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特殊フィールドへ
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今まで自分達が居た場所と違う、亜空間へ足を踏み入れた時、ジャンプスーツに身を包んでいるとはいえ、強烈な圧を感じ、両耳の奥が痛くなった。
手足を動かしてみると、重力の違いも感じる颯天。
(こんなに普段とは条件の違う中で、隊員達はエイリアンと戦う事になるのか! 隊員の間で、合図や指令を出したりする時に、ちゃんと声は聴こえるのかな?)
そんな颯天の疑問を察したかのように、芹田が普通のボリュームで語り出した。
「ヘルメットをしていても、まだ耳の圧が強いじゃろうが、聴覚自体には支障が無いから安心せい。このヘルメットには、妨害する音波が生じても隊員間の声を拾えるようレシーバーが内蔵されている。皆、わしの声が聴こえているか?」
研修生達は、一同で頷いた。
「大和隊員の方々は、どちらにいるのですか?」
芹田の話より、雅人の所在を確かめようと、あちこち見回している千加子。
(浅谷さん、いつもの落ち着きはどこにいったのだろう? 雅人の事で頭がいっぱいになっている感じで、ソワソワし過ぎじゃないか。そりゃあ僕だって、隊員として働いている時の透子さんを探したい気持ちは強いけど……)
千加子のように、あからさまに探すような事をすると、透子の方にも迷惑が及びそうで、高鳴る気持ちを抑えた。
「大和撫子隊も含めて、彼らは、各自の持ち場についている。今回の敵は、レベル3と見なされているようだから、全体の7割強の隊員が集まっている事だろう」
「レベル3というのは、敵のレベルとしては中間レベルという事ですか?」
やっと雅人を探すのを中断し、芹田に疑問を返した千加子。
「そうじゃ、対ビーストの戦闘レベルというのは5段階有ってだな、容易く撃退できる場合はレベル1や2で、隊員の半数以下が召喚される事が多いが、今回はやや手こずりそうだからレベルは3だ。ここずっと、レベル4までの敵しか現れていないが、かつては、総勢でかかっても、かなりの隊員達が殉死する事も有ったレベル5という強敵も現れていた事も有ったのじゃよ。今後だって、いつ現れるかは我々に予想つかぬ」
芹田の声は、レベル5の敵が出現した当時の事を回顧していた様子で、今までにないほど暗く沈んでいた。
(芹田先生のように、現場で活躍していたわけではなくても、同年代の隊員の訃報は身に染みるのだろうな。ましてや、前線で活躍中の現役隊員だったら、同僚を亡くすのは、よっぽど堪える事に違いない。もしも、透子さんがそんな風になったら、僕は、どうしていいか分からなくなる! そんな不幸が襲う危険性が有るくらいだったら、透子さんには、大和撫子隊から退いてもらった方が、ずっと安心かも知れない。でも、そんな僕の願望を透子さんに言ったら、軽蔑されそうだけど……)
「隊員達が殉死なんて事も有るんですか? 彼らのような無敵の存在でも?」
殉死について、颯天や千加子のような訓練生達が知り得ている情報の中では、全く明示されていなかった。
「地球防衛隊といえども、決して完全無敵ではない! 我々が束になってかかって、何とか勝ち得たほどの強敵もいたんじゃ! 今後も、それ以上の攻撃力を持つような敵が現れないとは限らないからな! 君達も、大和隊員や大和撫子隊員を志す以上は、最悪の事態も覚悟してもらわないとならない!」
今までにないほどの厳しさを芹田の語気から強く感じ取れた。
「最悪の事態……」
よほど衝撃的だったらしく、その部分だけ、オウム返しした千加子。
「私は、そんなのはイヤです! 私は、大和撫子隊を目指すのは止めます!」
きっぱりと言い切り、早々に特殊フィールドから抜け出そうとする寧子。
そんな寧子を見て、鼻で笑った千加子。
千加子は、透子に対しても容赦ない口調で責めたように、寧子のような腰かけ感覚丸出しの女性を蔑視し、彼女が退こうとしているのは、ちょうど願ったり叶ったりと思っているようだった。
