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義娘?
しおりを挟む帰りの馬車で。
「リリーナちゃん、報復はどんなものを望むかしら?」
今日の晩ご飯を尋ねるような気楽さで公爵夫人が確認してきた。
「い、いえ、そんな、報復だなんて……」
「だって、あのままだったら無理やり王太子との婚約を結ばれていたのよ? ここは王領地を切り取るくらいしても罰は当たらないと思うわ」
いやいや、王領地って。それはもう内乱です。
「へ、陛下からすれば最大限の謝罪のつもりだったでしょうし……」
やはりなぜか陛下のフォローに回らされる私だった。
まぁ、でも実際、王太子との婚約というのは破格の条件ではある。なにせほとんど自動的に次の王妃になれるのだし。夫を亡くしたばかりの未亡人からしてみればまさに救いとなるはずだ。
公爵夫人もそこは理解しているはずだけど、それでも憂鬱そうにため息をつく。
「ああいうところがダメなのよ。一番偉いことに何の疑問も持たず、平気で他人の人生を狂わせて……。あの人にはあんな国王にはなってもらいたくはなかったのに……」
「…………」
なにやら、昔色々とあったらしい。
あまり踏み込んだら悪いかなと思ったので話題転換を試みた。
「え、え~っと、夫人が私の後見人だというのは……」
「迷惑だったかしら?」
「い、いえ! あのままだったら王太子殿下と婚約させられていましたし……むしろ私は腫れ物扱いされているでしょうから、逆にご迷惑を掛けないかと」
「あら、そんなことはないわよ。むしろ悲劇の令嬢として同情的だもの」
「そ、そうなんですか……?」
「あの愚かな王太子のせいで、オークのような公爵と結婚させられ。しかも実家からも勘当されたので戻ることもできず……。自暴自棄になってもおかしくはないのに、病気となった夫の看病を献身的に行ってきた、まさしく聖女のような令嬢であると」
おーん?
そんなわけないじゃん? 犬が川に落ちたら笑って石を投げるのが貴族という人種よ? 王妃になれず、衆人環視のど真ん中で婚約破棄された私に同情するわけないじゃん?
……もしかして、夫人が何かしました?
という目で夫人を見ると、夫人は誤魔化すように顔の下半分を扇子で覆い隠した。いや、さっき自分でへし折ったから隠れきってないですよ?
「わたくし、リリーナちゃんのことを気に入ってますの」
「あ、はぁ……?」
「少し落ち着きのないミアとも仲良くしてくださっていますし」
落ち着きがないというか暴走気質というか。
「王妃になるために一生懸命勉強していましたし」
親から勉強しかさせてもらえなかっただけなんですが。
「婚約破棄の場でも、落ち着き払って反論し、自らの名誉を守ったと聞いています」
ぶん殴る寸前でしたが? とりあえず心から折っておこうと思っただけですが?
「――それに、わたくしの義娘になるかもしれませんし」
…………。
ミッツ様からの求婚、ご存じなのですか? いや知らないわけないか自分の家の中で行われたのだから。
「あー、えーっと、そのー、ミッツ様のことは嫌いじゃないですし、結婚しても何だかんだ上手くやっていけそうな気もしますが……」
他の男性からも求婚されているんですよ。よりどりみどりですね。困っちゃーう。と、口にしていいものか。
言い淀む私の態度に、どうやら夫人は別のことで悩んでいると勘違いされたようだ。
「……ミッツがダメなら、ミアでも構いませんよ? わたくしの義娘になることは変わりませんし」
どういうことっすか……?
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