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モテる自覚のない女
しおりを挟む「…………、……も、もしかして、プロポーズですか?」
「はい。そうなりますね」
「い、一体いつフラグを立てたのでしょう私?」
「ふらぐ、とは?」
おっとしまった。ついつい前世でしか通じない言葉を使ってしまった。この世界って(過去の転生者の影響か)結構カタカナ語も通じるのだけど。どうやらフラグは通じなかったみたい。
一旦深呼吸して、心を落ち着ける。プロポーズということは、結婚したいということよね? いや何を当たり前のことを考えているのか私。
「ご、ごほん。つまり、リチャード様は私と結婚したいと?」
「はい。貴女の見た目はもちろん素晴らしいですが、未来の王妃として鍛え上げられた能力もまた素晴らしい。貴女とならば我が伯爵家をさらに発展させていけると思うのです。……いやこれでは貴女の能力だけに注目しているように聞こえますね。もちろん内面も重視しています。あれだけの非道な行いをされながらも優しさを失わなかった人間性。あのバカ息子を最後まで見捨てなかった慈悲深さ。そして何より――貴女と過ごす時間が、私にはとても心地よく感じられるのです」
「お、おおぅ……」
めっちゃ熱の篭もった告白をされてしまった。なんだこれ恥ずかしいな? 顔が赤くなっているのが自分でも分かる。まかさいつも冷静なリチャードさんがここまでの情熱を秘めているとは……。
思わず頷いてしまいそうになる私。……いや落ち着きなさい私。いつもいつもノリと勢いで決めて酷い目に遭うのだから私。
……それに。ここで容易に頷いては、私だけではなくリチャードさんにとっても不利となる。
「お、落ち着いてくださいリチャード様。こんな、夫の葬儀当日にプロポーズされて、受け入れたとあっては外聞が悪すぎます」
「む、」
「下手をすればお父様が生きているときから愛を育んでいたと噂されてしまいます。私だけならともかく、リチャード様も批難されることに……」
「……それもそうですね。これ以上、根も葉もない噂で貴女を傷つけるわけにはいきませんか」
リチャードさんは一旦目線を下げてから、決意を込めた目で私を見据えてきた。
「――では、一年後」
「はい?」
「この国の慣習では、夫が死んでから一年は喪に服すべきとされています。なので、一年後。もう一度私の想いを伝えさせてください」
「…………、……は、はい。お待ちしております……」
そう答えるしかない私であった。いやだって前世も今世もここまで情熱的な告白をされたことなんてないし。経験が、経験が足りないっす。
「あと、一つ」
さらに何かを口にしようとするリチャードさんだった。私の乙女心はもう致命傷なんですけど?
「な、何でしょう?」
「貴女はこれからもお付き合いを申し出られたり、求婚されることでしょうが……私がプロポーズをしたことを、お忘れなきようお願いします」
「……いや、そんなことも無いと思いますが」
なにせ私は社交界で傷物というか腫れ物扱いされているし。そんな私に求婚やら何やらをしてくる変わり者が(リチャードさん以外に)いるのかって話である。
「……まったく分かっていない……」
なぜだか深い深いため息をつかれてしまう私であった。
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