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第2章 プロローグ いつもの
私の建前の告白を耳にして。
「おお!」
瑾曦様が賭け事に勝ったときのような勢いで拳を握りしめ、
「きゃあ!」
雪花はまるで素敵な恋物語を読み終わったかのように目を輝かせていた。
すごい……子供まで作った相手なのに誰からも嫉妬されていない……。可哀想な梓宸……。
で。当の梓宸はというと、
「そうか! わかった! 結婚しよう凜風! すぐに宴席の準備を――いや、その前にまずは想いを確かめようではないか!」
私の両肩を掴み、顔を近づけてくる梓宸。接吻する気満々だ……。
そんな野獣の暴走を止めるため、私は接近する顔面を片手で握りしめた。欧羅風に言うと『アイアンクロー』である。
「気持ち悪い。顔近づけんな」
「ぬぐぉおおおぉおおおっ!?」
まるで頭が割れそうなほど痛がる梓宸だった。大げさな。
「いやいや凜風。アンタの握力だとかなり痛いと思うよ?」
ちょっと呆れた様子の瑾曦様だった。あなた私の握力知ってましたっけ? ……あぁ、私の身体を握々して筋肉量を確かめたことがありましたか。まったく、ちょっと弓を引けるくらいの力しかないというのに大げさな……。
しかし梓宸の叫び声がうるさかったのでアイアンクローは中断。すると、梓宸は力尽きたように崩れ落ち、床に両膝を突き、痛みに耐えるように頭を抱えたのだった。大げさな。
「まったく……。梓宸。心が童貞のまま子供を作ってしまったあなたに、いいことを教えてあげましょう」
「童貞……。も、もうちょっと言い方はないのか?」
「じゃあ訂正してあげるわ。男女の機微を知らぬまま経験人数だけ積み上がった種馬に、いいことを教えてあげましょう」
「種馬……。も、もうちょっと言い方を……」
「あ゛? 私からの評価に不満があるの?」
「ないです! 童貞! 種馬!」
即座に正座して、私のご高説を拝聴する姿勢を取る梓宸だった。分かればよろしい。
ちょっと物わかりは悪いけど素直ではある幼なじみに、私は世界の真実を教えてあげた。
「梓宸には理解できないかもしれないけど――恋愛対象と、結婚相手は違うのよ」
「…………。……え?」
「そりゃあまぁ若い頃の私はね? 梓宸にね? 欧羅で言うところの『ロマンス』みたいな感じだったけどね? それはあくまで若気の至りというか。恋に恋する美少女だったというか。『運命に逆らえない私、可哀想』と悲劇のヒロインを気取っていたというか……」
「ろまんす? ひろいん?」
初めて聞いた欧羅語なのか首をかしげる梓宸だった。
ちなみにこのやり取りを聞いていた雪花は「きゃあぁああ!」とさらに目を輝かせていた。しまった、雪花には欧羅の言葉が通じてしまうのか。あとで口止めしなくては。
「ごほん。とにかく、恋だけなら誰が相手でもできるけど、結婚となればそうもいかないの。私はもう神仙術士としての生活基盤があるし、あなたも皇帝として即位した。梓宸と結婚するなら、私が神仙術士を辞めなきゃいけないけど……『仕事を辞めてもいい!』と思えるほどの男性的魅力が、今の梓宸にあるとでも? 12年も放置した男に?」
「ぐっふっっっっっっ!」
まるで心臓に矢が突き刺さったかのように苦しみ出す梓宸であった。ただ事実を告げただけなのに。大げさな。
「おお!」
瑾曦様が賭け事に勝ったときのような勢いで拳を握りしめ、
「きゃあ!」
雪花はまるで素敵な恋物語を読み終わったかのように目を輝かせていた。
すごい……子供まで作った相手なのに誰からも嫉妬されていない……。可哀想な梓宸……。
で。当の梓宸はというと、
「そうか! わかった! 結婚しよう凜風! すぐに宴席の準備を――いや、その前にまずは想いを確かめようではないか!」
私の両肩を掴み、顔を近づけてくる梓宸。接吻する気満々だ……。
そんな野獣の暴走を止めるため、私は接近する顔面を片手で握りしめた。欧羅風に言うと『アイアンクロー』である。
「気持ち悪い。顔近づけんな」
「ぬぐぉおおおぉおおおっ!?」
まるで頭が割れそうなほど痛がる梓宸だった。大げさな。
「いやいや凜風。アンタの握力だとかなり痛いと思うよ?」
ちょっと呆れた様子の瑾曦様だった。あなた私の握力知ってましたっけ? ……あぁ、私の身体を握々して筋肉量を確かめたことがありましたか。まったく、ちょっと弓を引けるくらいの力しかないというのに大げさな……。
しかし梓宸の叫び声がうるさかったのでアイアンクローは中断。すると、梓宸は力尽きたように崩れ落ち、床に両膝を突き、痛みに耐えるように頭を抱えたのだった。大げさな。
「まったく……。梓宸。心が童貞のまま子供を作ってしまったあなたに、いいことを教えてあげましょう」
「童貞……。も、もうちょっと言い方はないのか?」
「じゃあ訂正してあげるわ。男女の機微を知らぬまま経験人数だけ積み上がった種馬に、いいことを教えてあげましょう」
「種馬……。も、もうちょっと言い方を……」
「あ゛? 私からの評価に不満があるの?」
「ないです! 童貞! 種馬!」
即座に正座して、私のご高説を拝聴する姿勢を取る梓宸だった。分かればよろしい。
ちょっと物わかりは悪いけど素直ではある幼なじみに、私は世界の真実を教えてあげた。
「梓宸には理解できないかもしれないけど――恋愛対象と、結婚相手は違うのよ」
「…………。……え?」
「そりゃあまぁ若い頃の私はね? 梓宸にね? 欧羅で言うところの『ロマンス』みたいな感じだったけどね? それはあくまで若気の至りというか。恋に恋する美少女だったというか。『運命に逆らえない私、可哀想』と悲劇のヒロインを気取っていたというか……」
「ろまんす? ひろいん?」
初めて聞いた欧羅語なのか首をかしげる梓宸だった。
ちなみにこのやり取りを聞いていた雪花は「きゃあぁああ!」とさらに目を輝かせていた。しまった、雪花には欧羅の言葉が通じてしまうのか。あとで口止めしなくては。
「ごほん。とにかく、恋だけなら誰が相手でもできるけど、結婚となればそうもいかないの。私はもう神仙術士としての生活基盤があるし、あなたも皇帝として即位した。梓宸と結婚するなら、私が神仙術士を辞めなきゃいけないけど……『仕事を辞めてもいい!』と思えるほどの男性的魅力が、今の梓宸にあるとでも? 12年も放置した男に?」
「ぐっふっっっっっっ!」
まるで心臓に矢が突き刺さったかのように苦しみ出す梓宸であった。ただ事実を告げただけなのに。大げさな。
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