【完結】正統王家の管財人 ~王家の宝、管理します~

九條葉月

文字の大きさ
49 / 74

別に凄くないし

しおりを挟む

 その日はアイルセル公爵邸に宿泊し。翌日、登城(出勤)するミッツ様を見送った私たちは獣人族のセナちゃん・リッファ君・ガースさんと一緒に獣人族の領事館に向かうことになった。

 領事館と言えば普通は領事という役職の人が駐在して自国民の保護やら外交やらなんやらをする場所だ。

 けれど、獣人族は人間の町で暮らすことは好まないし、人間の国で普通に暮らしてる獣人もほとんどおらず、いたとしても「何かあったときは自己責任」というのが徹底しているので、自国民保護の機能がないというか、概念自体がないっぽい。

 そんな感じなので、獣人自治区の領事館は名前だけ『領事館』だけど、実際には獣人族との交渉窓口って感じで機能しているらしい。

 そんな領事館で。領事代理だという人間・・はかなり困惑した顔をしていた。

「え~、そのぉ~、つまり、あなたが『例の』セナミラーファ様とリッファ様で……?」

「例の?」

 思わず私が口を挟むと、領事代理さんは跳ねるように姿勢を正し、直立不動になってしまった。

「はい! 現在セナミラーファ様とリッファ様が誘拐されたと大騒ぎになっておりまして! 本来の領事も「こんなところにいられるか!」と御二方の捜索に飛び出して行ってしまいまして!」

「あぁ、そうでしたか。……そんなに畏まらなくてもいいですよ?」

「いえ! 公爵令嬢に失礼があってはいけませんから!」

「あ、そうですか」

 領事代理さんはこのままでいいとして。さて、どうしたものかしら? 私としては領事に報告をして、セナちゃんたちを北部の獣人自治区に送ってもらおうと思っていたのだけど……。

「……セナちゃんたちはどうする?」

 私が尋ねると、セナちゃんは真剣な顔で考え込んでしまった。

「そうですね。元々領事館の対応には何も期待していませんでしたし……。取り逃がした犯人もおらず、犯行に使われた魔導具・うたかたの恋フレイルもお姉ちゃんが回収したのですからこれ以上悪用されることはないでしょう。同じ犯罪が起こる可能性が極めて低いのですから、こちらとしてはさっさと里に帰りたいのですが……」

「あー、それもそうよねぇ」

 つらつらと正論を並べ立てられて何の反論もない私だった。そもそも取り調べ自体は前の街で終わっているのだし。代理とはいえ領事にも報告したのだから、もう街に留まっている理由はない。獣人にとって人間の街は騒がしすぎて気が滅入るらしいし。

 さっさと里に帰りたい。
 そんな希望を口にしたわりに、セナちゃんはじっと何事かを考え込んでいる。

「…………」

「セナちゃん……?」

「……あの、助けていただいたお礼をしたいので、お姉ちゃんを獣人族の里にご招待したいのですが」

「え? 私を?」

「はい。獣人族の里など小汚くて不快かもしれませんけれど……」

「そ、そんなことないわよ! きっと素敵なところよね獣人族の里! だってセナちゃんやリッファ君みたいないい子が育つのだもの!」

「そうですか! ではさっそく向かいましょうお姉ちゃん!」

 ガシッと。逃がさんとばかりに私の手を掴んでくるセナちゃんだった。情熱的ね? ちょっとリッファ君からの視線が痛いかなーなんて。

 と、私とセナちゃんのやり取りの脇で。

「……なるほど。セナ様はお姉様とガース様をくっつけよう・・・・・・と」

≪モテモテですね、この主≫

≪見た目はいいですし、性格も良し。さらには生まれもいいとなれば――いえ、それにしてもイケメンを引っかけすぎですね≫

≪なにかフェロモンでも出ているんでしょうか?≫

≪あぁ、フェロモン……≫

 なにやら納得するミアとアズ、フレイルだった。フェロモンって、私の前世知識から引っ張ってきたのかしら……? なんだか体臭が凄そうな物言いは止めてほしいのだけれども。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...