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第一章 変貌
第二十一話
しおりを挟む「やっぱり」
間違いない西園寺だと思った瞬間、安心したのか独り言が漏れる。
きっと今ごろ周防は部屋で高いびきと括っているはず、ならばそっと近づき驚かせてやれといたずら心が芽生えた。そそくさと浴衣を脱ぎロッカーに預けると、音を立てないよう内扉を引き露天風呂を進む。
先ほどまで行為に耽っていた身体だ、湯に浸かるまえに洗わなければならない。仕方ないので湯には浸からず、岩場を歩いて西園寺を探す。
流れる湯の音に混じりぴちゃりと人為的な水音が響く。西園寺がひとり湯を堪能してるのだろう、その音を頼りに湯けむりをかき分け進み歩く。
「──やんっ、ダメ……っ」
満天の星夜をバックに、湯けむりのあいだを割り微笑むのは西園寺。そしてもうひとり、婀娜やかに悩ましい表情で彼にしな垂れかかり喘ぐ女性──周防は目のまえが真っ暗となった。
どういうことだ。あの女はいったい、いやそれよりも西園寺は何をして───
岩場に身をひそめ湯のなかで睦み合うふたりを凝視しながら、混乱する頭でどうにか答えを導き出そうと必死な周防。理性では正しい答えを伝えてくるが、脳はそれを受け入れられずに拒否する。
だいたい今回の旅行は周防と西園寺ふたりで来たはずだ、第三の女性と一緒など周防は聞いていない。そうなれば今湯のなかで彼が抱くのは知らない客、でもまさか西園寺に限ってその場の乗りでナンパした女性と性行為に至るなど……。
けれど実際に目のまえの現実はどう説明すればいい。脳も心も狼狽した状態では冷静でいられるはずもなく、浮かぶ答えも最悪なものでしかなかった。
引き返そう。幸いにしてふたりには気づかれていない、このまま部屋に戻って心落ち着けようとその場を離れる周防だった。
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