行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月

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刑部

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 張さんと私。
 そしてなぜか付いてくる梓宸と瑾曦様。
 この四人で王宮をめぐり、事件の調査をすることになった。

「これは別に批難するつもりはないですけど、瑾曦様は外廷の外まで付いてきてもいいんですか?」

 さっきは少し怒らせちゃったので気を配りながら質問する私だった。だって外廷までなら『接待のお仕事です』で済むだろうけど、そこを出ちゃうのはさすがに……。

「なぁに、皇帝と一緒なら『またあの女好きが無茶を通しているよ』って感じになるから平気さ。さすがに宮廷の外へは行けないけどね」

 瑾曦様的にも女好きという見解らしい。まぁそうでしょうね。
 ちなみに『宮廷』は内廷(私的空間)外廷(公的空間)を含めたお城全体のことだ。皇宮や宮城とも言うらしい。詳しい区分というか呼び分け方は私には分からない。

 梓宸は仕事しなくてもいいのかなぁと思ったけど……まぁいいか。だって梓宸だし。きっと維さんが頑張ってくれているでしょう。

「なんだか批難されている気がするぞぅ?」

 批難するところしかない幼なじみがなんか言っていた。無視無視。私は12年も無視されたのだから。

 張さんが案内してくれたのはかなり大きめな建物だった。兵士が出入りしているから近衛の本部とか、あるいは刑官(警官)の詰め所とか?

 ちなみに我が国では先帝と現帝の時代に行政の大幅改造が実施され、四夫人の名称変更ほか多くの改革がなされた。そのうちの一つが刑部で、罪人の逮捕は刑部に所属する刑官が行うことになっている。らしい。いや私は品行方正だから刑官のお世話になるようなことはしてないし、よく知らないけど。

 と、入り口横に看板が掲げられていた。そこに書かれていたのは――刑部。実務機関である六部の一つで、司法と警察を担っている役所だ。

 刑官の詰所どころか、司法警察関係で一番上の役所ね。いきなりこんな偉いところが出てくるの? とは思ったけど、よく考えたら妃の毒殺未遂事件は十分えらいことよね。

 張さんの後に続いて刑部の建物の中へ。いやー、犯罪とは無縁の人生を生きてきたからドキドキですわー。

「凜風は冗談が下手だね」

「どういうことですか瑾曦様?」

「皇帝陛下を蹴り飛ばすのは最上級の犯罪だってことさ」

「いやいや、私、『告発されなきゃ犯罪じゃない』の精神で日々を過ごしていますので。あるいは『バレなきゃ犯罪じゃない』でも可。つまり捕まったことがない私は品行方正で清廉潔白な人物なのです」

「とんでもないことを口走ったね……。陛下、この子を本気で皇后にするつもりですか? いや人の恋路を邪魔するつもりはないですが、考え直しては?」

 本人を目の前にして『考え直せ』とは失礼な。いやしかし、皇后になるつもりはないので反対するのもなぁ。どうしたものかなぁ。

 私が悩んでいると梓宸はなぜか自信満々に胸を張った。

「大丈夫だ。凜風はそんなに悪いことはしないからな」

 これは信頼されていると喜ぶべきか、『そんなに』という部分に突っ込むべきか……。

「まっ、あたしは別にいいですけどね。凜風は話が分かりそうですし。というわけで凜風、皇后になった暁にはあたしの宮の改築と祖国への援助を頼むよ」

「いやいや前提がおかしいです。なぜ私が皇后になること前提で話が進んでいるんです?」

「あっはっはっ! あの『狩猟帝劉宸』が狙った獲物を逃すはずがないだろう?」

「狩猟帝って……」

 幼なじみがとんでもないあだ名(?)で呼ばれているっぽい。笑っていいところですか?






※あけましておめでとうございます!

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