願わくは、一緒にいたかった

ゆりえる

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3.アヨンサとの日々

願わくは、一緒にいたかった

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 アヨンサは、ホログラムのように密度の感じさせない、透明感の有る存在。

 体重計に乗っても、きっと、数値は示さないだろうな。
 
 僕とアヨンサとの初めての出逢いは、やはり、夏休みの祖母宅だった。
 僕は、その時は幼稚園の年長児。
 僕には年子の弟、惣吾がいた。
 にも関わらず、僕1人だけが夏休み中ずっと、遠く離れた祖母宅に預けられる不安と不満で押し潰されそうになっていた。

 後で知ったが、惣吾は幼少期、身体が弱く、夏休み中に入院し手術を繰り返し、母はずっと惣吾に付き添って病院で過ごしていたらしい。
 祖母は優しいが、当時の僕は、まだ母親に甘えたい盛りで、祖母宅に自分1人預けられた事で、慣れない頃は特に反発的になっていた。

 その日も朝から、祖母の用意した朝食が、母が作るのと、あまりにかけ離れていたのが気に入らず、文句を吐き、朝食を全く口にせず、縁側で寝転がっていた。

 ぼんやりと、入道雲が空高く迫って来ているのを見ているうちに、空から、何か細かな金色の粒子が目を開けられないほど眩しく降りてき出した。
 このような空気を見たのが初めてで、夢の中の世界にいるのかと勘違いし、何度も頬をつねって確かめた。

 痛い......

 夢ではなかった。
 その幻想的な金色のシャワーは、紛れも無く、僕が覚醒している状態のまま見ているものだった。
 自分もその粒子を帯びているうちに、もしかすると、命が奪われてしまうのでは、このまま天国と呼ばれる場所が本当に存在しているとしたら、いつの間にかその世界に引き上げられるかと思えてくるほど、目に映る世界は神々しかった。

 その眩い金色の世界に目が慣れて来ると、僕は今まで見ていた世界とは違うものが鮮明に見え始めた。
 それは、多分、今までも何ら変わりなく存在していたのかも知れないが、僕の目からは視る事が出来ずにいたという事も考えられた。

 目を擦りながら、ベランダから見える情景を何気なく見ていると、祖母が、麦わら帽子を被って、畑仕事をしている事に気付いた。
 さっきまで、そこにはいなかったはずだが、あの金色のシャワーを浴びているうちに、朝食の片付けを終えて、外に出て来たのだろう。
 その祖母の背中には、何か丸みを帯びたフォルムの......そう、『バー〇ーパパの一家』のようなキャラクターが乗っていた。
 祖母のは赤く、祖母の頭くらいまで伸びて、祖母が動くとユラユラと一緒に動いていた。

 可愛い......

 妖怪的な生き物なのだろうか?
 もしかすると、想像を絶するような怖い能力が備わっているのかも知れないが、その形状からは、妙に癒し感が漂っていた。

 祖母だけに付着している生き物なのだろうか?
 僕には......?
 畳から起き上がり、姿見が有る所に移動した。

 パッと見、いつもの自分の姿と変わりなかった。
 角度を変えて、祖母のそれのようにオンブした状態で乗っかっているかも知れないと期待しながら見ると......

『スゴイな~!君には、僕らが見えるの?』

 突如、僕の背中から、頭よりも高くニョキっと姿を現して来た存在がいた。

「うわぁ~っ!ビックリした~!僕にも、やっぱりいたんだ!」

 僕のは、黄色くて、祖母のよりも一回り以上大き目だった。
 でも、見えているのは、普通では無い事のような口ぶり。

『君は黄色だもんね。見ようと試みたら、見えて当然だね』

 黄色......?
 色は何か関係しているのだろうか?

「君は、何者?妖怪なの?」

 『僕は、アヨンサ。妖怪って呼び方はイマイチだな~、僕達は精霊だよ』

 精霊.....?
 霊の種類の1つ。
 だから、見えない人には見えないんだ。

「アヨンサ、面白い名前だね。精霊って、そうやって、背中にくっ付いて、何しているの?」

 ただ、オンブしてもらって楽しんでいるだけの存在ではないはず。
 彼らには彼らの目的が有るのだと、幼な心ながら予測し、それを探りたかった。

『知りたいと思うかも知れないけど、教えるの禁じられているんだ。だから、想像してみて。答えが近かったら、頷いてあげるよ』

 そんな軽いノリで良いのかと、今の自分なら疑問に感じそうだが、その時は、夢中で当ててみようとしていた。

「アヨンサと仲間達は、色んな色が有るよね。僕は黄色で、おばあちゃんは赤。これは、年が違うからなの?」

『ううん』

 アヨンサは首を振った。
 年齢によって、色が変わるものでは無いらしい。

「もしかして、その人の気持ちかな?怒っているとか、笑っているとか」

『少し近付いたかも』

 アヨンサは、僕の答えを楽しんでいる様子。

「もしかして、元気とか、病気とかっていう違いなの?」

『うん、そんな感じ』

 正確には、少し違うような気がするけど、まあ許容範囲内の答えだったらしい。

「僕の黄色って良い色?おばあちゃんの赤はどうなの?」

 どっちかが健康で、どっちかが病気って事だったらどうしようかと思った。
 僕はこの通り、健康体だから、病気だとすると祖母の方だ。
 さっき、僕がわがまま言って傷付けた祖母が、実は不治の病だったらと、今までの自分の言動を反省したい気持ちになった。

『心配しないで、2人とも、とてもエネルギッシュな良い色をしているよ!』

 アヨンサの言葉に心から安堵した。

「だったら、僕とおばあちゃんで、大きさが違うのは、どうして?僕の方が、おばあちゃんより大きいよ」

 言いながら、ハッとなった。
 大きさというのは、もしかして、余命なのかもという予感が生じた。
 
『今、君の心に感じた通りだよ』

 アヨンサ、精霊達というのは、人間の心の内が読める存在なんだ......

「僕の方が、おばあちゃんより長生きするって事?」

『おばあちゃんは、もう、君より随分長く生きているからね』

 おばあちゃんの命も大事だけど、僕には、もっと気がかりな事が有った。
 僕は、今、ここに預けられているけど、こうしている今も、弟の惣吾は、お母さんに可愛がってもらっていて、僕にとって、目の上のたんこぶのような存在だ。
 惣吾のせいで、僕は邪魔者扱いされて、祖母宅に預けられている。
 もしかすると、来年の夏もそうなるかも知れないような事を話していた。
 
 来年は、惣吾の番になってくれたらいいのに!

『君には弟がいるんだね。そして、君がここにいるのは弟のせい......』

 アヨンサが僕の心を読んで、同情するように言った。
 
「アヨンサには、惣吾の事も分かるんだね。ここから離れてる所にいる惣吾の精霊は見る事が出来るの?」

 それか、僕が家に戻った時に、アヨンサが一緒にいてくれて、その精霊がどんなのか判断してくれるとか。
 その時の僕には、漠然とした感覚ではあったが、アヨンサは、ここでしか見られない気がした。

『距離が離れていても、僕らには関係無いんだ。僕らは、君の弟が見えているよ。ただ、君には見せる事が出来ない』

「それじゃあ、僕が家に戻る時に、アヨンサも来てくれる?」

『ごめんね。それも無理なんだ。僕らは、どこでも存在しているけど、君とは......この自然の豊かな中でしか、君と会話する事が出来ない』
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