3 / 26
第二話 内緒
しおりを挟む
「はぁ、腹くっち」
あんずはどこかの世界から持ち込まれて今はやっている『方言』を使い、満足そうにため息をついた。
大きいサイズのケーキを二つ食べたばかりなのにさらにご飯を大盛りで三杯も食べた相変わらずの大食いっぷりのあんずを見ていると、お腹にやさしいおかずを作ったのはあんまり意味がなかったかもしれないなとつい思ってしまう。
あの小さいお腹にどうやったらあれだけの量が入るのだろうか。
「おにぃは今日も仕事あるの?」
「あるよ」
「そっか。 気をつけてねっ」
「あんずも夜更かしせずな早く寝ろよ」
「はぁい」
家は綾人とあんずの二人暮らしでときどき幼馴染のよしみで冬美が家事の手伝いに来てくれる。両親は綾人が十歳の時に行方不明になり、今でも消息不明だ。
このことがきっかけで綾人は夜に仕事をするようになった。家賃や色々な書類を書くときの保証人などの援助は職場の上司が面倒を見てくれているがその対価として仕事を任せられているという形だ。
ちなみに仕事内容は妹にも内緒にしている。
****
街から明かりが消え、あんずもすっかり深い眠りについた頃に、風通しを良くするために開けたままにした窓から人影が現れる。
「綾人くん」
冬美は二階の窓からひょっこりと顔を覗かせてあんずの隣のベッドで寝ている綾人を呼んだ。
ちなみにこの世界は転生の中心となる世界のくせに魔法が存在しないので今の冬美は一階の下屋根の部分に乗っかっている状態である。
小さな声で呼ばれた綾人はすでにぐっすりと寝てしまっている。冬美はそんな綾人を起こすため、軽々と窓から部屋へ侵入し綾人の肩を叩く。
「綾人くん、仕事だよ。 早く起きて」
「もうちょっと…… あと五分」
「毎回子供みたいなこと言わないで」
冬美はため息を付きながら綾人の体を揺さぶり続けた。
かなり眠たそうにゆっくりと体を起こした綾人の服装は寝間着ではなく、冬美と同じような全身黒ずくめである。
夜中に黒ずくめの格好をした年頃の男女が家を抜け出すというシチュエーションは色恋沙汰の想像をする人も多くはないだろうけど実際は全くそんなことはない。
むしろ捉え方によっては真逆のことをしているかもしれない。
二人が向かった先は寂れた公園にポツリと一つだけ置いてある連絡水晶版(とあるせかいでは公衆電話ともいう)である。
「毎回思うんだけどさ、二人で入るには小さすぎないか?」
「綾人くんが寝坊したり道に迷ったりするからでしょ」
「うっ…… すみません」
冬美はため息をつきながら水晶版を操作する。しばらく何やら打ち込んだあと胸元からカードのようなものを取り出してかざす。するとガラス張りの壁が曇り、同時に足場が下がっていく。
完全に頭まで見えなくなったあと、新たな足場が現れ壁の曇りは完全になくなる。
残ったのは何事もなかったかのように照明が時々点滅する連絡水晶版とどこから現れたのか寝転がって毛づくろいをしている一匹の猫のみだった。
あんずはどこかの世界から持ち込まれて今はやっている『方言』を使い、満足そうにため息をついた。
大きいサイズのケーキを二つ食べたばかりなのにさらにご飯を大盛りで三杯も食べた相変わらずの大食いっぷりのあんずを見ていると、お腹にやさしいおかずを作ったのはあんまり意味がなかったかもしれないなとつい思ってしまう。
あの小さいお腹にどうやったらあれだけの量が入るのだろうか。
「おにぃは今日も仕事あるの?」
「あるよ」
「そっか。 気をつけてねっ」
「あんずも夜更かしせずな早く寝ろよ」
「はぁい」
家は綾人とあんずの二人暮らしでときどき幼馴染のよしみで冬美が家事の手伝いに来てくれる。両親は綾人が十歳の時に行方不明になり、今でも消息不明だ。
このことがきっかけで綾人は夜に仕事をするようになった。家賃や色々な書類を書くときの保証人などの援助は職場の上司が面倒を見てくれているがその対価として仕事を任せられているという形だ。
ちなみに仕事内容は妹にも内緒にしている。
****
街から明かりが消え、あんずもすっかり深い眠りについた頃に、風通しを良くするために開けたままにした窓から人影が現れる。
「綾人くん」
冬美は二階の窓からひょっこりと顔を覗かせてあんずの隣のベッドで寝ている綾人を呼んだ。
ちなみにこの世界は転生の中心となる世界のくせに魔法が存在しないので今の冬美は一階の下屋根の部分に乗っかっている状態である。
小さな声で呼ばれた綾人はすでにぐっすりと寝てしまっている。冬美はそんな綾人を起こすため、軽々と窓から部屋へ侵入し綾人の肩を叩く。
「綾人くん、仕事だよ。 早く起きて」
「もうちょっと…… あと五分」
「毎回子供みたいなこと言わないで」
冬美はため息を付きながら綾人の体を揺さぶり続けた。
かなり眠たそうにゆっくりと体を起こした綾人の服装は寝間着ではなく、冬美と同じような全身黒ずくめである。
夜中に黒ずくめの格好をした年頃の男女が家を抜け出すというシチュエーションは色恋沙汰の想像をする人も多くはないだろうけど実際は全くそんなことはない。
むしろ捉え方によっては真逆のことをしているかもしれない。
二人が向かった先は寂れた公園にポツリと一つだけ置いてある連絡水晶版(とあるせかいでは公衆電話ともいう)である。
「毎回思うんだけどさ、二人で入るには小さすぎないか?」
「綾人くんが寝坊したり道に迷ったりするからでしょ」
「うっ…… すみません」
冬美はため息をつきながら水晶版を操作する。しばらく何やら打ち込んだあと胸元からカードのようなものを取り出してかざす。するとガラス張りの壁が曇り、同時に足場が下がっていく。
完全に頭まで見えなくなったあと、新たな足場が現れ壁の曇りは完全になくなる。
残ったのは何事もなかったかのように照明が時々点滅する連絡水晶版とどこから現れたのか寝転がって毛づくろいをしている一匹の猫のみだった。
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる