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いつもの
海藍様とのお茶会が終始和やかな空気で終結したあと。
『モォ!』
当然のように私の肩に乗り、当然のように私が借りている宮までやって来る雷獣だった。
「なに? 飼えってこと?」
『モォ!』
「いや『モォ』で返事されても分からないわよ。動物の心は読めない……いやどうかしら? 試したことないからなぁ。牡鹿がいけるならいけそうな……?」
『モォ……』
なんか『この人外……』みたいな顔をされてしまった。人外どころか動物外の神獣に言われたくないわよ。
まぁ本物の神獣とか絶好の研究対象――ごほん、興味深い観察対象よね。私と行動を共にするというのならそれでいいのだけど。問題は餌か。
…………。
ま、神獣なんだからテキトーに霞でも食っているでしょう。というわけで特に餌などは考えないことにした私だった。
『モォ……』
不満げな顔をする雷獣だった。文句あるなら喋りなさい。
◇
翌日。
『モォ、モォ、モォ』
神獣の観察一日目。ということで尻尾を揺らしながらお散歩する雷獣の後をつけ回している私だった。
見た目としてはただのイタチね。歩いているだけでは神気もほとんど感じられないと。私なら分かるけど、そうじゃなければ普通の小動物にしか見えないわね。
そう、普通の小動物。
見た目は愛らしいので道行く侍女たちの視線を独占し、それを分かっているのか胸を張って歩いている雷獣だった。いやどこが胸かイマイチ分からないけどね。
そのまま雷獣は迷うことなく歩みを進め、後宮と宮殿(内廷)を仕切る壁の前で立ち止まった。
『モォ!』
一旦私を振り返ってから、雷獣が消えた。へぇ? 縮地まで使えるんだ? いや神獣だから私も知らない別系統の術だったり?
神仙術を使えば雷獣がどこにいるかくらい分かる。
それに、わざわざ一度振り返ったのだから煽られている気がする。『お前にできるかな?』みたいな感じで。
ふっ、いいでしょう。売られた喧嘩は高価買い取りするのが商人の娘よ!
「――天皇天帝に願い奉る!」
雷獣の位置をさくっと把握し、とーうっと縮地する私だった。美技。
「――げふぅ!?」
おや? 梓宸の背中に欧羅式飛び蹴りしたような叫び声が? 足元から? まぁいつものことなので別にいいか。
というか、ここどこだろう? 雷獣のいる場所は分かっても、そこがどこでどんな名前なのかは分かっていないのだった。
……ふむ? いかにも豪華そうな建物の中。部屋の左右には女官らしき人物たちが並び、部屋の中央奥には御簾(すだれ)で仕切られた空間。いかにも貴人が裏にいそうな感じ。あとついでに言えば足元に大華国第9代皇帝陛下が。馬車に潰された蛙のような姿で呻いている。
『モォ!』
いかにも高そうで貴人がいそうな室内を縦横無尽に駆け回る雷獣だった。
「きゃああ!?」
「何よこいつ!?」
「太妃様! お気をつけください!」
……うん? 太妃様?
じゃあ、あの御簾の裏にいるのは件の太妃様なのかしらね?
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