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第一章 変貌

第七十四話

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 不倫相手より嫌味まじりに聞かされたのは、地方の公衆電話からの無言電話は不倫旅行先でしてやったと告白され、その他にも七年間で豪遊した海外でのバカンスなど自慢をされる。

 夫は抜きんでたエリートだ、稼ぐ金は多く家庭に入れる生活費などに不満はなかった。けれど給与明細や貯金などは夫が管理しており、妻は何も知らず毎日を感謝して生きていたわけだ。

 稼ぎの大半を不倫相手に貢ぐ夫、それを妻以上の傲慢無知面をして使う愛人。湯水のように金を浪費され、妻としての幸せも奪われていたことに絶望した。

 愛人からしてみれば、すでに夫の心が離れた家政婦も同然。自分が内縁の妻として当然のようにうけるべき幸福を、紙切れひとつで夫を縛りつける本妻が憎かったのだろう。

 七年も愛人として甘んじてきたのだ、これからは自分が本妻に収まり日陰から日向の待遇を受ける番だ。幸せになって何が悪い。

 いっそのこと木端微塵に家庭を壊してしまえたら……。

 妻を攻撃していればノイローゼとなり音をあげるのではと考えた不倫相手は、夫がシャワーを浴びにいくと透かさずスマートフォンから情報を失敬したという経緯だった。

 心を病んだ妻は実家に戻り両親に夫の不倫を告白。激怒した両親は夫が立ち直れないほどの制裁を与えたのち、娘と離婚させ愛人もろとも生き地獄を味わわせたそうだ。

 とはいえ夫は表面上とてもいい父親であったことも事実。家族サービスとして休日には買い物や外食、大型連休には旅行に連れてやったりと父親業をこなしていた。

 息子の体育祭には応援に出向き、父子で野球を楽しんだりと近所でも好印象。仕事からの帰宅が遅いことを除けば、絵にかいたような幸せな家族だったというのに……。

 だがふり返れば出張だの残業だのと、愛人と過ごすため時間の調整をされていたのかと思えば、決して許されない裏切り行為であると妻は夫を見限った。
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