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08(ハヤカワ)
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「ちょっと待ってくれ、ユカ」
「何をもったいぶっているのだね、ハヤカワオジサン。早く写真くらい見せてよ?」
「……。いや、未来からスマホを持ってくるなんて、そんな都合の良い話は無かったみたいだ」
「何の話?スマホ?なに?よくわかんないや」
えっと確か…iPhoneが日本での初発売は、2008年、だったか?スマホ何て知らないのも仕方ない。
「えっと…ユカは、スマホ…いやケータイは持ってるか?」
「もっちろん!これこれ!オキニイリですよ。…変なとこ見ないでよ?」
これはまさしく、当時のケータイ。あの頃にしては珍しく折りたたみ式じゃないストレート式のケータイ。縦長で全体的にボタンなども紅白に彩られたもの…そして思ったよりもボロボロだ。どうせ地面にガンガン落としたりしているんだろう。確かにこの時代のケータイは丈夫だったような気もするけど…それにしたって扱いが悪すぎる気もするが。
ユカは、わーわー、ごちゃごちゃずっと言っているが、すでに俺に順応し始めている。でも、その方が都合が良いのかも知れない。『未来から来た』を信じる人間など、きっとそう簡単にはいない。ただ…何かしらの感覚や確信のようなモノが一応ユカにはあるから、俺の話を信じるし…信じてみようとするし、会話が通じるのかもしれない。
「よくわかんないけどさ、未来の記憶があるなら、いっぱいお金稼げるんじゃないの?大金持ちになれるよ」
「ん…。なんかそれはやっちゃいけない気がする。ペナルティがありそう」
「何それ?ペナルティ?…はい?」
「よく解らないし、確信も無いんだけど…俺は何かを為すために、この時代に戻って来たんじゃ無いか、って思うんだよ。忘れてしまったモノを取り戻すのが目的とか…なんとか」
(ハヤカワちょっとキモいな…)というユカの声が聞こえてきたような気がするが…多分、果たすべき目的に関係の無い行動や、私利私欲に任せた行動をした時点で、俺は五十歳のオジサンへと瞬時に逆戻りしてしまうような気がする。なぜそう思っているのかはよく解らないが、せっかく戻って来られたのだから、俺は自分のピークだった二十代を、もう一度、出来る限り満喫したいと正直な所思うし、ここからの選択も間違えずに進む事ができれば、もしかしたら五十歳の俺は、少し違う形、マシな形になるんじゃないか?…とはいえ、何をどうしていくべきか…。
「あっ?ハヤカワ!もうカイギの時間だ!あたし行ってくる!」
「おお…悪い。じゃあまた後で」
「ハヤカワとは、社長に深夜に呼ばれる、超ブラックなカイギで合流だからね!?ちゃんと来てよ?」
「はいはい」
月1回の経営陣が、ユカを招集しての会議の事はよく覚えている。ただ、社長とユカと俺で…深夜に会議?それはあまり想像がつかない。
しかし…なんで、あんな高いヒールで走れるのか、ずっと不思議なのだが、あっという間に後ろ姿は見えなくなった。なんとなく腕時計に目をやった。この時計が真新しい事が、やけに2005年に戻った事を感じさせる。
「何をもったいぶっているのだね、ハヤカワオジサン。早く写真くらい見せてよ?」
「……。いや、未来からスマホを持ってくるなんて、そんな都合の良い話は無かったみたいだ」
「何の話?スマホ?なに?よくわかんないや」
えっと確か…iPhoneが日本での初発売は、2008年、だったか?スマホ何て知らないのも仕方ない。
「えっと…ユカは、スマホ…いやケータイは持ってるか?」
「もっちろん!これこれ!オキニイリですよ。…変なとこ見ないでよ?」
これはまさしく、当時のケータイ。あの頃にしては珍しく折りたたみ式じゃないストレート式のケータイ。縦長で全体的にボタンなども紅白に彩られたもの…そして思ったよりもボロボロだ。どうせ地面にガンガン落としたりしているんだろう。確かにこの時代のケータイは丈夫だったような気もするけど…それにしたって扱いが悪すぎる気もするが。
ユカは、わーわー、ごちゃごちゃずっと言っているが、すでに俺に順応し始めている。でも、その方が都合が良いのかも知れない。『未来から来た』を信じる人間など、きっとそう簡単にはいない。ただ…何かしらの感覚や確信のようなモノが一応ユカにはあるから、俺の話を信じるし…信じてみようとするし、会話が通じるのかもしれない。
「よくわかんないけどさ、未来の記憶があるなら、いっぱいお金稼げるんじゃないの?大金持ちになれるよ」
「ん…。なんかそれはやっちゃいけない気がする。ペナルティがありそう」
「何それ?ペナルティ?…はい?」
「よく解らないし、確信も無いんだけど…俺は何かを為すために、この時代に戻って来たんじゃ無いか、って思うんだよ。忘れてしまったモノを取り戻すのが目的とか…なんとか」
(ハヤカワちょっとキモいな…)というユカの声が聞こえてきたような気がするが…多分、果たすべき目的に関係の無い行動や、私利私欲に任せた行動をした時点で、俺は五十歳のオジサンへと瞬時に逆戻りしてしまうような気がする。なぜそう思っているのかはよく解らないが、せっかく戻って来られたのだから、俺は自分のピークだった二十代を、もう一度、出来る限り満喫したいと正直な所思うし、ここからの選択も間違えずに進む事ができれば、もしかしたら五十歳の俺は、少し違う形、マシな形になるんじゃないか?…とはいえ、何をどうしていくべきか…。
「あっ?ハヤカワ!もうカイギの時間だ!あたし行ってくる!」
「おお…悪い。じゃあまた後で」
「ハヤカワとは、社長に深夜に呼ばれる、超ブラックなカイギで合流だからね!?ちゃんと来てよ?」
「はいはい」
月1回の経営陣が、ユカを招集しての会議の事はよく覚えている。ただ、社長とユカと俺で…深夜に会議?それはあまり想像がつかない。
しかし…なんで、あんな高いヒールで走れるのか、ずっと不思議なのだが、あっという間に後ろ姿は見えなくなった。なんとなく腕時計に目をやった。この時計が真新しい事が、やけに2005年に戻った事を感じさせる。
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