上 下
1 / 1

Eraser ミュージカル脚本

しおりを挟む
ミュージカル「Eraser」 
原作・片山行茂
脚本演出・松﨑建ん語
 
◆作詞:片山行茂・近藤美里・松﨑建ん語 
◆作曲:近藤美里・片山行茂 
◆編曲:西村広文
 
【 登 場 人 物 】
 
◆戸田慎一郎(とだ しんいちろう) この物語の主人公
◆戸田真実(とだ まさみ) この物語のヒロイン
◆ピアニスト
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2022 年、秋。
 
*戸田慎一郎・真実夫妻の寝室。 
*舞台中央、前面にベッド。
*ベッドの奥には白い布が掛かっている。 その布には、一枚の絵。 
*舞台には数枚の布が掛けられており、場面が変わる度に一枚ずつ剥がされていく。
 
「Eraser」のテーマ曲が流れる。
 
M1 「Eraser」作曲:調整中
 
 *客席の照明、溶暗。
 *音楽が盛り上がる。 
 *ゆっくりとベッドに明かりが入る。
 *カーテンから漏れる朝陽のような明かり。
 *M1音楽、フェードアウト。
 
 *目覚ましの音。
「ピピピピ ピピピピ ピピピピ」 
 *手探りで目覚まし時計のアラームを止める慎一郎。 
 *慎一郎、ゆっくりと目を開ける。 
 *照明、うっすらと舞台に広がる。
 
M2 「ここはどこ?」♪ 慎一郎  作詞:松﨑建ん語 作曲:近藤美里
 
ここはどこ? 知らない天井 知らない部屋
ここはどこ? 知らない枕 知らないベッド
 
掴みようのない焦りに胸が軋む 歪みようのない部屋が僕を歪ませる
 
ここはどこ?  知らない匂い 知らない空気
ここはどこ? 知らない景色 知らない自分
 
 *M2終わり
 
慎一郎 あれ?ここは・・・・・どこだっけ?
 *真実が寝室に入ってくる。
真実  おはよう
慎一郎 ・・・・・?
真実   ゆっくり寝れた?
慎一郎  誰?
 *真実、哀しく微笑む。
 *カーテンを開ける真実。
 *舞台が明るくなる。
真実  慎ちゃん、今日は良い天気だから散歩しようか?
慎一郎 慎ちゃん・・・・・
 *慎一郎、真実を警戒し、上半身を起こす。
真実   大丈夫、落ち着いて聞いて。
 *真実、慎一郎にゆっくり近づく。
真実  私は、
慎一郎 来るな!
真実  ・・・・・
慎一郎 あんた誰?
真実  私は真実。・・・・・落ち着いて聞いて。
 *再び近寄る
慎一郎 来るな‼俺に近づくな!
真実  分かった。
 *部屋を見渡す慎一郎。
真実 あなたの名前は、戸田慎一郎。
慎一郎 ・・・・・とだしんいちろう
真実  そう。私は、真実。戸田真実。
慎一郎 とだまさみ
真実  あなたの妻よ
慎一郎 ・・・・・ウソだ!俺に・・・・・妻⁈
 
*慎一郎、激しい頭痛を感じる。
 *呻く慎一郎。
真実  慎ちゃん、大丈夫?
 *慎一郎の肩に手を添える真実。
 *真実の手を振り払う慎一郎。
 *慎一郎、呼吸が荒れている。
慎一郎 何だよ!何しようとしてるんだよ‼
真実   慎ちゃん、落ち着いて。ご飯食べて薬飲もう。
慎一郎 誰だよお前!気安く呼ぶな!
真実  ・・・・・ごめんね
 *間
慎一郎 俺に、妻?
真実  ・・・・・
慎一郎 とだしんいちろう・・・・・
真実  お腹・・・空いていませんか?
慎一郎 ・・・・・
真実  ご飯の支度できてるから、落ち着いたらコレに着替えて、一緒に食べましょう。
ご飯食べたら、ちゃんと説明しますから
慎一郎 ここは?
真実  ここはあなたの家です。私たちの家。
 *奥からご飯が炊けた音。
真実  あっ、ご飯が炊けたみたい。気持ちが落ち着いたらで良いですから。 
慎一郎 ・・・・・
真実  洗面所は部屋を出て左の方です。
 *真実、部屋を出て行く。
 *慎一郎、自分の洋服を手に取り、服の匂いを嗅ぐ。
 
M3 「新しい一日」 ♪真実・慎一郎 作詞・作曲・近藤美里
 *真実、別の空間で歌い出す。
 *真実の歌の間、慎一郎は奥に行き着替える。 
 *布を剥がす慎一郎。そこは洗面所。鏡に映る自分を見る。
 
おはよう あなた 今日が始まる
同じ朝 違う朝 ふたりの朝
 
風が吹く 鳥が鳴く 素敵な一日のはじまり
陽がさして 背伸びをする 新しい一日のはじまり
 
 *慎一郎も歌い出す。慎一郎と真実、別の空間で歌う。
 
風が吹く 鳥が鳴く 
真実 素敵な一日のはじまり
(慎一郎 知らない一日のはじまり)
陽がさして 背伸びをする まだ見ぬ一日のはじまり
 
 *M3 終わり。
 *布を剥がす慎一郎。 
 *そこはダイニング。テーブルの上には、朝食が用意されている。 
 *ちょうど、真実がお盆にご飯を乗せて運んでいる。
 
真実  (椅子を引き) どうぞ。
慎一郎 ・・・・・(ゆっくり椅子に腰を掛ける。)
真実  納豆も食べますか?
慎一郎 いや、いらない・・・です。
真実  じゃ、頂きましょう。
 *手を合わせる真実。
 *朝食を見つめたままの慎一郎。
真実  大丈夫。毒なんか入ってませんから。
慎一郎 ・・・・・
真実  私のと交換しますか?
慎一郎 いや、大丈夫・・・です。・・・・・(手を合わせる) 頂きます。
 *一口食べると、お腹が空いていたのか、慎一郎の箸が進む。 
 *勢いよく食べる慎一郎を見る真実。
 
M4 「あなたの好きなもの」 ♪真実 作詞・作曲:近藤美里
 *真実、軽やかな音楽に合わせて朝食の献立を歌う。 
 
あなたの好きなもの 今朝の献立は和食です
焼き鮭はしっかり焼いて ふわふわのだし巻き卵
甘めの金平牛蒡 薄揚げのお味噌汁
小鉢に赤かぶのお漬け物 炊き立てのごはんが きらきらと
 
お味はいかが? おかわりもどうぞ その顔が見たいから
 
あなたのすきなもの 毎日、毎日 願い込めて
あなたが今日も頑張れる様に お腹いっぱい 召しあがれ
 
 *M4終わり。
 
慎一郎 ご馳走様。
真実  ご希望の焼き鮭はどうだった?
慎一郎 ご希望?
真実  (紙を慎一郎に見せる。) ほら、昨日、慎ちゃんが書いたメモ。 
慎一郎 俺が書いた?・・・・・ん?「焼き鮭と書け」これは?
真実  (ペンを渡し)はい。書いてみて、「焼き鮭」。
昨日の慎ちゃんから、自分へのメッセージ。あっ、その前にコレ。薬飲まないと。
 *薬を渡す。慎一郎、受け取るが薬を飲むか躊躇う。 
 *渡されたペンで、「焼き鮭」と書く慎一郎。
*メモに書かれている筆跡と今書いた筆跡を見比べる。
慎一郎 同じだ・・・・・同じ筆跡。
真実  だって慎ちゃんが書いた「焼き鮭」だもん
慎一郎 慎ちゃん・・・・・
 *慎一郎、薬を手に取るが、やはり躊躇する。それを見て、アルバムを持ってくる真実。
慎一郎 アルバム?
真実  うん。
 *慎一郎 (ページをめくり)これは?
真実  去年の夏。
 *ページをめくり続ける慎一郎。
 *鏡を探す慎一郎。それを察して、手鏡を持ってくる真実。
慎一郎 ・・・・・俺だ。
真実   ・・・・・うん
慎一郎 あなたは・・・・・俺の妻?
真実  そう、真実。
慎一郎 ・・・・・真実。
 *左手の薬指にはめられた指輪を慎一郎に見せる真実。
*慎一郎、自分の左手にも同じ指輪がはめられていることに気づく。
慎一郎 夫婦?
真実  そう! 夫婦。私たち、結婚して 3年目の夫婦。
 *慎一郎、何も思い出せない自分に焦りを感じ、立ち上がる。
慎一郎 いやいやいや、ちょっと待って!
真実   慎ちゃん、慌てなくて大丈夫。
慎一郎 何で! どういうこと!
 *慎一郎、頭痛とめまいで倒れこむ。
真実  慎ちゃん!
慎一郎 (混乱する)どういう事だよ?なに?何が起きてるんだよ!
真実  慎ちゃん、薬飲んで。
慎一郎、薬を手渡される。飲んで良いものか躊躇するが、勢いよく水で飲みこむ。
慎一郎 俺は・・・・・誰だ?
真実  ・・・・・
慎一郎 とだ・・・・・しんいちろう・・・・・
 
M5​「おれは誰だ?」 ♫慎一郎・真実 作詞・作曲:片山行茂
 
慎一郎 何故だ? 目が覚めれば どこか分からない見知らぬ部屋
    焦る気持ち 目眩がする お前は俺に何をしたんだ
 
真実  どうか焦らないで ゆっくり説明するから
    ほんの少し そうもう少し 落ち着いて話を聞いて欲しい
 
慎一郎 俺が、慎一郎? そんな名前聞いた事もない
    知らない壁 知らない窓 夢か現実かも分からない
 
真実  此処は2人の家 もう何年も暮らしてるのよ
    カーテンもこのベッドも2人で一緒に選んだもの
 
慎一郎 「嘘だっ!」
    何も分からない 押し寄せる不安
    俺は一体誰なんだ? まるで昨日の事でさえ 思い出せない
 
真実  怖がらないで 大丈夫だから あなたを騙す事なんてしない
慎一郎 君は一体誰なんだ? もう気が狂いそうだ
 
真実  お願い わたしを信じて 少し経てばすぐに落ち着くわ
慎一郎 すまない 取り乱して 怒鳴り付けたりして悪かった
真実  大丈夫 気にしないで あなたは何も悪くないわ
*慎一郎、力なく椅子に腰を落とす
 *間
 
慎一郎 俺は慎一郎、君は僕の奥さんで真実
    そしてもう何年も此処で暮らしてる
    なのに、どうして? 何故、俺は何も覚えてないんだ?
 
 *M5終わり。
 
真実  それは・・・・・イレーザー症候群だから
慎一郎 イレーザー症候群?
真実  うん。
慎一郎 イレーザー。消しゴム・・・・・。
真実  ・・・・・
慎一郎 記憶喪失ってこと?
 
真実  そう
慎一郎 でも・・・・・さっき鮭を食べたことも、写真も、朝起きたときの会話も覚えてる。
真実  短期間の記憶は残るけど、過去の記憶が消えていくの。そういう症状。 
慎一郎 過去の記憶・・・・・俺は戸田慎一郎で、画家で、君の、真実の夫。 
真実  (携帯に保存している動画を見せる)これ、見てみる?
慎一郎 (携帯を受け取り)・・・・・動画?
 
「M1&M5リプライズ」照明変化。 *検討中
 
 *動画を見る慎一郎。
 *そんな慎一郎を見つめる真実。
 *動画を見続ける慎一郎。
 *その間、食器を片付ける真実。
 
 *「M1&M5リプライズ」終わり
 
慎一郎 昨日の自分からのメッセージ動画・・・・・明日の俺へ、か。 
真実  慎ちゃん・・・・・大丈夫?
慎一郎 ・・・・・昨日は雨が降ってたんだね
真実  うん、だからスーパー行って
慎一郎 お好み焼きを一緒に作って、家で映画を見た。
真実  そう。
慎一郎 晴れてたら、アトリエに行きたかったって
真実  うん、昨日の慎ちゃんは、アトリエに行きたがってた。
慎一郎 ・・・・・イレーザー症候群。
真実  今日の慎ちゃんは?
慎一郎 えっ?
真実  アトリエに行きたい?
慎一郎 うん・・・・・
真実  今日は天気良いし、散歩がてらどう?
慎一郎 ・・・・・行ってみようかな。
真実  やった! 絵を描いてる慎ちゃんを見れるかな~ 
慎一郎 ねぇ
真実  ん?
慎一郎 俺、何て呼んでるの?
真実  (理解できず)・・・・・何て呼んでる?
慎一郎 その、君の事。
 
真実  (笑って)あぁ! 真実って呼んでるよ。
慎一郎 真実。
真実  (また笑って)なんか改まって言われると変な感じ。
慎一郎 (微笑んで)そうかな。
真実  もう一回言って。
慎一郎 何を?
真実  私の名前。
慎一郎 やだよ! なんか・・・・・
真実  いいじゃん‼
慎一郎 いつもこういう毎日なの? 自分を知って、過去を知って、名前を聞いて。 
真実  名前を聞かれたのは初めて。だから、もう一回言って!
慎一郎 いいよ~
真実  いいから!
慎一郎 ・・・・・真実。
 
M6 「出逢ってから今日まで」 ♪慎一郎・真実 作詞:片山行茂 作曲:近藤美里
 *軽やかな三拍子の曲。
 *真実が笑い、その笑いにつられて慎一郎も笑う。
 
真実​  付き合い始めた時みたい。
慎一郎​ ・・・・・俺たちの出逢いって
二人​同時 「どんな感じだったの?」
慎一郎 えっ⁈
真実​  それはいつも聞かれる。
慎一郎​ そうなんだ。
真実​  せっかくいい天気だし、散歩しながら話そ。
慎一郎​ うん。
 
 *二人で布を引っ張る。
 *回想シーンは、とてもカラフルに。
 
真実  あの日、学生美術展の会場で2人は出会ったのよ。
慎一郎 へぇ・・・学生美術展・・・
真実  そう、わたしはその中の一つの絵に心奪われて立ち尽くしていたの、
そして慎ちゃんが声を掛けてくれたの。
 *間
【 回想・出逢いの日 】
 
慎一郎 あの・・・どうか・・・しましたか?
 
真実  え・・・あ、ごめんなさい。
慎一郎 どうしました⁈ なぜ、泣いてるんですか?
 
真実  え? あ・・いえ。なんでだろう。
 
慎一郎 これ、僕の書いた絵なんですけど・・・
真実  そうなんですね⁉
「今日の食卓」 戸田慎一郎さん?
これは・・・戸田さんのお家?
 
慎一郎 あ、そうじゃなくて・・・空想というか、理想の家族です。
真実  理想?? 
慎一郎 えぇ・・・僕は、母子家庭だったので。
 
真実  あぁ、ごめんなさい!
でも、なんだか・・・とても心打たれました。
この子供たちのくしゃくしゃの笑顔とか・・・
この壁やテーブルや家族を包む温かな色とか
 
慎一郎 えっ⁈ 本当に⁈ 凄い・・ 嬉しいです‼
真実  わたしも母子家庭だから・・・こんな幸せな食卓、素敵だなぁ
慎一郎 えっ・・・⁈
 
真実  あ、ごめんなさい。・・・失礼します。
 
慎一郎 あ・・・はい・・・(背中にむかって)有難うございました!
 
 *後ろ姿を見送る慎一郎
 *間
【 その次の日 】 
 
 *ふらっとやって来て、昨日と同じ絵の前に立つ真実
 *その姿を見つける慎一郎
慎一郎 あ、あれ⁈
 
真実  あ・・・美術展今日までですよね。また「今日の食卓」が見たくなって。
 
慎一郎 え⁈
うわぁ・・・やばい、鳥肌が‼
真実  あ! 気持ち悪いですよね! 帰ります‼ ごめんなさい‼
慎一郎 いや!そうじゃなくて‼
真実  え?
慎一郎 その何と言うか、感動したって言うか! あ、だから帰らないで!!!!!
 
 *2人、間があって、やがて照れながら笑う
 
 *間
【 また別の日 】
 
 *季節は秋、テーブルに腰掛け本を読む慎一郎、でも時計に目をやり、どこか少し落ち着かない
 *真実、駆け足で入ってくる
 
真実  ごめんなさい! お待たせして‼
慎一郎 あ! 全然! 全然、大丈夫です!
 
真実  何か、本読んでたんですか?
 
慎一郎 あ、坂ノ上 薫の「あの日と同じ月」です。
 *慎一郎、真実に本の表紙を見せる
真実  え⁉ わたしもその作家大好き‼
慎一郎 えー! うそ⁈ そうなんですか⁈ これがね!
 *2人意気投合して楽しそうに話し出す
 
 *間
【 3度目のデート 】 
 
 *季節は冬、少し距離があって、まだまだぎこちない2人、映画館から出てくる
 
真実  なかなか良い映画でしたね
慎一郎 はい・・・なかなか
真実  戸田さんも、泣いてましたもんね???
慎一郎 いやいやいや・・・僕が、泣くわけないですよ・・・
真実  ふふ、気づいてましたよ、ずっと
 *そう言ってハンカチを差し出す
慎一郎 え、いや・・・参ったなぁ
 *真実、少し前を歩き扉を開ける
真実  うわぁ、外寒い!
慎一郎 遅くなっちゃいましたね、駅まで送ります
真実  今日もあっという間でしたね、食事も久しぶりの映画もとっても楽しかったです
慎一郎 はい。あなたといると見慣れたこの街もとても色鮮やかに見えます
真実  え????
慎一郎 あ、いや、あの・・・・・(小声で)好きです
真実  え? え⁈
慎一郎 す、好きです! 僕と付き合ってください‼
 *真実、少し後退りして間を置く・・
*慎一郎、しまったという顔をして背を向ける
*間
真実  はい・・・宜しくお願いします
 *慎一郎、驚きながらも、小さくガッツポーズ
 *真実が差し出した手を繋ぎ、自分のコートのポケットへ
 *少し照れくさそうに2人駅へと進む
 *間
真実  戸田さん・・・
慎一郎 はい
真実  私たち、いつまでも苗字で呼び合うの可笑しいですよね
慎一郎 確かに
真実  慎一郎さん?
慎一郎 んー・・・なんか他人行儀だから・・・
慎ちゃんで!
真実  じゃあ、慎ちゃん。
私は「まさみ」で、お願いします。
慎一郎 え! 呼び捨て⁈
真実  (にっこり頷く)
慎一郎 じゃあ・・・ま、まさみ
真実  慎ちゃん
慎一郎 まさみ
真実  慎ちゃん!
慎一郎 うわぁ、なんだか中々慣れないなぁ
 *2人照れ笑いしながら繰り返す
 
【 楽しい時間 】
 *キャンバスに向かい描く慎一郎、それを笑顔で見つめる真実
*絵筆で空を描くように2人歌い踊る
  ~夢描く二人(別メロ)~ 作詞・作曲:近藤美里
 
 ♪ハミング
真実  これはどこかの砂浜?綺麗な色だね
慎一郎 コバルトブルーの海だよ。いつか君を連れて行きたい場所
慎一郎 白い入道雲の間から太陽が照りつけているんだ
真実  オレンジの帆を立てた白いヨットを浮かべましょう
2人  ロッジを立てて、ヤシの木を植えて、そこにハンモックを吊るそう
 
真実  ロッジの色はジョーンブリアン
慎一郎 屋根の色は?
真実  ネイプルスイエロー!
慎一郎 砂浜に白い犬
真実  そこで戯れるあなたと私を描いて
慎一郎 いいよ
♪ハミング
 
真実  いつか個展とか出来たら良いね
慎一郎 (照れくさそうに頷く)あ、それより俺、無事に就職が決まったんだ!
真実  わ!本当に⁈ それはおめでとう!
 
 *間
【 初めての喧嘩 】 別メロ 作曲:近藤美里
 *真実、カフェのテーブルに腰掛け本を読んでいる、時折時計を見つめ、また本を見返す
 *そこへ、ビジネススーツにカバンを持った慎一郎が急ぎ足で入ってくる
慎一郎 真実! 本当ごめんね!
真実  わ! こんな時間? 本に集中してたから分かんなかったよ
 *わざと時の流れに気づかなかった振り
慎一郎 あぁ
真実  ほら! 坂ノ上 薫の新刊‼
 *真実、嬉しそうに本を見せる
慎一郎 あぁ・・・(余り興味がない返事)
真実  何? 凄い疲れた顔してるし、無理しちゃ駄目だよ
慎一郎 いや、まぁ、とは言っても・・・
真実  最近、働き過ぎじゃない・・・身体壊しちゃ大好きな絵も描けないよ
慎一郎 あぁ、まぁ・・・絵は・・・ね
真実  何⁈
慎一郎 いや、ほら いつまでも学生気分じゃいられないし、
真実との将来を考えて本気で仕事やらないと
真実  将来?
慎一郎 ほら、結婚とか、生活とか
真実  今の仕事は、慎ちゃんが本当にやりたい事なの?
慎一郎 ん・・・やりたい事で飯が食える筈もないし
真実  あ、そう。
 *間
真実  今日は、私も疲れたから、もう帰るね
慎一郎 え⁈
真実  そんな感じで将来の話しとかされても全然嬉しくないよ
慎一郎 そんな事言ったて
真実  私のために大好きな絵をやめるって言うなら、そんなの嫌だもん、それなら別れた方がマシ
慎一郎 おい、いい加減にしてくれよ!
真実  私は、絵を描いてる慎ちゃんが好きなの。
絵を描いてる慎ちゃんの側でずっとそれを見ていたいの
慎一郎 そんな・・・無茶だよ
 *間
真実  ごめんなさい
 *真実、立ち去る
慎一郎 おい!ちょっと
 *慎一郎、立ち上がり、空を見てまた力なく椅子に座り、首を横に振る
*間
【 それぞれの時間、別々の場所 】
 *溌剌と仕事をしている真実
 *仕事に追われながらもキャンバスに向かう慎一郎
 *2人それぞれの時間
 
 *慎一郎に届く封筒、封を開け中を見る
慎一郎 ・・・やっ・・た!
 *封筒を握りしめ駆け出しハケる慎一郎
 
 *何かをしている真実を見つけ声を掛ける
 *真実、驚いて振り返りキョトンとしている
 
慎一郎:やったよ!真実!俺の絵が、絵画コンクールで最優秀賞を獲ったよ!!
 *真実、慎一郎の封筒を覗き込み、2人飛び跳ねて喜びあう
 
【 楽しい時間、再び 】
 
 *2人で絵を描くように歌い踊る
  ~仲睦まじく自然な2人 リフレイン~
 
*慎一郎の携帯が鳴る
 
慎一郎 コンクールの受賞者たちで、合同美術展を開くんだって!
真実  凄いね‼
慎一郎 急いで準備しなくちゃ‼
 
 *間
【 美術展の準備 】
 *準備をする2人
 *あっちだ、こっちだと絵を持ち上げたり角度を調整したりしている
慎一郎 あぁ、なんだかドキドキするなぁ、大丈夫かなぁ
真実  大丈夫! 大丈夫ですよ、戸田先生‼
 *少し戯れあい、色々と作業しながら真実がふと気づく
 
真実  あれ?・・・慎ちゃん
慎一郎 ん?
真実  おかしいな? あの絵がない・・・
慎一郎 え⁈
真実  ほら「今日の食卓」が無いよ!
 
慎一郎 あー  そうなんだよ! なんと、少し前に知り合いが買ってくれたんだよ!
真実  え・・・⁈
慎一郎 売れたの! 第一号、うん! 3万円‼
 
真実  だって・・・
慎一郎 これからはさ、オンライン販売とかも積極的に
真実  え⁈ だって、あの絵は、2人が出逢うきっかけをくれた絵だよ!
少しくらい相談してくれても!・・・
 
慎一郎 あ~ごめん! いや、まぁ、でもほら、気に入ってくれる人がいるならさ
 
真実  そうだけど・・・
 
 *間
 
慎一郎 真実! 俺頑張るから!
大好きな絵を、いくつも! 何枚でも描き続けるから!!
真実  ・・・・・
 
慎一郎 そして、2人であの絵以上に、もっともっと温かい家族を作ろう!
絵じゃなくて、本当の温かい食卓を!
真実  ・・・・・
 
慎一郎 だから、お願いです!
ずっと傍にいて欲しい! どうか、俺と結婚してください‼
 
 *真実、しばらくして静かに頷く
 
 *M6終わり。照明変わる
 
真実  そして・・・・・今に至る。
慎一郎 今に至る、か。(ケンカのエピソードを持ち出して)結構頑固で面倒な性格だったんだね、俺。
真実  私を 2回も泣かせてるからね~
 *慎一郎の足が止まる。
真実  ・・・・・⁈
慎一郎 UNE PETITE PAUSE(ユヌ・プティトゥ・ポーズ)・・・・・ 
真実  慎ちゃんがお気に入りだったカフェ。
慎一郎 ・・・・・覚えてはないけど
真実  『良い雰囲気の店だね。』でしょ?
最初に来た時もそう言ってた。入ってみる? ちょうどランチの時間だし。
慎一郎 もうお昼か。結構歩いたね。
真実  このカフェ、慎ちゃんの絵が飾ってるよ。
慎一郎 入ってみようか。
 *布の奥へ行く二人。ドアベルの音。
 
M7 お洒落なジャズ(ピアノ演奏のみ)
真実   (声のみ)いつものお願いしまーす!
慎一郎 (声のみ)いつもの?
 *照明変化。
 *布に写る、二人のシルエット。
 *二人は着席し、テーブルにはパスタとコーヒーが乗っている。
 
慎一郎 (声のみ)これが、いつもの?
真実   (声のみ)トマトクリームパスタとバケット。
 *食べる慎一郎。コーヒーを飲む真実。
 *以下、二人の会話はシルエットのみ。
真実  美味しい?
慎一郎 うん。美味しい。・・・・・ねぇ、俺の絵って、どれ?
真実  あれと・・・・・あれ!
 
慎一郎 風景画?
真実  そう。これ見て!
 *真実、携帯に保存している画像を見せる。
慎一郎 これも、俺が描いた絵?
真実  そう!私の一番のお気に入り。
慎一郎 外国?
真実  どこだと思う?
慎一郎 ん~
真実  二人で新婚旅行に行ったところ
慎一郎 パリ?
真実  何で分かったの⁈
慎一郎 これ、エッフェル塔かなと思って。
真実  あぁ。そう、パリ。ホテルの窓からの風景。
慎一郎 コレ・・・・・見たことある
真実  えっ!
慎一郎 どこかで・・・・・
真実  あっ、寝室かな
慎一郎 寝室? あぁそうだ。起きたらこの絵が飾ってあった。
真実  私の一番好きな絵だから、これだけは家に飾っておきたいの。
慎一郎 なんで、これが一番のお気に入りなの?
真実  それは内緒。
慎一郎 いろんな事教えてくれるのにそれは内緒なんだ。
真実  そうよ。
慎一郎 ねぇ
真実  ん?
慎一郎 俺のアトリエに、まだ画材道具は残ってる?
真実  もちろん! 製作途中の絵があるのよ!
慎一郎 製作途中?
真実  そう! すぐそこだから、パスタ食べたら行ってみる?
慎一郎 ・・・・・うん。
 *照明変化。二人のシルエットは消える。
 *ジャズ演奏のみ。
 
 *M7終わり。 二人が登場する。
 
 【 アトリエの前 】
 
真実  到着!
慎一郎 『Atelier TODA』
真実  ここが慎ちゃんのアトリエ。
慎一郎 この扉の奥が、俺のアトリエ・・・・・
 *布を掴む慎一郎。
真実  体調は大丈夫?
慎一郎 うん。大丈夫。
*慎一郎、布を引っ張る。 そこには、たくさんのキャンバスと白い布が掛かったイーゼル。
 
M8 「懐かしい匂い」  ♪慎一郎ソロ 作詞・作曲:近藤美里
 
・・・・・製作中・・・・・
 
 *画材道具を懐かしみがりながら、一枚ずつ白い布を外していく
 *最後の一枚を前にして、M8終わり。
 *白い布が掛かった前に立つ、慎一郎。
 
真実  その絵が、今製作途中の作品。
慎一郎 これが・・・・・
 *慎一郎、布に手をかけ、ゆっくり外す。
 *そこには真実の肖像画。
慎一郎 えつ・・・・・肖像画
真実  そう。
慎一郎 これ・・・・・
真実  うん、私。
 
 *急に言葉を失い、涙を浮かべる、慎一郎。
真実  (そんな慎一郎を見て)・・・・・? 慎ちゃん?
慎一郎 ・・・・・ごめん。
真実  大丈夫? ・・・・・どうしたの?
慎一郎 なんか、ごめん、よく分からないけど・・・・・
    ここに、白い布に掛かったままの真実を見たら、なんか。
 *真実の肖像画を見つめる慎一郎。
 *慎一郎を見つめる真実。
 *間
慎一郎 (周りを見渡し)ねぇ、ここにあるのが、俺が描いてきた絵の全て?
真実  ううん。もっといっぱいあるよ。
慎一郎 もっといっぱい?
 *携帯を見せる真実。慎一郎の絵を販売しているホームページ。
慎一郎 ん? 何、どういう事?
真実  よく見て。
慎一郎 これ‼ 全部俺の絵?
真実  そう!
慎一郎 どうして? 誰がこんなこと・・・・・
真実  (笑って)慎ちゃんだよ。言いだしっぺは。
慎一郎 俺が?
真実  うん。管理は私がしてるけどね。
慎一郎 そうか・・・・・
真実  (携帯を操作して)一番最近描いた絵がこれ。
慎一郎 最近?
真実  うん。
慎一郎 俺が描いた絵?
真実  そう、2ヶ月くらい前かな。ほら、もう売り切れてる。
慎一郎 えっ? 他の俺の絵も、売れてるの?
真実  (いたずらっぽく覗き込んで)どう思う?
慎一郎 どうかなぁ。
真実  今ね、私たちこれで生活してるんだよ。
 
慎一郎 生活って、俺の絵をネットで販売して?
真実  うん。
慎一郎 そっか・・・・・そうなんだ。俺の絵が・・・・・
 *真実の肖像画に触れる慎一郎。
慎一郎 まだ描いてるんだ、俺。
真実  ここで生み出された慎ちゃんの作品は、世界中のいろんなところで
いろんな人の心に響いてる。
慎一郎 世界中?
真実  海外の人も買ってくれるんだよ。慎ちゃんの絵。
慎一郎 そうなんだ。美大生の時の自分が知ったらビックリするだろうな。
たくさん描いて、真実をもっと幸せにしてあげないと。
真実  いいよ! 私は十分幸せだよ。
慎一郎 ・・・・・
真実  あっ、でも・・・・・
慎一郎 ん?
真実  慎ちゃんの個展を開催できたら良いな~
慎一郎 個展⁇
 
M9 「私の夢」 ♪真実ソロ 作詞・作曲:近藤美里
真実 うん、戸田慎一郎の個展」
 
会場はどこにしようかな
少し古めのギャラリーがいいな
真っ白な壁に二人で絵を飾っていくの
 
見渡す限りあなたの絵 私の大好きな絵
 
「あぁ夢がふくらむな~」
 
扉を開いたら そこにはたくさん人がいて 花が舞って 拍手が鳴り響く
 
慎ちゃんは素敵なスーツ 私は控えめのドレス
あなたの隣で夫人としてもてなすの
たくさんの笑顔見つめながら 小さく乾杯しよう
 
「いつかきっと叶えたい 私の夢」
 
*M9終わり。
 
慎一郎 個展か・・・・・(真実の肖像画を前にして)続き、描いてみようかな
真実  えっ、今から?
慎一郎 うん。えっ、ダメ?
真実  ううん。この絵の続きを描いてくれるのは初めてだから。
慎一郎 初めて? どういう事?
真実  記憶を失ってからは・・・・・
慎一郎 そうなんだ・・・・・
 
*間。
慎一郎 俺、いつから・・・・・この状態に?
真実  状態?
慎一郎 その、記憶喪失というか。
真実  ・・・・・ 3年前。
慎一郎 3年・・・・・原因は? 事故? 
真実  先生は、原因不明だって。 
慎一郎 病院、通ってるの?
真実  月に一回。
慎一郎 ・・・・・この絵は、3年前で止まってるんだね。 (絵の中の日付に気づく)ん? 7月7日?
真実  私たちの結婚記念日。
慎一郎 ・・・・・?
真実  この絵はね、3年前の結婚記念日に描き始めてくれたの。
慎一郎 「真実を描かせてもらっても良いかな?」
真実  えっ⁇ どうして? 何か思い出したの?
慎一郎 いや、たぶん、そう言って描き始めたのかなって。
真実  ・・・・・
慎一郎 今も、同じ気持ちがするんだ。真実を描きたいなって。
この絵も完成させて、個展に飾らないとね。
真実  うん!
慎一郎 その前に、トイレに行ってくる。
真実  ドア出て、右の突き当りね。
慎一郎 うん。
*アトリエを出てトイレに向かう慎一郎。
慎一郎 ドアを出て・・・・・
 
M10「焦燥」(ピアノ演奏のみ)  作曲:近藤美里
 
慎一郎 えっ⁈
*頭を抱える慎一郎。激しい頭痛。
*自分の居場所が分からなくなる慎一郎。
*恐怖に包まれる。崩れ落ちる慎一郎。叫び声が響く。
*叫び声を聞きつけ、ドアから出て来る真実。
真実  慎ちゃん⁉ 大丈夫⁈ 慎ちゃん‼
*慎一郎を抱きかかえる真実。 
*乱れた呼吸が、落ち着きを取り戻すと同時に、意識を失う慎一郎。
 
*暗転。 
 
M10「焦燥」は少しずつテンポを落とし、安らかなメロディーになる。
 
*明転。
 
M10 終わり。
 
*自宅のベッドに横たわっている慎一郎。
*真実は寄り添うように、ベッドに座っている。
真実  慎ちゃん・・・・・
*ゆっくりと目を開ける慎一郎。
真実  慎ちゃん?
慎一郎 ・・・・・真実
真実  慎ちゃん‼ 大丈夫?
慎一郎 うん・・・・・
*上半身を起こそうとする慎一郎。
真実  無理しないで、今日はこのまま
慎一郎 いや、もう少し真実と話したい。(身体を起こす)
*見つめ合う二人。
真実  薬、飲めそう?
慎一郎 うん、飲もうかな。
 
*真実から薬とコップを受け取り、薬を飲む慎一郎。
慎一郎 今、何時?
真実  夜の10時。
慎一郎 ・・・・・まだ覚えてる。今日の事も・・・・・真実との過去も。 
真実  今日は、ちょっと無理しすぎたかな。
慎一郎 描き進めたかったな、真実の絵。
真実  また今度描いて
*部屋を見渡す、慎一郎。
慎一郎 (絵に気づき)真実が一番好きな絵。
真実  (慎一郎の視線を追って)うん。大好きなパリの風景。
*立ち上がり、絵に近づく慎一郎。
真実  慎ちゃん、大丈夫?
慎一郎 大丈夫。 ・・・・・どうしてこの絵なの?
 
