行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月

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第1章エピローグ・1 凜風

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 ――梓宸と初めて会ったのは、7歳の時のことだ。

 勉強に飽きた、というか全て覚えてしまった私は暇を持て余し、実家の仕事場まで遊びに来ていたのだ。

 そんなときに見つけたのが、荷運びをしている少年。

 歳は私と同い年くらい。
 でも、珍しいことではない。そもそも平民にとって子供は労働力であり、ある程度の年齢まで育ったら働かせることが『常識』なのだから。

 だから別に注目していたわけではない。運んでいる荷物も軽いもので、無茶をさせている様子もなかったし。

 でも、私には視えて・・・しまった。

 私に勉強を教わって知識を蓄える少年の姿を。
 数々の仲間たちと共に戦場を駆け抜ける青年の姿を。
 そして――この国の皇帝となり、名君として称えられる壮年の姿を。

 ……その隣に、私の姿はなかった。

 私はあくまで彼の成長のきっかけ。彼が志を抱き故郷を離れるときに役目を終える存在だった。

(まぁ、それならそれでいいか)

 少年と何の関わりもなかった私は、そう判断した。
 この『力』を使うつもりもないのに視えて・・・しまったのだから、それはよほど強固な『運命』であるはずだ。

 この国をより豊かに。
 民の暮らしを幸せに。
 そして何より、洋の東西を結びつけ、人類と人類を繋ぐ架け橋に。

 そのためならば、まぁ、協力するしかないかと判断した。

 まずは彼と仲良くなって。自然と勉強を教えられるくらいの間柄になって。そうして立派な人間に育て上げ、彼の背中を押し、皇帝への第一歩を踏み出させる。それだけの関係だった。

 それだけの関係、だったはずなのになぁ……。

 出会ってから8年が経ち。
 いわゆる、男女を意識する年齢になって。

 気づけば私は梓宸に惚れてしまい・・・・・・。どうにも離れがたい存在になってしまっていた。

 もう少し、このまま。
 もう少しだけ、このまま。一緒に過ごせたなら……。

 しかし彼はそんな私の気も知らずに。自分勝手な告白をして。さっさと私から離れて行ってしまった。

 これが今生の別れになるのだろう。
 なぜなら、皇帝となった彼の隣に私はいなかったのだから。皇帝ともなれば後宮に色とりどりの美人を揃えるものなのだから。私の存在なんてすぐに忘れてしまうはずだ。

 ……まぁ、でも、しかし。
 初恋をこじらせてしまった私は、結果として12年も待ってしまい。

 梓宸が本当に迎えに来てくれるとは思わなかったし、あの宴の席で、梓宸の隣に座る私・・・・・・・・の姿を視てしまうとは思わなかったんだけどね。

 はぁーあ、まさか『運命』を変えたとでもいうのかしらね? なんて非常識な……。

 まぁ、梓宸らしいと言えばらしいのかもね。


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