4 / 4
4.
この期に及んで、まさかの
しおりを挟む
「PCR検査をして頂きます!」
PCR検査......
あの恐怖の綿棒!
看護師時代、あれを患者の鼻の奥までグリグリするのも痛々しくて申し訳無く感じて苦痛だった、アレを!
有無を言わさず、看護師は私の左鼻にあの綿棒をグイグイと置くまで入れてきて、鼻もだが、左眼まで痛くなって、涙目になった。
どうして、私が、こんなロシアンルーレット的な事を、この陣痛が襲って来て、非常に辛い状態の時にさせられなくてはならないのだろう?
これで、もしも、3/50ほどの確率の陽性になりでもしたら......
「陽性です!」
まさか、その確率に、妊婦の私が引っかかるなんて!
こんな健康体そのものなのに!
聡も濃厚接触者として、どう見ても健康体だが必然的にPCR検査をすると、3/50の確率だというのに、2人連続で、まさかの陽性だった!
客観的にどう見ても健康なはずの私達2人は、防護服のスタッフ達の乗る救急車2台で、揃って白十字病院へ救急搬送された。
白十字病院に到着すると、私と聡は、子宮口全開大になるまで、ベッド2つ用意された広い殺風景な部屋に隔離され、窓ガラス越しには、沢山の救急スタッフがいつでも出頭出来るよう防護服姿で待機していた。
私の陣痛をモニターでチェックしていた医師達の1人が、完全防御した姿で現れ、慎重に内診をした時に丁度、子宮口全開大となった。
防護服姿の医師と看護師に見守られながら、初産の私は、少し時間はかかったがスムーズに出産し、元気な産声と共に、無事に玉のような美しい女の子と対面出来た。
玉のような形状のコロロウイルスが流行っている時期に、玉のような美しい女の子が生まれたから、珠子《たまこ》と名付けた。
「今は、健康な赤ちゃんに見えますが、胎内感染していた可能性も有りますので、ご主人と共に3名とも隔離させて頂きます」
胎内感染......って?
そもそも、私、運悪く偽の陽性綿棒に当たっただけで、コロロウイルスに感染したわけでも何でも無くて、極めて健康体だというのに......
病院のスタッフ全員が揃って防護服で接してくる事からして、大袈裟に感じているのだが、ロシアンルーレットの犠牲者に対し、必ずそのように演じる必要に迫られての事だろうか?
自分や聡が陽性で、まさかの生まれたての子まで胎内感染を疑われている状態で、隔離なんて、たいそう仰々しい響きの処遇になってしまった!
こんな事が、よもや、出産を控えた時期から産後の私に振りかかるなんて、夢にも思ってなかった!
こんな愛らしい外見をして生まれて来た無症状の新生児だというのに、生まれながらに珠子は、気の毒にもコロロ感染者かも知れないレッテルを貼られてしまった!
でも、まあ、そのおかげで、隔離とはいっても、ある意味ゆるゆるで、特等室みたいな感じの広い個室に、聡用の簡易ベッドとベビーベッドを用意され、私と聡と赤ちゃんの新生活が始まった!
個室には、ホテルのようにバス、トイレ、洗面台が別空間に有りゆったり使用できて、食事は時間になると暖かくて美味しい物が運ばれ、冷蔵庫にはアルコールは無いが、色んな飲み物が用意され、チェック表で毎日減った分を補充してくれる。
洗濯物も毎日3人分の新しい衣類が用意され、何不自由無く、親子3人水入らずで新生活を始められ、むしろ、幸運なくらいに思われた。
パソコンやテレビも設置されているから、暇な時間も育児情報収集したり動画を見て過ごせ、ゆったりとした気持ちでストレスを感じさせず、窓からの景色が思ったより良く、時間の流れも感じられるのも有り難かった。
幸い珠子の鼻の穴は、あの綿棒には小さ過ぎて、市販品のベビー綿棒で採取しているおかげで、毎回陽性判定から免れる事が出来ている!
ゆったりとした時の流れの中、私と聡が常に揃っている状態で、珠子は、よく眠りよく泣き、健康的に成長していった。
あのロシアンルーレット的な偽の陽性綿棒によって、最悪の出産になるかと懸念していたわりには、親子3人一緒ずっと同室にいられて、上げ膳据え膳で身体が疲れる事無く、ストレスや時間に追われる心配も無く最高の産後生活の始まりになった!
難をひとつだけ言わせてもらうとしたら、監視カメラが有って、トイレとバスルーム以外は、プライバシーが無い事くらい。
まあ、そんな必要などは無いとは思いつつも、万が一、私達の身に何か有った時には、迅速に救出するよう動いてくれると信じている。
元々、私と聡は、そこまでスキンシップ多いわけじゃないから、少しくらい節度を保つ程度で我慢出来ている。
看護師時代から、謎多き人騒がせなコロロウィルスだったけど、私達にとっては、幸運に働いてくれた!
楽観的過ぎるかも知れないけど、これからもきっと私達3人一緒だったら、何でも乗り越えられるはず!
コロロウイルスが蔓延していると言われている時代、見えない敵は、またどこで、どんな形で私達を巻き込んで来るか分からないけど、決して屈する事無く、家族3人で力合わせて、これからもコロロ禍の厳しい世の中をしっかりと強く生き抜こう!
【 完 】
PCR検査......
