼りない先輩よね」
颯天を見つめながら微笑んだ透子。
(そんな事を言っている透子さんも、奥ゆかしくて可愛い! こんな可愛い人を手放すなんて、荒田さんはすごく愚かだ!)
「新見さんが頼り無いなんて、そんな事無いです! 実際、僕は、今日の現場訓練で、悩んでいたのは事実なんです! でも、誰一人、僕のそんな気持ちなんて、僕から言い出さない限り、気付いてもらえないんです。そこに気付いて下さっただけでも、新見さんは、すごく気配り上手で素敵な人だなって思います!」
「そんな風に褒められても、私にはあまり参考になるような助言が出来ないかも知れないけど……同じ立ち位置にいる者として、何か相談に乗れる事が有るかも知れないから、良かったら話してみて」
同じsup遺伝子未覚醒者同士であるからこそ、自分の悩んで来た姿を重ね、颯天の悩みを少しでも解消させてあげられたらと願う透子。
同期の中では、自分だけしか深刻に受け止めた者はいなさそうに見えた研修中の出来事だったが、同じ悩みを持ち続けている透子には、分かってもらえそうな気がしてきた颯天。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
大人のためのファンタジア
深水 酉
ファンタジー
第1部
泉原 雪(いずはら ゆき)22歳。会社員。仕事は大変だけれど、充実した毎日を送っていました。だけど、ある日突然、会社をクビになり、ショックのあまりに見知らぬ世界へ送られてしまった。
何でこんなことに?!
元の世界に未練や後悔、思い出や大事なものとか一切合切捨ててきた人を「影付き」と呼ぶのだとか。
私は、未練や後悔の塊なのにどうして送られて来てしまったのだろう?
運命を受け入れられずに、もがいてもがいて行き着いた先は…!?
----------------------------------------------------------
第2部
記憶を奪われた雪。
目が覚めた場所は森の中。宿屋の主人に保護され、宿屋に住み込みで働くことになった。名前はキアと名付けられる。
湖の中で森の主の大蛇の贄と番になり、日々を過ごす。
記憶が思い出せないことに苛立ちや不安を抱きつつも、周りの人達の優しさに感謝し、自分らしく生きる道を探している。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる