星の聖女見習い

みこと

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エピローグ

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 スタンピード解決の報は瞬く間に王都中に知れ渡り、人々は歓喜に包まれた。

 しかし、カタリナの死はカトリーヌやキャサリン、レオハルトや騎士団員達にとって深い悲しみと喪失感は計り知れなかった。

 絶望的な状況での戦いであったにもかかわらず、重症者を含む負傷者は多数出たものの、覚醒したカトリーヌやキャサリンによって治され、奇跡的に死者はいなかった。

 結果的にスタンピードでの死者はカタリナ、ただ1人であったが、カタリナの関係者にとっては、その(スタンピード解決の)代償はあまりにも大きかった。

 意外なことに、シルベストロ司祭もその1人であった。
 彼は元々信仰心の篤い敬虔な信者であったが、病弱な妹の治療費や薬代がどうしても必要であったので、ペトロ派につくしかなかった。

 しかし、リーダーシップを発揮する才が無かったため、水面下で反ペトロ派を組織するなどという事は出来なかったが、司祭よりも立場が下である助祭や従者、侍女達は、面倒見の良い彼に対し、尊敬の念と親しみを感じた者は多かった。

 見習い聖女であるカタリナ達を陰ながら守ってもいた。
 例えば、彼女達の能力を利用されないように配慮して、自分は無能であるという体をとり、教会上層部が聖女見習いの実力に興味を持つ事を防いでいた。

 しかし、カタリナを失った事で、彼は変わった。
 真なる敬虔な信者となったのだ。

 シルベストロ司祭はレオハルトに今までの全てを話し、謝罪して力を貸してほしいと懇願し、協力を得る事に成功した。

 シルベストロ司祭は騎士団と共にペトロとペトロ派の上層部の者を拘束。隣国の支部にベツレヘム支部での不正の全貌を伝える使者を派遣した。
(聖教国本部に直接伝えなかったのは、司祭に過ぎない彼にその権限がなく、信用されない可能性が少しでもあったためである)

 さらに、カタリナの遺体を保存。(シルベストロ司祭はそういった知識もあった)葬儀は諸問題の解決後に執り行う事とした。

 これはレオハルトも賛成し、この事が彼がシルベストロ司祭の本気さを知ることとなった要因でもあった。



 国王を含む王家は、もちろんスタンピード解決に歓喜したが、それは純粋なものではなかった。
 戦勝祝賀会での不始末を払拭する。つまりスタンピード解決でその失態を上書きして無かった事に、という魂胆であった。

 早速祝賀会開催を決定するも、肝心の騎士団がまさかの不参加を表明。
 教会もペトロ、及び教会上層部の殆どは拘束されていた。

 しかし、教会と貴族の癒着を知りながら見て見ぬ振りをしていた国王や王家に異を唱える貴族が現れた。

 シュミット侯爵。
 先の戦勝祝賀会で聖女の怠慢に憤りを感じていた貴族である。
 彼も敬虔な信者であった。

 そして、騎士団から語られたカタリナ達の功績を知り、深い感謝と共に、カタリナの死を心から嘆いた。



 ベツレヘム支部の実態を知った隣国支部の大司教は驚愕し、激怒した。
 早速、聖教国本部に使者を派遣。司教にベツレヘム支部の実態の調査を命じた。

 この事によって、ベツレヘム支部の実態は、聖教国の本部、更には教皇までも知ることとなり、女神教の歴史上最悪の大失態として大教会に激震が走った。

 そして、監査団の即時派遣を決定。監査団の責任者は枢機卿(枢機卿は複数人居る)が任命された。
(枢機卿の権限は、教皇に次ぐ2番目)


 ベツレヘム支部には、隣国司教、本部の監察団と次々に到着した。
 そして、シルベストロ司祭やレオハルトと共に調査し、ペトロ大司教の不正の数々の実態が事実である事を確認。更に新たな不正も明らかとなり、その女神をも恐れぬ悪行に恐怖した。

 監察団の責任者は枢機卿なので、様々な処罰は直ちに決定された。
 まず、聖女の地位をお金で買った貴族家。不正を行ったペトロ派の聖職者。そして、ペトロを大司教に推薦した枢機卿は破門となった。
(ペトロを大司教に推薦した枢機卿も賄賂を受け取っていた)

 破門となった者のその後は悲惨である。
 この大陸には女神教しかない。そして、女神が実存していると信じている者ばかりである。

 その女神の裏切り者を人々が許容することはない。
 つまり、国外に逃げることも出来ない。まさしく詰みであり、たいていのものは物乞いのような生活となる。

 今回破門された者の末路は、今は誰も分からないが、良いものではないことだけは確かである。

 そしてペトロは女神教で一番重い刑。火刑(火あぶりの刑)となった。

 枢機卿はカタリナ達の功績も知る事となった。
 カタリナが起こした最後の光と星の現象については過去にも実績がなく、分からなかった。

 しかし、自らの生命いのちまでも聖力として行使されたものだろうと結論付けた。
 その現象は後に「カタリナの奇跡」と呼ばれた。

 そして、その功績を称え、カタリナを大聖女に任命する事を決定しかけたが、レオハルトが反対した。

 そう。ベツレヘム王国の人々は聖女を認めていない。
 お金で買った偽りの聖女でしかないのである。

 カタリナはレオハルトや騎士団、この国の人にとっては聖女見習いなのだ。
 大聖女などよりも偉大な、聖女見習いなのである。

 枢機卿も納得し、了承した。
 そして、カタリナは、歴史上最も女神に近い聖女見習いとして後世に名を残すこととなる。

 聖女の「格」は上から大聖女、聖女、聖女見習いという順であるが、それは女神との距離(物理的な距離でなく、神の性質や能力と、どれくらい似ているか、という事)を示す、と考えられていた。つまり大聖女が最も女神に近いと言う事であり、カタリナは聖女見習いではあるが、「格」は大聖女よりも上と判断されたためである。

 当然、これら(聖女の「格」)は人が考えたものであり、実際にそうであるかは女神しか知らない。
 しかし、誰も知る由もない事だが、カタリナは実際に女神と会話している事から間違いではない。


 今回発生したスタンピードは、「奈落の地」より溢れ出したものでは無かった。
 そして、数百の大型魔物や超巨大魔物の出現も過去に例がない。

 このスタンピードは明らかに、ここベツレヘム王国の王都を狙ったものである。
 そして、枢機卿は女神の神罰だろうと結論付けた。

 ペトロが火刑となったのも、この事が大きい。
 火刑の処罰が下される事は殆どない。女神教は基本的に死罪を是としていないからである。

 それだけ、ペトロの罪は大きかったのだ。
 カタリナが命を懸けて奇跡を行使していなければ、この国は間違いなく滅んでいたであろう。


 王家や貴族家でも動きがあった。
 シュミット侯爵が王家に反旗を翻したのだ。

 シュミット侯爵は枢機卿から今回のスタンピード発生の経緯を聞き、責任は国王や王家にもあると断罪したのだ。

 初めは抵抗していた国王や王家だが、枢機卿などから事の経緯を伝えられ、殆どの貴族が反旗を翻していることも知らされれば、どうしようもない。

 味方は誰もいないのだから。
 こうして、国王は退位。王家は皆地位や爵位を失った。

 その後は体制が決まるまで侯国として、シュミット侯爵が統治する事となった。




 カタリナの葬儀は親しい者達だけで執り行なわれた。

 その者達の深い悲しみは計り知れない。

 しかし、その者達が最後に見たカタリナは、笑顔であった。

 そして、彼女の冥福を心から祈った。

 王都の人々は、非常事態で避難していたこともあり、深夜であったがカタリナの奇跡は多くの者が目撃していた。

 たった14歳で王都、王国を救った小さな聖女見習いは、大きな奇跡を起こした。

 それにより、カタリナの功績はすぐに知れ渡り、心から深く感謝したが、彼女の死を悲しんだ。

 葬儀の時は、民全員が各々の場所で黙祷を捧げた。


 ◆


 その後、レオハルトと騎士団は、侯国騎士団として、今までと変わらぬ日々を過した。

「奈落の地」はまだあるのだ。今回のスタンピードは解決した、とはいえまた繰り返し起こり得るし、魔物の脅威がなくなったわけでもない。

 カトリーヌとキャサリンも、変わらず聖女見習いとして過し、カタリナの意志を継ぎ、後輩の指導に尽力した。
 聖女への昇格は、いくら説得されても、断固として首を縦に振らなかった。

 教会は、シルベストロ司祭が大司教代理として、教会の立て直しに尽力した。
 その後の女神教ベツレヘム支部は、聖力を持った少女が現れても、聖女見習いで留まり、聖女のいない支部となった。




 カタリナの起こした奇跡により、ベツレヘム侯国の夜には、満天の星が輝いている。

 その星はカタリナと、彼女が起こした奇跡の星だと、誰しもが疑わなかった。

 その、ひときわ輝く星は「カタリナの星」と名付けられた。



 そして、カタリナは「星の聖女見習い」と呼ばれ、後世に語り継がれた。






 おわり
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