終わりの時を貴方と一緒に

ゆりえる

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まさかの両手に花

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インターホンの映像をチェックすると、まさかの福田瑛美だった。

「河西君、開けて!この辺も物騒な事になってるの!」

 寿美香から離れ、ドアを開けると、瑛美が追っ手から逃れる為に、すぐにドアの内側に入り込んだ。
 
「福田さん、大丈夫か?」

「この世のものと思えない大惨事があちこちで起きているわ!」

 そう言って部屋に上がろうとした瑛美の目に、成茂にピッタリと寄り添う寿美香の姿が映った。

「阿部さん、どうして、ここにいるの?」

 「私は、河西さんに告白して、両想いな事が分かって、残りの時間をここで河西さんと過ごす事にしたんです!」

 つい先刻の出来事が、寿美香を強気にさせていた。

「本当なの、河西君?」

「それは......」

 瑛美が来た目的が分からない以上、否定していいのか、肯定していいのか分からず戸惑う成茂。

「私は、生存時間が残り10時間切って、やっと自分の本当の気持ちに気付いたから、河西君の所に来たのに!」

 今まで、学生時代からモテた事など無かった成茂は、今日1日で自分の好きな女性2人からいきなり告白されるという突然のモテ期到来を受け入れ難い気持ちで、呆然と立ち尽くした。

「後の祭りですね、福田さん!河西さんは、私のものですから!」

「よく私を口説いていたのは嘘だったの?」

 職場の2大美女が揃って、自分の家を訪れ、自分を巡って言い争っている。
 こんな夢のような話は、小惑星の衝突が無かったら、有り得なかっただろう。そのきっかけを作ってくれた小惑星に感謝したい気持ちにさえなる成茂。

「俺は、福田さんの事が好きだけど、ここに1番に来てくれた阿部さんの気持ちも嬉しいから、どちらか1人なんて選べない!」

 それは正直な気持ちだった。
 嘘をつき恋人を装うつもりでいた寿美香の事も大切に思っているから、瑛美が来てくれたからといって、今さら、その言葉は嘘だったなどと寿美香を突き放す事など出来ない。

「私達は2人いるのに、河西さんは、どちらか1人を選ぶ事を出来ないなら......」

 瑛美と向き合って、何か合図した後で話し出した寿美香。

「河西君の身体を左右か上下かで、半身ずつ、私達と過ごしてもらうしかないわね」

 外の修羅場を見て来た瑛美が意味深な笑みを浮かべて言った。

「何を物騒な事を考えているんだ、お前達!」

 自分の嘘によって、この状況を招いた事を深く後悔した成茂。

「そんな血生臭い想像しないでよ、河西君!こんな時なんだから、穏便に済ませましょうよ。私は左側でいいわ」

「了解です、私は右側で」

 ソファーの中心に成茂が座り、左側に瑛美、右側に寿美香が座り、成茂に寄り添った。

「最後の瞬間まで、このままでいましょう。津波の勢いで引き離されたら、それまでだけど」

「出来れば、3人でこうして同時に果てたいですね」

 この世の最後の時に、両手に花状態で大往生出来るほど得を積んだ覚えは無いが、願わくば、この幸せが長く続いてくれたらと願わずにいられなかった成茂。
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