【完結】正統王家の管財人 ~王家の宝、管理します~

九條葉月

文字の大きさ
9 / 74

山賊

しおりを挟む

 翌日。
 リチャードさんから馬車を貸してもらったというか半ば強引に押しつけられた私は、王都に向けて旅立った。
 いやまぁ正直王都までは転移魔法を使おうと思っていたんだけど、ご厚意は素直に受けないとね。それにこの世界に転生してから旅行とかしたことないし。馬車の旅というのも悪くないでしょう。

 服装は喪服。この国では夫を亡くした妻は一年間喪に服し、喪服を身に纏うべきという慣習があるのだ。いくら書類上だけの夫婦だったとはいえ、そのくらいは守らないとね。

 私は公爵家から追放されたので、屋敷の部屋の荷物は置きっ放しだ。でもまぁ、空間収納ストレージにはお父様から生前分与されたお金や権利証などの他、ある程度の着替えなども突っ込んであったのでさほどの問題はなかった。何か足りなくなったら途中の街で買えばいいのだし。

「……すみませんね、ライヒさん。付き合わせちゃって」

 馬車の窓を開けて、馬に乗って馬車と並走する伯爵家騎士団長・ライヒさんに声をかける。彼は少数の騎士を引き連れて王都まで護衛してくれるらしいのだ。

「いやいや、お気になさらず。ここ最近は平和になりましたが、山賊などが消えたわけではありませんからね。レディを守るのは騎士の勤めですよ」

「いやぁ、レディだなんて……」

「それに、いずれは伯爵夫人となるかもしれない御方ですからね。護衛の予行演習もしておきませんと」

「……あ、そうですか……」

 そういえばあのプロポーズのとき、リチャードさんの護衛として近くにいましたものね。当然あの求婚は知っているのか……。

 なんだかじわじわと包囲網が狭まっている気がする。いやリチャードさんのことは嫌いじゃないし、好感も抱いているけれど、だからといっていきなり『結婚しましょう!』とは考えられないわけで……。せめてお付き合いから初めて欲しいというか……。

 王都までは馬車で二日。
 なんだか悶々とした旅になりそうな予感だった。



                      ◇



 馬車というのは一日で進める距離はだいたい決まっている。

 つまり、王都から一日馬車を走らせた場所には宿場町ができるし、そこから一日走らせた場所にはまた宿場町ができて――という感じに、王都から貴族の領地までの間には宿場町が等間隔に整備されることとなる。

 夕方となり。
 そろそろ最初の宿場町が見えてくるという森の中で。

 道の先から、なにか争うような音が聞こえてきた。

「んん?」

 窓から顔を出して、肉体強化魔法の応用で視力と聴力を強化。すると、道の先で貴族が乗るような豪華な馬車が襲われているようだった。

 もちろん貴族が乗っている馬車なので護衛騎士も周りにいる。……けれど、山賊の数が多いのか苦戦しているようだった。

 どうやらあの山賊たちは『新人』らしい。何度か庶民を襲って味を占め、大きな獲物である貴族を狙うと。で、騎士団が本気になって捕らえられて縛り首というのがお決まりの流れだ。

「……リリーナ様。彼らの助太刀に向かってよろしいでしょうか?」

 ライヒさんが馬の上から確認してくる。私としても見て見ぬふりをするつもりはない。

「いえ、ここは手っ取り早く行きましょう」

「手っ取り早く、ですか?」

 訝しげな顔をするライヒさんに見せつけるように馬車の窓から腕を伸ばし、空に向かって掲げる。手のひらに魔力を集中させて――

「――雷よ、我が敵を討てトニトルス!」

 上空に雲もないのに発生した雷は、正確無比に山賊らしき連中に落ちた。おー、人に使うのは久しぶりだけど、やっぱり便利ね雷系の攻撃魔法。水魔法では倒すのが難しいし、炎系だと延焼が心配だものね。

 もちろん、手加減したので死んではいない。……はず。

 ちょっと不安になった私はライヒさんたちにお願いして山賊たちの生存確認と拘束をお願いしたのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...