あの恐怖の綿棒!
看護師時代、あれを患者の鼻の奥までグリグリするのも痛々しくて申し訳無く感じて苦痛だった、アレを!
有無を言わさず、看護師は私の左鼻にあの綿棒をグイグイと置くまで入れてきて、鼻もだが、左眼まで痛くなって、涙目になった。
どうして、私が、こんなロシアンルーレット的な事を、この陣痛が襲って来て、非常に辛い状態の時にさせられなくてはならないのだろう?
これで、もしも、3/50ほどの確率の陽性になりでもしたら......
「陽性です!」
まさか、その確率に、妊婦の私が引っかかるなんて!
こんな健康体そのものなのに!
聡も濃厚接触者として、どう見ても健康体だが必然的にPCR検査をすると、3/50の確率だというのに、2人連続で、まさかの陽性だった!
客観的にどう見ても健康なはずの私達2人は、防護服のスタッフ達の乗る救急車2台で、揃って白十字病院へ救急搬送された。
白十字病院に到着すると、私と聡は、子宮口全開大になるまで、ベッド2つ用意された広い殺風景な部屋に隔離され、窓ガラス越しには、沢山の救急スタッフがいつでも出頭出来るよう防護服姿で待機していた。
私の陣痛をモニターでチェックしていた医師達の1人が、完全防御した姿で現れ、慎重に内診をした時に丁度、子宮口全開大となった。
防護服姿の医師と看護師に見守られながら、初産の私は、少し時間はかかったがスムーズに出産し、元気な産声と共に、無事に玉のような美しい女の子と対面出来た。
玉のような形状のコロロウイルスが流行っている時期に、玉のような美しい女の子が生まれたから、珠子《たまこ》と名付けた。
「今は、健康な赤ちゃんに見えますが、胎内感染していた可能性も有りますので、ご主人と共に3名とも隔離させて頂きます」
胎内感染......って?
そもそも、私、運悪く偽の陽性綿棒に当たっただけで、コロロウイルスに感染したわけでも何でも無くて、極めて健康体だというのに......
病院のスタッフ全員が揃って防護服で接してくる事からして、大袈裟に感じているのだが、ロシアンルーレットの犠牲者に対し、必ずそのように演じる必要に迫られての事だろうか?
自分や聡が陽性で、まさかの生まれたての子まで胎内感染を疑われている状態で、隔離なんて、たいそう仰々しい響きの処遇になってしまった!
こんな事が、よもや、出産を控えた時期から産後の私に振りかかるなんて、夢にも思ってなかった!
こんな愛らしい外見をして生まれて来た無症状の新生児だというのに、生まれながらに珠子は、気の毒にもコロロ感染者かも知れないレッテルを貼られてしまった!
でも、まあ、そのおかげで、隔離とはいっても、ある意味ゆるゆるで、特等室みたいな感じの広い個室に、聡用の簡易ベッドとベビーベッドを用意され、私と聡と赤ちゃんの新生活が始まった!
個室には、ホテルのようにバス、トイレ、洗面台が別空間に有りゆったり使用できて、食事は時間になると暖かくて美味しい物が運ばれ、冷蔵庫にはアルコールは無いが、色んな飲み物が用意され、チェック表で毎日減った分を補充してくれる。
洗濯物も毎日3人分の新しい衣類が用意され、何不自由無く、親子3人水入らずで新生活を始められ、むしろ、幸運なくらいに思われた。
パソコンやテレビも設置されているから、暇な時間も育児情報収集したり動画を見て過ごせ、ゆったりとした気持ちでストレスを感じさせず、窓からの景色が思ったより良く、時間の流れも感じられるのも有り難かった。
幸い珠子の鼻の穴は、あの綿棒には小さ過ぎて、市販品のベビー綿棒で採取しているおかげで、毎回陽性判定から免れる事が出来ている!
ゆったりとした時の流れの中、私と聡が常に揃っている状態で、珠子は、よく眠りよく泣き、健康的に成長していった。
あのロシアンルーレット的な偽の陽性綿棒によって、最悪の出産になるかと懸念していたわりには、親子3人一緒ずっと同室にいられて、上げ膳据え膳で身体が疲れる事無く、ストレスや時間に追われる心配も無く最高の産後生活の始まりになった!
難をひとつだけ言わせてもらうとしたら、監視カメラが有って、トイレとバスルーム以外は、プライバシーが無い事くらい。
まあ、そんな必要などは無いとは思いつつも、万が一、私達の身に何か有った時には、迅速に救出するよう動いてくれると信じている。
元々、私と聡は、そこまでスキンシップ多いわけじゃないから、少しくらい節度を保つ程度で我慢出来ている。
看護師時代から、謎多き人騒がせなコロロウィルスだったけど、私達にとっては、幸運に働いてくれた!
楽観的過ぎるかも知れないけど、これからもきっと私達3人一緒だったら、何でも乗り越えられるはず!
コロロウイルスが蔓延していると言われている時代、見えない敵は、またどこで、どんな形で私達を巻き込んで来るか分からないけど、決して屈する事無く、家族3人で力合わせて、これからもコロロ禍の厳しい世の中をしっかりと強く生き抜こう!
【 完 】
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
包帯妻の素顔は。
サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。
私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?
あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。
理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。
レイアは妹への処罰を伝える。
「あなたも婚約解消しなさい」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる