思いがけず、生き延びて

ゆりえる

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その日はやってきた⑹

思いがけず、生き延びて

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「早苗、聞いた?あと12時間無いってね、私達」

 発信者が私だったとは知らない様子の母。
 母は、今時ガラケーを使っている私以上に、メカ音痴で、携帯もパソコンも所持していなく、テレビやラジオや新聞だけが彼女の情報源だ。

「うん、お母さんはどうしているの?お父さんは、元気?」

「私達は元気だよ。お父さんは、普通に仕事に行ってるよ。どこかで、誰かから、そんな話を聞くかも知れないけど、お父さんの事だから、まず信じないだろうね」

 笑いながら母は言った。
 そんな風に軽く受け流して、もしかして、母も、信じていないのだろうか?

「でも、お父さんが正解かも知れない。残された12時間、不安で過ごすよりも、知らなかったり、信じなかったりで、いつも通り仕事している方が、もしかしたら、ラクなのかも知れない」

 そう答えながら、ふと疑問に感じた。
 周りも、父のような感じだとすると、私がしたのは余計なお世話だった?

「でも、私は、本当にそうなるのか、そうならないのか分からなくても、前もって知っていたいよ。実はね、私にも、聴こえていたんだよ。UFOは見えて無かったけど、頭の中にいきなり声が響いて来たから」

 えっ!
 お母さんにも、聴こえていたの?
 ああ、そうか、私は、お母さんの遺伝が強かったんだ。

「お母さんもだったの?私も、聴こえてビックリしたの。聴こえて来たのは2回でしょう?」

「そう、2日目の声は、もしかしたら24時間の猶予も無くなるかも知れないって。だから、誰かが、その声の事を広めてくれて良かったと思ったよ。私なんかが大声張り上げて叫んでも、気が触れたとしか思われないからね」

 そうだったんだ......

 お母さんにも、宇宙人からのテレパシーは聞こえていた。
 でも、お母さんはTwitterをしてないし、広める手段が思い付かなかった。

 だから、私やpicoさんのように、なるべく大勢に知れ渡るように拡散させる事の出来る人がそうしたのは、間違えじゃなかったのかも知れない。

 良かった、あの時、即座にツイートして広めてもらって。
 そうしてなかったら、私達の命の猶予は24時間じゃなかった。
 親切心から告げた宇宙人がへそ曲げて、もっと削減されていた可能性も有ったのだから。
 
 信じている人達には、この残された時間を大切に使ってほしい!

 今まで、意地になって、仲直り出来なかった人達は、最後くらい仲直りして欲しい。
 絶望ばかりの人生だったと嘆く人達には、思い返してもらいたい。
 絶望となる前の幸せだった時の思い出を。
 志半ばで終わる事になるかも知れないけど、少しでも多くの人達の心に光を差し込んであげたい。
 
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