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別に凄くないし
しおりを挟むその日はアイルセル公爵邸に宿泊し。翌日、登城(出勤)するミッツ様を見送った私たちは獣人族のセナちゃん・リッファ君・ガースさんと一緒に獣人族の領事館に向かうことになった。
領事館と言えば普通は領事という役職の人が駐在して自国民の保護やら外交やらなんやらをする場所だ。
けれど、獣人族は人間の町で暮らすことは好まないし、人間の国で普通に暮らしてる獣人もほとんどおらず、いたとしても「何かあったときは自己責任」というのが徹底しているので、自国民保護の機能がないというか、概念自体がないっぽい。
そんな感じなので、獣人自治区の領事館は名前だけ『領事館』だけど、実際には獣人族との交渉窓口って感じで機能しているらしい。
そんな領事館で。領事代理だという人間はかなり困惑した顔をしていた。
「え~、そのぉ~、つまり、あなたが『例の』セナミラーファ様とリッファ様で……?」
「例の?」
思わず私が口を挟むと、領事代理さんは跳ねるように姿勢を正し、直立不動になってしまった。
「はい! 現在セナミラーファ様とリッファ様が誘拐されたと大騒ぎになっておりまして! 本来の領事も「こんなところにいられるか!」と御二方の捜索に飛び出して行ってしまいまして!」
「あぁ、そうでしたか。……そんなに畏まらなくてもいいですよ?」
「いえ! 公爵令嬢に失礼があってはいけませんから!」
「あ、そうですか」
領事代理さんはこのままでいいとして。さて、どうしたものかしら? 私としては領事に報告をして、セナちゃんたちを北部の獣人自治区に送ってもらおうと思っていたのだけど……。
「……セナちゃんたちはどうする?」
私が尋ねると、セナちゃんは真剣な顔で考え込んでしまった。
「そうですね。元々領事館の対応には何も期待していませんでしたし……。取り逃がした犯人もおらず、犯行に使われた魔導具・うたかたの恋もお姉ちゃんが回収したのですからこれ以上悪用されることはないでしょう。同じ犯罪が起こる可能性が極めて低いのですから、こちらとしてはさっさと里に帰りたいのですが……」
「あー、それもそうよねぇ」
つらつらと正論を並べ立てられて何の反論もない私だった。そもそも取り調べ自体は前の街で終わっているのだし。代理とはいえ領事にも報告したのだから、もう街に留まっている理由はない。獣人にとって人間の街は騒がしすぎて気が滅入るらしいし。
さっさと里に帰りたい。
そんな希望を口にしたわりに、セナちゃんはじっと何事かを考え込んでいる。
「…………」
「セナちゃん……?」
「……あの、助けていただいたお礼をしたいので、お姉ちゃんを獣人族の里にご招待したいのですが」
「え? 私を?」
「はい。獣人族の里など小汚くて不快かもしれませんけれど……」
「そ、そんなことないわよ! きっと素敵なところよね獣人族の里! だってセナちゃんやリッファ君みたいないい子が育つのだもの!」
「そうですか! ではさっそく向かいましょうお姉ちゃん!」
ガシッと。逃がさんとばかりに私の手を掴んでくるセナちゃんだった。情熱的ね? ちょっとリッファ君からの視線が痛いかなーなんて。
と、私とセナちゃんのやり取りの脇で。
「……なるほど。セナ様はお姉様とガース様をくっつけようと」
≪モテモテですね、この主≫
≪見た目はいいですし、性格も良し。さらには生まれもいいとなれば――いえ、それにしてもイケメンを引っかけすぎですね≫
≪なにかフェロモンでも出ているんでしょうか?≫
≪あぁ、フェロモン……≫
なにやら納得するミアとアズ、フレイルだった。フェロモンって、私の前世知識から引っ張ってきたのかしら……? なんだか体臭が凄そうな物言いは止めてほしいのだけれども。
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