一時はどうなる事かと

ゆりえる

文字の大きさ
3 / 4
3.

妊娠後期になってから

しおりを挟む
「美帆子、保健所から重要なんて書かれた郵便物来てるよ」

 仕事から帰宅したら夫の聡が、保健所からの封筒を持って来た。

「何だろう~、保健所って?ちゃんと定期健診だって行っているんだけど」

 開けてみると、妊婦優先の『コロロワクチン接種票』だった。
 
「お腹が大きくて動くのも大変な時に、なんでわざわざ、任意のワクチンなんか受けに行かなきゃならないの」

 綿棒やワクチンのお世話にならないように、現役引退以来、ずっと体調管理、栄養管理をしっかりして、免疫力が低下しないよう心掛けていた。

 ワクチン接種者からのシェディング感染もしないように、解雇された後は、ずっと専業主婦していたし、聡以外の人々とは、しっかり距離感を保って行動していた。

 大体、コロロワクチンを打っても打たなくても、あの綿棒は3/50の確率で陽性患者にさせられてしまう擬陽性アイテムだ!

 綿棒のみならず、ワクチン自体にしても、色々疑惑が付きまとっている。
 噂では、金属系の物質とか、謎の物質が混入されているとか......
   看護師時代から、患者に注射を打つのも痛々しくて苦手なくらい先端恐怖症で注射嫌いな私が、わざわざ痛い思いして妊娠後期の身体に注射するつもりなど毛頭も無い。

 モチロン、思ったより退職金を沢山貰えたから、医院長との約束は守って、綿棒の件は他言して無いけど......

 私以外にも、多分、そういう境遇に有って、薄々勘付いている人沢山いるはずなのに、皆、私みたいにお金に釣られてしまった?
 それとも、君子危うきに近付かずって感じになってしまったのかな?

  そんなふうに過去の疑問を色々思い巡らせる事の多い日々を過ごしていたが、予定日より1ヵ月近く早く、私は産気付いてしまった。
 幸い聡の休日で、病院に付き添ってもらえた。

 受付に近付くなり、青い手袋をした女性のキツイ口調。

「診察券と、母子手帳と、健康保険証と、コロロワクチン接種証明書を出して下さい」

「ワクチンは、打ってないです!」

 陣痛で辛い中、キッパリと言い切った。

「えっ、妊婦は強制接種ですよ!」

 妊婦は強制接種?

 そんな事を今さら言われても!

 あの時、重要と書かれた保健所のワクチン接種票の入った封筒をよく読まないで、勝手に早とちりして、既に捨ててしまっていた。
 ああ、あの時、もう少し慎重になって、中を確かめていたら良かったかも知れないけど、綿棒についてもワクチンについても懐疑心の塊の私は、やっぱり無視してたかも......

 その場にいた妊婦や付き添いの人々が、ざわめき、私と聡から離れた。
 受付の女性は、慌てて看護師に連絡している。

「畑田さん」

 防護服を着た看護師に呼ばれ、処置室に入った。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

二年間の花嫁

柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。 公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。 二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。 それでも構わなかった。 たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。 けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。 この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。 彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。 やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。 期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。 ――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。

処理中です...