真実  内緒。
慎一郎 やっぱり内緒なんだね。
 
M11 「君を幸せにする」 イントロ
 
*照明変化。時間が過去に戻る。 
*寝室は、パリのホテルとなる。 
*正面を振り向く二人。
*客席側にパリの風景が広がっている。
 
真実  わぁ! 素敵な風景!
慎一郎 ホントだね!
真実  あの遠くに見えるの、エッフェル塔じゃない?
慎一郎 そうだね! ここにしようかな。
真実  えっ! せっかくパリに来たのに⁈
慎一郎 素敵な風景って言ってたじゃん!
真実  だけどさぁ、せっかくなら外に出て描いたほうがさぁ。
慎一郎 いや、ここからにする。
真実  えー! パリに着いて一日目だよ!
慎一郎 一週間滞在するんだから、いいじゃん!
真実  もう、言い出したら止まらないからな~
慎一郎 3日で仕上げるから、その後、しっかり観光しよう!
*イーゼルを用意して、描き始める慎一郎。
*照明がゆっくり変わる。
*ベッドに寝そべっている真実。
真実  慎ちゃん、明日で3日目だからね。ちゃんと仕上げてよ。 
慎一郎 ・・・・・
真実  (微笑み、ため息)ちょっと、お昼寝しようかな~
慎一郎 ・・・・・
*ベッドで眠りにつく真実。
*筆を止め、ゆっくり真実を見る慎一郎。
 
M11「君を幸せにする」 ♪慎一郎ソロ 作詞・作曲:片山行茂
 
言葉にするのは苦手だし
なんだか照れてしまうけれど
今を逃したら きっと
駄目だから素直に言うよ キミを愛してる
 
生きるのが下手なこんな僕だし
贅沢な暮らしは なかなか無理だけど
これだけは絶対に 胸を張って
言えるよ 誰より キミを愛してる
 
やがて腰の曲がったお爺ちゃんと
しわくちゃなお婆ちゃんになっても
また2人ここに来て過ぎた日々の
思い出話 語ろう
 
心に咲いた小さな喜びも
胸を締め付ける辛い悲しみも
全てを分け合って2人暮らそう
それが叶えば ずっと幸せ
 
大切な時間は限りがあるもの
だからその時間をキミと費やしたい
僕ら2人ならば きっと大丈夫
僕が必ず 君を幸せにする
 
ずっと変わらず 君を幸せにする
 
*M11 終わり。
*照明変化。
*舞台は現代に戻る。
*絵の前で立っている慎一郎と、ベッドに腰を掛ける真実。
慎一郎 好きな理由くらい教えてくれたらいいのに
真実  あの時ね、起きてたの私。
慎一郎 あの時?
真実  ううん。何でもない。いつかちゃんと話すから。
慎一郎 いつか・・・・・
*頭痛が慎一郎を襲う。
真実  慎ちゃん!もう横になって。
 
*真実に促されてベッドに横たわる慎一郎。
慎一郎 寝たら、また忘れるのかな・・・・・
真実  ・・・・・
慎一郎 (再び上半身を起こそうとして) あっ、ビデオ撮らないと。 
真実  今日はもう休んで。いつも録ってるわけじゃないから。
慎一郎 明日の自分へ・・・・・か。
真実  ・・・・・
慎一郎 (眠気が襲ってくる)・・・・・もっと話したかったな、真実と。 
真実  明日いっぱい話そう。
慎一郎 真実。
真実  (優しく)なに?
 
慎一郎 まさみ・・・・・まさみ・・・・・まさみ・・・・・
真実  慎ちゃん・・・・・
 
M12 「明日はどんな1日になるかな」 ♪真実ソロ 作詞・作曲:近藤美里
 
慎一郎 まさみ・・・・・まさみ・・・・・まさ・・・・・
 
*真実、歌いながら、外された布を戻していく
*音楽が終わるころには、最初の舞台と同じ状態になっている。
 
もしも あなたが忘れてしまっても 私がぜんぶ覚えているよ
何も心配しないで 私はここにいるよ
 
風の匂い、笑い声、温もり、すれ違い孤独な夜、
あなたが描く色を ずっと忘れないから 
 
明日はどんな1日になるかな
夢見て 目が覚めて あなたと あなたと
 
毎日出会って 毎日さよならを 繰り返して
この世界中の どこにもない二人の物語
会う度に恋をして 愛して あなたと生きてゆく
 
「こんな僕といて本当に幸せかい?」あなたは私に何度も聞くの
「毎日あなたの側にいられるだけで それだけでとても幸せよ」
 
毎日出会って 毎日さよならを 繰り返して
この世界中の どこにもない二人の物語
 
毎日出会って 毎日さよならを繰り返して
この世界中で巡り逢えた二人の物語
今日までも この先も 手をとって歩いてゆこう
 
愛してる 永遠に これが私の人生
 
慎ちゃん、明日はどんな1日になるかな・・・・・
 
*暗転。
*悲しく奏で続ける音楽。
 
*M12 終わり。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
*明転。
*目覚ましの音。
「ピピピピ ピピピピ ピピピピ」 
*手探りで目覚まし時計のアラームを止める慎一郎。 
*慎一郎、ゆっくりと目を開ける。
*照明、うっすらと舞台に広がる。
 
M13 「ここはどこ? ピアノインスト」
*ベッドから起き上がる慎一郎。
 
慎一郎 ここは、どこだ?
 
*M13 突然終わる。 
*立ち上がる慎一郎。
 
M14 「Eraser」(ピアノ演奏のみ) 
 
*ゆっくりと、パリの風景画に近寄る慎一郎。
*パリの風景画を手に取る。
*寝室に入ってくる真実。
*絵を手にしている慎一郎を見つめる。
 
*照明、ゆっくり変化。
*暗転。
*M14 「Eraser」おわり
 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

少年少女剣客隊

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

追放された多武器使い、一人で邪神を倒しに行く

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:16

処理中です...