「そうだな、女性に限らず男性諸君でも覚悟が無い者達は、これ以上、奥に踏み込むのは止めた方が良い。他には、躊躇っている者はいないかな?」
訓練生達は、不安を感じているような態度で、お互い顔を見合わせた。
寧子の他に三名の男子訓練生が脱落し、芹田と同じ仕様のジャンプスーツを着ている男性に誘導され、特殊フィールドから早々に出て行った。
「情けないわね~! 今まで一緒に学んだ訓練生の中に、あんなに不純な動機の生徒達が混じっていたなんて!」
溜め息混じりに、芹田に向かって言った千加子だったが、ふと、颯天が残っている事に気付いたようだった。
「あらっ、宇佐田君じゃない! まさか、宇佐田君は、このまま同行するつもりなの? まだsup遺伝子すら覚醒してないというのに? 絶対、危険だから、ここで抜けておいた方が、あなたの為かも知れないわよ!」
「いや、僕は、隊員達の活躍を目にする機会を無駄にしたくない!」
「そんな好奇心だけでいられるのは、今のうちよ! 今は、隊員達が戦っているのを客観的に見る立場だからいいかも知れないけど、これから先は、自分達が当事者になるのかも知れないのだから! そんな意気込みだけ有っても、実力が全くというほど伴わない人間なんて、ここに残っていても無駄でしかないし、私達のような覚醒組とっても迷惑よ!」
(浅谷さんは、僕のような無能者は足を引っ張ると思って、さっさと、この場から消えて欲しいような気持ちでいる。僕が、ここにいるには似つかわしくない事くらい、何も浅谷さんだけじゃなく、僕自身だって、イヤというほど自覚している! だからって、本人の気持ちを無視して、退散させようとするのは……)
侮蔑されっばなしで憤慨した颯天だったが、言い返そうにも、千加子が相手では、何を言っても丸め込まれそうで、自分が優位に立てそうな事は何一つ思い付かなかった。
「黙りなさい! 同期の訓練生を侮る権限など、浅谷君には無いのじゃから!」
厳しい口調で、千加子の言葉を制した芹田。
(芹田先生が庇ってくれるとは……実戦経験が無いのがウィークポイントだけど、思っていたより、芹田先生は、良い人なのかも知れない)
古典の授業は、実戦向きではなく、ひたすら睡魔との戦いが多かったが、こうして、緊急時の対応から、芹田を少しずつ見直す気持ちになれた颯天。
手足を動かしてみると、重力の違いも感じる颯天。
(こんなに普段とは条件の違う中で、隊員達はエイリアンと戦う事になるのか! 隊員の間で、合図や指令を出したりする時に、ちゃんと声は聴こえるのかな?)
そんな颯天の疑問を察したかのように、芹田が普通のボリュームで語り出した。
「ヘルメットをしていても、まだ耳の圧が強いじゃろうが、聴覚自体には支障が無いから安心せい。このヘルメットには、妨害する音波が生じても隊員間の声を拾えるようレシーバーが内蔵されている。皆、わしの声が聴こえているか?」
研修生達は、一同で頷いた。
「大和隊員の方々は、どちらにいるのですか?」
芹田の話より、雅人の所在を確かめようと、あちこち見回している千加子。
(浅谷さん、いつもの落ち着きはどこにいったのだろう? 雅人の事で頭がいっぱいになっている感じで、ソワソワし過ぎじゃないか。そりゃあ僕だって、隊員として働いている時の透子さんを探したい気持ちは強いけど……)
千加子のように、あからさまに探すような事をすると、透子の方にも迷惑が及びそうで、高鳴る気持ちを抑えた。
「大和撫子隊も含めて、彼らは、各自の持ち場についている。今回の敵は、レベル3と見なされているようだから、全体の7割強の隊員が集まっている事だろう」
「レベル3というのは、敵のレベルとしては中間レベルという事ですか?」
やっと雅人を探すのを中断し、芹田に疑問を返した千加子。
「そうじゃ、対ビーストの戦闘レベルというのは5段階有ってだな、容易く撃退できる場合はレベル1や2で、隊員の半数以下が召喚される事が多いが、今回はやや手こずりそうだからレベルは3だ。ここずっと、レベル4までの敵しか現れていないが、かつては、総勢でかかっても、かなりの隊員達が殉死する事も有ったレベル5という強敵も現れていた事も有ったのじゃよ。今後だって、いつ現れるかは我々に予想つかぬ」
