燃えよ、想いを乗せ

ゆりえる

文字の大きさ
29 / 44
29.

緊急時のサイレン

しおりを挟む
 実践に役立つとは到底思えないような古典の授業で、自身の名前の由来を発言させられた事により、同期の仲間達から嘲笑を受け、やるせない気持ちにさせられた颯天はやて

(どうせ僕は、名前負け以外の何ものでもないって事くらい、自分でも百も承知している! それなのに、どうして、自分は、こんな大それた名前なんかを選んで、親に名付けさせたのだろう? それに見合った能力なんて、どんなにずっと努力しても持ち合わせられないし、努力が実る事すら体験してないというのに……)

 自身と違い、各自が選んで来たという名前に添った道をしっかりと歩んでいるようなクラスメイト達が、羨ましく思える颯天。
 
(芹田先生も、芹田先生だよ! わざわざ優秀な生徒達の引き合い用に、僕なんかを指名しなくたって良かったのに!)

 芹田自身の名前については、発言したくてウズウズしていた千加子をなおざりにして、延々と語っていた事なども思い出され、に落ちなかった。
 
(芹田先生だって、僕に負けじと劣らないくらいに、名前負けのように思えてならないけど! 芹田先生は、その事については、どう感じているのだろう? ずっと、コンプレックスに感じられていたのかな? それなのに、敢えて自分の名前まで出したという事は……中には、芹田先生や僕みたいに、選んだ名前を間違えたような人材もいる事を証明したかったとか? その為に、そのタイミングで、僕まで指名して説得しようとしたなら、分からないでもないけど……それにしても、なんだか悔しさが残る!)

 その時だった!

 教室内に、聞き覚えの無い音色のサイレンが耳をつんざくように響き渡った!

(何だろう? 時報的なものとは、全く思えないし……)

 颯天はまだ暢気に構えていると、芹田が突如、顔色を変えた。

「緊急時のサイレンだ!」

(緊急時……? こんな血相を変えた芹田先生は、初めて見た! さっさと逃げなくては! って……僕らって、この場から、一体どこへ逃げればいいんだろう?)

 颯天以外の生徒達も、芹田の顔に現れた表情を読み、ざわつき出した。

「私達は、どうすべきですか?」

 そんな時でも、動揺を悟られまいと努めて落ち着いた様子で尋ねた千加子。

(浅谷さんは、こんな緊急時でも平静を装っていられるって、随分と肝が据わっている人だな~! 大和撫子隊には、どんな時でも適正に判断できるような彼女みたいな人こそが、やっぱり必要とされているんだろうな……)

 という言葉に、すっかり心をかき乱されている颯天は、自分と千加子との違いを浮き彫りに感じさせられた。

「一般人なら、これが聴こえると、一刻も早く安全な方へ避難しなくてはならないが、君ら、研修生達は別だ! 実は、今回の緊急時のサイレンは、持って来いのタイミングともいえる! さあ、物じする事無く、わしに付いてこい!」

 芹田は、授業中のノンビリした口調に代わり緊迫感を漂わせながらも、どこか興奮が抑えられないようでもある様子で、生徒達を誘導した。

「芹田先生、一体、何が起こっているのですか?」

 千加子は、同期の女性研修生である寧子を差し置いて、レディファーストと言わんばかりに、芹田のすぐ後に続いた。

「実は、君らには知らされてなかったのだが、昨日から、地球の大気圏内に未確認飛行物体が観測されたいたのだ!」

(未確認飛行物体……? それは、UFO? それとも、ビースト的なエイリアン単体? それで、昨日は雅人が戻らなかったのか……)

 昨夜は、いつものように雅人と、透子の事について語り合いたかったが、いつになっても雅人が戻らなかった事情をやっと理解した颯天。

「未確認飛行物体に乗っているエイリアンは、やはり、私達の敵という事なんですか?」

 自分達に知らされていなかったが、昨夜から、そんな一大事が発生していた事に驚き、疑問を口にせずにいられない千加子。

「現場に向かわない事には、何とも言えんがな……」

 これまで地球にやって来たエイリアン達はビースト系の地球侵略者が多く、今回もそうなる大方の予測は出来ていたが、一応、その場では言葉を濁した芹田。

(現場……? 僕らが向かっているのは、もしかすると、メディアでは聞かされていた事の有る、ビーストを誘導させる装置を揃えている『特殊フィールド』と言われている所だろうか?)

 雅人はじめ、大和隊や大和撫子隊が日頃から従事している事が多い場所である特殊フィールド。
 そこは、颯天にとっては、憧れでありつつ、謎の塊のような場所で、訓練生になるずっと以前から、その状態について興味を抱き続けていた。

 既に、大和隊の隊員となり、熟知しているはずの雅人に尋ねても、特殊フィールドについては、変身と同様にトップシークレット扱いで、無二の親友とはいえ、外に情報を漏らすような事はしなかった。

(やっと、その念願の場所に踏み込めるかも知れない! 一体、そこはどうなっているのだろう? 地球に侵略にやって来たビーストなどは、広大な地球の中で、なぜ、ここを狙って、わざわざやって来るのだろう? 奴らが好むような特殊なフェロモンのような臭いを発しているとか? それとも、ビーストが好むような音域の超音波を発して、おびき寄せているのだろうか?)

 特殊フィールドのしくみについて、想像が止まらず、興奮で脳内が溢れている颯天。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

大人のためのファンタジア

深水 酉
ファンタジー
第1部 泉原 雪(いずはら ゆき)22歳。会社員。仕事は大変だけれど、充実した毎日を送っていました。だけど、ある日突然、会社をクビになり、ショックのあまりに見知らぬ世界へ送られてしまった。 何でこんなことに?! 元の世界に未練や後悔、思い出や大事なものとか一切合切捨ててきた人を「影付き」と呼ぶのだとか。 私は、未練や後悔の塊なのにどうして送られて来てしまったのだろう? 運命を受け入れられずに、もがいてもがいて行き着いた先は…!? ---------------------------------------------------------- 第2部 記憶を奪われた雪。 目が覚めた場所は森の中。宿屋の主人に保護され、宿屋に住み込みで働くことになった。名前はキアと名付けられる。 湖の中で森の主の大蛇の贄と番になり、日々を過ごす。 記憶が思い出せないことに苛立ちや不安を抱きつつも、周りの人達の優しさに感謝し、自分らしく生きる道を探している。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

処理中です...