最初で最後の親孝行

ゆりえる

文字の大きさ
上 下
1 / 5
1.

いつも通りの朝だった

しおりを挟む
 その日の朝も、いつも通りの始まりだった。
 僕、本城 逸《すぐる》と母さんは、普段から口喧嘩が絶えない。
 
「逸、スマホばっか見てないで、早く食べないと!」

「納豆ご飯って、食べ難いんだよ~!こんなの用意するなよ!」

 家にいる時の僕は、食べながらスマホする時間が多く、ついつい食事時間が長引いてしまう。

「逸、早く着替えて学校の用意しないと!」

「分かってるって、うっせーな!」

 僕はもう高校2年生なんだから、いちいち母親にあれこれ言われなくても自分で出来るっていうのに!
 そりゃあ、たまにスマホに夢中になり過ぎて、遅れてしまう時も有るけど......
 
「また今朝も朝早くから、やかましい!」

 そんな僕と母さんのやりとりに挟まれて、父さんは、朝から不機嫌になっている。

「だって、スマホに夢中になって、何度も遅刻しかけているし」

「逸は、もう高校2年生だし、遅刻しても自己責任だから、ほっとけ」

 毎度、父さんが僕に加勢してくれても、母さんは、口出しせずにいられないウザイ性格をしてる。

「ほら、もう8時になるよ!また遅刻するよ!はい、お弁当」

「まだ7時59分だから、大袈裟に言うなよ!」

 はあっ、ホントにウザイ。
 おかげで、父さんもイラついているし。
 何とかなんないか、この母親。

 あっ、『行って来ます』言い忘れた。

 まあ、いいか、そんな日もあるさ。
 なんか今日は、何回も遅刻してた事を父さんにチクられて、いつもよりムカついてたし。

 あんな風に言って、父さんを味方に付けようとしたって、無駄だから!
 父さんは、同じ男同士だから、僕の気持ちをちゃんと分かってくれてる。

 学校から戻ったら戻ったで、今度は、勉強勉強って!
 なんで、いちいち、あんなしつこく言われ続けなきゃなんねーの!
 僕の為とか言って、僕の為なら、僕に任せてくれていいのに!

 ホント、もうウンザリだ!
 どっか、あの小言が聴こえない国に行きたい!
しおりを挟む

処理中です...