芹田の声は、レベル5の敵が出現した当時の事を回顧していた様子で、今までにないほど暗く沈んでいた。
(芹田先生のように、現場で活躍していたわけではなくても、同年代の隊員の訃報は身に染みるのだろうな。ましてや、前線で活躍中の現役隊員だったら、同僚を亡くすのは、よっぽど堪える事に違いない。もしも、透子さんがそんな風になったら、僕は、どうしていいか分からなくなる! そんな不幸が襲う危険性が有るくらいだったら、透子さんには、大和撫子隊から退いてもらった方が、ずっと安心かも知れない。でも、そんな僕の願望を透子さんに言ったら、軽蔑されそうだけど……)
「隊員達が殉死なんて事も有るんですか? 彼らのような無敵の存在でも?」
殉死について、颯天や千加子のような訓練生達が知り得ている情報の中では、全く明示されていなかった。
「地球防衛隊といえども、決して完全無敵ではない! 我々が束になってかかって、何とか勝ち得たほどの強敵もいたんじゃ! 今後も、それ以上の攻撃力を持つような敵が現れないとは限らないからな! 君達も、大和隊員や大和撫子隊員を志す以上は、最悪の事態も覚悟してもらわないとならない!」
今までにないほどの厳しさを芹田の語気から強く感じ取れた。
「最悪の事態……」
よほど衝撃的だったらしく、その部分だけ、オウム返しした千加子。
「私は、そんなのはイヤです! 私は、大和撫子隊を目指すのは止めます!」
きっぱりと言い切り、早々に特殊フィールドから抜け出そうとする寧子。
そんな寧子を見て、鼻で笑った千加子。
千加子は、透子に対しても容赦ない口調で責めたように、寧子のような腰かけ感覚丸出しの女性を蔑視し、彼女が退こうとしているのは、ちょうど願ったり叶ったりと思っているようだった。
「そうだな、女性に限らず男性諸君でも覚悟が無い者達は、これ以上、奥に踏み込むのは止めた方が良い。他には、躊躇っている者はいないかな?」
訓練生達は、不安を感じているような態度で、お互い顔を見合わせた。
寧子の他に三名の男子訓練生が脱落し、芹田と同じ仕様のジャンプスーツを着ている男性に誘導され、特殊フィールドから早々に出て行った。
「情けないわね~! 今まで一緒に学んだ訓練生の中に、あんなに不純な動機の生徒達が混じっていたなんて!」
溜め息混じりに、芹田に向かって言った千加子だったが、ふと、颯天が残っている事に気付いたようだった。
「あらっ、宇佐田君じゃない! まさか、宇佐田君は、このまま同行するつもりなの? まだsup遺伝子すら覚醒してないというのに? 絶対、危険だから、ここで抜けておいた方が、あなたの為かも知れないわよ!」
「いや、僕は、隊員達の活躍を目にする機会を無駄にしたくない!」
「そんな好奇心だけでいられるのは、今のうちよ! 今は、隊員達が戦っているのを客観的に見る立場だからいいかも知れないけど、これから先は、自分達が当事者になるのかも知れないのだから! そんな意気込みだけ有っても、実力が全くというほど伴わない人間なんて、ここに残っていても無駄でしかないし、私達のような覚醒組とっても迷惑よ!」
(浅谷さんは、僕のような無能者は足を引っ張ると思って、さっさと、この場から消えて欲しいような気持ちでいる。僕が、ここにいるには似つかわしくない事くらい、何も浅谷さんだけじゃなく、僕自身だって、イヤというほど自覚している! だからって、本人の気持ちを無視して、退散させようとするのは……)
侮蔑されっばなしで憤慨した颯天だったが、言い返そうにも、千加子が相手では、何を言っても丸め込まれそうで、自分が優位に立てそうな事は何一つ思い付かなかった。
「黙りなさい! 同期の訓練生を侮る権限など、浅谷君には無いのじゃから!」
厳しい口調で、千加子の言葉を制した芹田。
(芹田先生が庇ってくれるとは……実戦経験が無いのがウィークポイントだけど、思っていたより、芹田先生は、良い人なのかも知れない)
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