神命 side N

MOMO

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マラアプニサウルス

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「シロナガスクジラは全長約30mで地球上で最も大きな生き物である。とされているが地球の歴史を遡ると実は2番手に後退する。
 ジュラ紀後期にマラアプニサウルス(アンフィコエリアス・フラギリムス)全長約60mという化物がいるのだ。最も大きな竜脚類恐竜と言われているのだが、本当に存在したかも怪しい。なぜなら証明となる化石は紛失され研究資料が残るだけの存在なのだから。」

 美波がメモを書いたノートを広げて説明している。控えめに言っても美波は美人だと思う。
 血管の浮くような細い腕や脚はすらりと長く、僕好みの肉付きのいいからだをしているが、本人曰く少し太ったのでダイエット中とのことだ。
 きりょうが美いというばかりでなく、品のいい顔立ちをしている。
 いつもなら肩甲骨辺りまで伸びた髪を櫛でとかし、風に吹かれるがままにしているのが、今日はヘアゴムでまとめてポニーテールにしていた。

 なぜそんな美人が僕のような冴えない普通の男と付き合っているのか?告白してOKを貰ったときに聞いたら
「一緒にいて自然体でいられる。とても落ち着くから。」とのことだ。

 僕たちは普通の大学生カップルとは違っていて、デートで外に出ることは少なかった。

 二人でいるのは大抵の場合、図書館か僕の部屋。
 SEXは人並みにしていたと思う。お互いが初めての相手だったので、一般的な頻度などはよくわかっていないのだが。

 2人でいるときはお互いが触れ合い幸福感を噛みしめることも好きだったが、知的好奇心を満たすことが優先された。

 いつの間にか2人の遊びとなった

『調査』

 日頃の疑問を僕と美波で交互に出し合い、出された側は調べ、研究し、事実を説明する。そこからお互いに考察を述べ合う。

 美波も僕も『調査』が無性に楽しかったのだ。
 議論し考え方を知ることで、相手をより深く知った気になっていたのかもしれない。

「マラアプニサウルスはロマンだよ。いつか何処かで化石の発掘体験をして発見してみたいものだ。」

 美波は少し鼻側にズレた眼鏡を外しながら目を輝かせていた。時刻は17:00を過ぎていた。
 美波と会って調査の結果発表を聞き始めたのが16:00。窓から入る夕焼けのオレンジ色が僕の部屋を染めていた。
 大学に入ってから実家を離れて一人暮らしを始めた。キャンパスまで電車で3駅、時間にして20分と好立地にあるので、よく友人のたまり場になっていたが、美波と付き合い始めてからは友人を家に上げる頻度は極端に減った。
 今回の調査は僕が美波に一番大きな生き物はシロナガスクジラなのか?と疑問を投げかけたところから始まったが、案外あっさりと調べ終わったようだ。

「なかなか楽しい調査だったよ。考古学にも興味が出た」

 美波は自分の将来の可能性を広げることができた。と言って笑った。

「美波、今日どうする?泊まって行くの?」

「ん?あぁ。もちろんそのつもりだったよ。私のお泊りセットの備蓄は大丈夫かな?」

「大丈夫と思うけど、ちゃんと確認しといてね。足りないものがあれば、いまから夕飯の買出し行くから買い足しておこうよ」

「了解した。確認してくる」
「ところで陸」
 と、美波は立ち上がって洗面台の方へ向かう途中にあるドアを開けたところで声をかけてきた。

「なに?」

「ちゃんとゴムの備蓄はあるのかな?今日は危険日ではないが、まだ子どもは早いと思うからね」
 後ろ姿からだが、美波の耳が赤くなっているのが見えた。

「美波さん…。当然ですよ。常に3箱は準備してあります。」
 僕はベットの下から新品のゴムの箱を3個取り出して見せた。

「お、おぉ。ありがとう。1箱あれば十分と思うのだが…。他のものを確認しておくよ」
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